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Death Game: Frozen Brilliance(デスゲーム:フローズン・ブリリアンス)リノ・ネリカ編

十二人の生徒が命を賭けて挑むデスゲーム×学園ストーリー

土、火、水、風の四属性をメインに、二つのクラスに振り分けられた彼等は、各自提示された課題をこなして”自分の価値を証明する戦い”を繰り広げる——!

生き残るのは真の才能がある人間のみ

誰が生きて誰が死ぬのか完全オリジナル作品

《Death of the Academia》をお楽しみください

こうして風を操る三人の第一授業は、静かに幕を下ろした。次なる舞台は、水属性の試練へと移り変わる——


時計の針は既に、十時を回っていた。

体感では一瞬。


しかし……彼等は確かに、二時間もの間、自分を証明する戦いを繰り広げていたのだ——


ヴァンティスは破れた衣を静かに脱ぎ捨てた。

背に宿る片翼の羽を一枚、指先で摘み取る。


風が舞い、羽は黒布へと姿を変えた——


彼の体を覆ったのは漆黒のロングコート。

その胸元、やや下の位置には淡緑色のひとつの梵天が、風に揺れながら、存在を静かに主張していた。


ヴィンティスの行動に三人は、目を見開いて驚きの声を上げる。


「やっぱチートっすね〜 どんな羽の性能してんすか」


「僕なら出来るかも……」


「こんな一瞬で絶望与えんなよ……ばぁーか」


リオライズ、エニアル、ゼオン。

三者三様の感想を残して、和やかな雰囲気がコロシアムを包む。

ヴィンティスは、普段通りの行動に対する反応に一瞬きょとんとしたものの、すぐに微笑を浮かべ生徒たちに告げた。


「さぁ皆さん。一度、室内鍛錬場へ戻って、待機している水属性に振り分けられた生徒達に、報告しに行きますよ」


三人の間をスッと通り抜けて出口へ向かうヴィンティス。

それを追うように四人は、コロシアムを後にした——


「そういえば、室内鍛錬場って何階にあるんすか」


「四階なので、この階段を降ればすぐに着きますよ」


宣言通り階段を降り、右に曲がると観音開きの大扉が見え、彼等は、真っ直ぐ扉に向かって歩みを進める。


扉を開けて一番最初に視界に入ってきたのは、マリーナの舞。水属性組も、風属性組の三人も一瞬で目を奪われた——


自らを中心に、長くしなやかな刀を用い、まるでバレエのように美しく舞っていた。

刀は空を描き、マリーナ特有の美貌も相まって、舞の途中に微笑んだりと、余裕を見せていた。


「もうすぐ、術が完成するわよ!」


その一言で六人しか魅入っていない空間は、一気に大勢の人間に見られている感覚へ変わる。


そしてマリーナは最後のステップと共に、詠唱を唱えた。


「私の子供達よ……私の舞と共に踊り狂え! 螺旋を描く軌道と、花の様に咲き誇れ、氷の(アル・ヴェリウス・シルヴァブルーム)!」


詠唱と共鳴するかの様に、空間そのものが凍りつく。

巨大な氷の刃が舞いを追うように螺旋を描き、相手の進行を正確に断ち切る。


美しさの中に潜む冷酷な一閃——


それは“未来を断つ氷の矢”の様に鋭く、静かにヴィンティスに向かって放たれた。


ヴィンティスは、呆れた顔を浮かべながら一太刀入れると、術は一瞬で解け、水属性組の生徒達の視線もヴィンティスに移った——


「マリーナ先生……舞うのは結構ですが私や生徒を巻き込まないで頂きたい……」


「あら……? 気に障ったかしら。次から気をつけるわね」


少し糸が絡む様な雰囲気が、漂うもマリーナの視線が風属性組を捉えて、サファイアの瞳が全てを吸い込む様に質問を投げかける。


「三人共、ヴィンティスの授業はどうだった?」


「疲れたっす」


「が、頑張りました……!」


「休みてぇ……」


再び三者三様の感想が飛び込んで、マリーナは笑いを堪えるのに必死だった。

でもゼオンの一言で、安心した表情へと変わった——


「まぁでも。やって良かったとは思ってる。普段鍛えられない所も、鍛えて貰ったし無駄とは思わなかった」


「ぼ、僕も、二人のお陰で風属性に目覚めたし」


「このまま訓練すれば、本番にはI組土属性の人間は、一掃できる予感がするっすね〜」


「そう……成長を実感出来たなら何よりだわ。……さてと」


マリーナが風属性組の話を聞き終えると、一気に水属性組の第一授業へ舞台が移る雰囲気に変わった。


「私達も、悠長に喋ってないで試験へと移りましょうか。

風属性の皆は、ヴィンティスから昼食を受け取って寮で休むも良し、この鍛錬場で鍛えるも良し。こっちの授業が終わったらアナウンスをかけるし、好きにしてて頂戴ね」


こうして水属性組に振り分けられた、リノ・ネリカ、サイラス・エズル、アイレン・セウリーは、コロシアムへマリーナと共に鍛錬場を後にした——




「それじゃあ、早速ランキング順で模擬戦を始めるわ。まずは……リノ・ネリカさん。貴方から行きましょっか」


「はい。宜しくお願いします」


アリーナへ小走りで駆けるネリカ。

視線を交えるとマリーナの雰囲気が一変した事を肌で感じた。


「合図は、この氷の花が砕け散った瞬間を合図にするわ。手加減無用! 全力で掛かってきなさい」


マリーナの掌で形成された氷の花が、空を飛んで次第にヒビが入り始める。


——そして遠くから微かに聞こえる、「パリンッ」という音と上から落ちてくる結晶を合図に、二人は互いに術を放つ。


マリーナが刀を抜くと同時に、魔力が刃へと流れ込み空気中に細い氷の糸が紡がれた。

それらは互いに絡み合いながら、形を変えやがて一体の蛇となる。

氷蛇は冷ややかに身をくねらせると、その口から鋭利な氷の粒を次々と放ちネリカめがけて、一直線に飛びかかった。


「物質変換と自分では言っているわ……水であれば、あらゆる物や生き物に変換できる能力よ」


「な、なるほど……良い攻撃ですけど、僕には痛くも痒くもない」


確かに、攻撃を受けているような、喋り方。

しかし、彼は密かに地面を辿って、氷魔法をマリーナの元へ届けた。


背後に迫り来る魔法は、鏡のような透明な色に、大きな氷の攻撃だった。


マリーナが振り返る——


しかし、間に合わないとネリカは確信していた。

ネリカの用意した魔法は、刀で一刀両断出来るスピードでは無かった。


「落ちるスピードも速い……!」


——ドォン


氷の思い切り落ちる音と、冷気がコロシアムを包み込む。

霧が晴れ姿が見えたマリーナは、お腹の辺りに白い靄を立ち昇らせながら、手をかざして回復していた。


「いたたたた……流石だけど、本当に回復が面倒なのよね」


「す、すみません! 大丈夫ですか!?」


「気にしないで〜 手加減無しでって言ったのは私だし、こういうのは水属性の宿命みたいな物だもの。これで勝ち点1は貴方よ」


「ありがとうございます。これで王手……」


先制できたことに、安堵するネリカ。

マリーナは勿論、どうやって自分の攻撃を回避したのかを、切り出す。


彼女の意図は、これからの成長に向けた、自分が自分で起こした行動を、理解しているかの質問でもあった。


「それよりさっきの私の攻撃を、どうやって回避したのか聞いても良いかしら?」


「はい。あの攻撃、氷が主軸だったでしょう? 僕は自分の体を大きなシャボン玉くらいの“水の膜”で包んでいました。

僕の水は、”氷なら”何でも溶かせちゃうんです。それがちょっとした自慢なんですけど……」


「うんうん!良いわね貴方、最高にかっこいいわよ」


ご満悦なマリーナは勢いに乗って、ネリカを強く抱きしめる。大きな弾力に顔を押し付けられて気まずい雰囲気が漂う中、ネリカはなるべく声を大にして言う。


「く、苦しい……です。先生」


「あら、ごめんなさい。——じゃあ気を取り直して模擬戦リスタートよ」


再び氷の花が砕け散る合図と同時に、ネリカは地を蹴り、剣を抜いた。


一閃——空気を裂く軌跡の先でマリーナの大太刀が応じる。


氷を割るような甲高い音が響き、刃と刃がぶつかる感触は、冷気そのものが軋んでいるようだった。


ネリカの小さな剣を容易く押しのけ、距離を取ると、マリーナは次の術を発動させた。


大海原(エンドレス・オーシャン)!」


刀身から奔流がほとばしり、見る間に、足元の大地が波に呑まれる。

コロシアムは音を立てて一つの海に変化した。


広がった海の上を、マリーナは何の気なしに歩いていく。

水属性にとっては日常的なこと。

彼女はネリカの気配を探って警戒を強めていた。


——そしてその大規模な光景に、観戦していた二人は驚きつつも、戦いの行く末を見届ける。


「サイラス! 水位が……!」


「マジかよ……見た目じゃここまで来ねぇと思ってたのに」


大規模な術式に目を見開く二人。

一方、姿を眩ましたネリカは、再びマリーナの背後を取り、マリーナの首を狙って一閃させた——が、マリーナは既に読んでいた。


「………残念だけど、二度も同じ手は通らないのよ」


明るい声から一変、黒く響いた声は空気が凍りつく恐怖を感じさせた。


ネリカの剣が空を切り、別の魔力を感じて振り返る。


——物質変換された水から生まれた二匹の龍が、両翼のごとく空に舞う。

そして、ネリカが水の膜を完成させるよりも速く、その腹部へと牙を突き立てた。


腹の皮が、制服の布と一緒に口へ運ばれる。

満足した龍は、溶けるように姿を消した。


「………ぐっ………うぅぅぅぅぅ……」


苦悶の声は水に溶け、お腹を抑えたまま蹲り呼吸する度に、激痛が走るのが見て取れた。


マリーナは静かにネリカの傷に回復を施した。


「大丈夫よ。これですぐに楽になるわ」


「……うぅ……でも流石……です。これで……さっきの氷の攻撃…と、おあいこ……ですね」


今にも消えそうな声を振り絞って、途切れながらもネリカは話した。

その精神力を心の中で称えるマリーナは、無情を装い言葉を返す。


「この傷が治って、ある程度動けるようになったら、すぐにラストポイントを賭けて再開するわよ」


「もちろん……です」


皮膚が徐々に再生し、ネリカの呼吸も次第に安定していった。


「段々楽になって来ました。体は疲れたままですけど、呼吸がちゃんと出来るだけで、頑張れそうな気がします……」


「このままラストアタックに行けそうかしら?」


横たわっていたネリカは、マリーナの顔を見上げて瞳に光を取り戻す。

体を起こしてやる気に満ち溢れた声で返答した。


「……早速始めましょう!」


大海原を一度解除して、仕切り直しの状態で、ラストアタックを迎える——


「元気そうになって良かったわ!」


「万全という訳ではありませんけど、良い勝負が出来そうです。全力で行きます!」


ラストの結晶を合図に二人の剣は激しくぶつかる。

水飛沫と冷気が、コロシアムを覆いつくす——


剣と剣が交わる中、マリーナの剣先が角度を変え、ネリカの剣を受け流すように薙ぎ払った。


「———ッ」


間一髪のところで、ネリカは受け流されながらも逆立ちするように真上に飛んで回避した。


そのまま剣を離さず、後方に飛び地面に剣を突き刺すと

——氷の檻がマリーナを閉じ込めた。


「氷の(アル・プリズンロック)……鳥籠に閉じ込められた貴方に、もう勝ち目はありません」


負けを察したような表情を浮かべて、マリーナは静かに目を閉じる。

そこには何か納得した様な顔もしている様に見えて……


——ネリカの剣が鳥籠の鍵にあたる宝石を打ち砕くと、マリーナの体全体を凍結した。


「”檻”というのは、拘束されし者を指す。この技にはぴったりな術式です」


動かぬマリーナに一太刀を浴びせ、鞘に刀を収めた。


術が解け凍結が解除された瞬間——


彼女の腹部から、じわりと血が滲み、そして噴き出した。


「これは……流石に成す術が無かったわ。貴方の勝ちよ

——リノ・ネリカ」


こうして水属性組第一授業の試験をネリカは勝利した

そして次なる挑戦者——サイラス・エズルが試験へ挑む

この話から句読点や、普通の数字と漢数字等を意識して書いております。読みにくい箇所もあるかもしれませんが、これからレベルアップしていきますので宜しくお願いします

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