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Death Game: Echoes of the Wind(デスゲーム:エコーズ・オブ・ザ・ウィンド)リオライズ・ニイタ編

十二人の生徒が命を賭けて挑むデスゲーム×学園ストーリー

土、火、水、風の四属性をメインに、二つのクラスに振り分けられた彼等は、各自提示された課題をこなして”自分の価値を証明する戦い”を繰り広げる——!

生き残るのは真の才能がある人間のみ

誰が生きて誰が死ぬのか完全オリジナル作品

《Death of the Academia》をお楽しみください

再びヴィンティスは、片翼を広げて空へ舞う——

しかしゼオンも知っている。


翼がなくても、同じ土台で戦う方法を——


「空を飛べば勝ち確とか思ってんのか? 馬鹿かよ……俺にだって、策くらいある!」


ゼオンの言葉に返すように、ヴィンティスは静かに刀を振り二閃の風の斬撃を放つ。


だがゼオンは動じない。


斬撃の軌道を冷静に見極め、狙いを読み切り、すべてを躱してみせた——


「風は攻撃だけの特化じゃない……お前がそれを教えてくれた。だから見てろよ! そこから叩き落としてやる!」


ゼオンはそう言うと、掌からビー玉ほどの風の玉を形成していく。

それをふっと一息かけると、大きな竜巻に変化して、すかさず身を預けて空を駆け上がる——


緑の竜巻が、小さなゼオンの体をヴァンティスの元まで送り届けて——


「俺の必勝法——風乗術(エアライド)たどり着いたぜ……あんたの土台に!」


ヴィンティスは目を見開き、刀を振る前に大剣が振り下ろされた。

高速と高重量を両立したその一撃が、ヴィンティスを地面へと風の槍のごとく叩きつけた——


「や、やったの?」


「いや全然やってないっす……ヴィンティス先生は、逆にピンピンしてる……」


地面に叩きつけた手応えは、確かにあった。

——だが、白い煙が晴れるとらそこにあったのは斬られた跡ではなく、ただ静かに地面に突き立てられた刀だった。


「避けた、いや、受け流したのか……!? でも抑えれるかよ」


「中々に良い動きでした。確実に貴方は成長している……」


刀を上手く使って、自分はアリーナ外へ、瞬時に身を潜めていたヴァンティス。


「バケモンが……」


さっきの風の閃光弾(ウィンド・ライトスコール)はもう使えない……ここからは真っ向からぶつかり合って剣先が触れた方の勝ちだ——


視線が交差し、一つの風が吹き抜けるのを合図に、二人の剣は激しくぶつかった。


剣がぶつかる音と、爆発音にも聞こえる音が、聴覚を覆う。


そこからは互いに譲らぬ戦いを繰り広げた。


時には風魔法の衝突、一歩届かない一撃。


リオライズとエニアルも魅了されるように、真剣に戦いの行く末を見届ける——


ゼオンが一進一退の攻防を続ける中、ヴィンティスが小さく呟く。


「そろそろ幕を降ろしましょう」


次の瞬間、複数の風の斬撃がゼオンの周囲に一気に放たれ、斬撃の衝撃波で地面が裂け土煙と白い煙が広がる。


「しまった……! 視界が遮られる」


ゼオンは大剣を薙ぎ払うより、空への回避を選んで再び風の玉を形成しようとした、その瞬間——


「遅い……風を知っていながら、その流れを見誤るとは」


「………は?」


——ゼオンの背中に一閃……音もなく、静かに終わりが訪れた。

そして二点目。ヴィンティスの勝利が確定した——


「はぁはぁ……くっそ……」


「これで三本目は私が取りましたので2対1で私の勝利——ですね」


刀を鞘にしまい、ヴィンティスはゼオンの背中の傷を回復しながら、話を続ける。


「正直貴方が同点にした時点でどちらが勝ってもおかしくなかった……そしてこの短時間での精神力、技術の成長。

現ランキングに相応しい強さを誇っています。鍛錬を続ければ、必ず私にも勝てる日が来るでしょう」


回復を終えてヴィンティスは腕を伸ばす。


「次の本番までには、お前があっと驚くくらいの出来を披露してやるから待ってろよ!」


差し伸ばされた手を強く握り、息苦しい雰囲気とは一変、一瞬だけ和やかな雰囲気が流れた。


そして次の挑戦者リオライズがヴィンティスへ挑む——


「やっと俺の出番っすね。秒で終わらせてやるっすよ!」


「では、リオライズ・ニイタ。準備が出来たらアリーナへ」


小さな歩幅でアリーナを降りるゼオンとすれ違いように、リオライズは言葉を交わす——


「先輩すっげぇ格好良かったっすよ……」


「……お前……」


予想外の褒め言葉に、驚きと嬉しさで涙が溢れゼオンは咄嗟に、顔を伏せる。

それを見越したかのように、リオライズはゼオンの頭をくしゃくしゃとして、アリーナへ足を踏み入れた。


「さっきの視界を塞ぐ技も、一撃に二回の閃光も全部見させて貰ったっす。要するに……どの攻撃も俺には通用しないってことですね〜」


「良い観察と度胸です。いつでもかかってきなさい」


「そうすっか……じゃあ遠慮無く」


そう言い放った瞬間——


嵐のような風が起き、ゼオンは体を吹き飛ばされそうになる所をエニアルに助けられた。


一閃が凪いだ直後、土煙が晴れたその刹那——




二人の姿が視認できるようになり、最初に見えたのは切り落とされたヴィンティスの右腕と羽を手に持つリオライズ。まるで時間が止まったかのように……場が凍りついた。


「これはさっき先輩にした攻撃とほぼ同じっす。それにしても……大人というのは凄いっすね〜 泣き声も上げず、表情も一切変えずに立っていられるんだから」


リオライズは持っていた腕と羽を投げ捨てて、余裕な表情でヴィンティスを視界に収める。

目が合った瞬間、ヴィンティスは静かに自分の腕と羽を再生した。


「へぇ〜 そういう回復方法もあるんすね……大分グロい再生でもするのかと思いましたけど、”破壊された部位を風の竜巻で包んで元通りに”……か」


「これで勝ち点を先に獲得したのは貴方です」


「感謝するっす。早めに終わらせてらエニアルさんの属性を目覚めさせてあげないと」


エニアルとゼオンは、自分達と同じスタート地点にいるはずのリオライズが、眩しく見えていた。


「なんだよ……俺なんかより全然凄いじゃんか。教師の真似事出来る奴に”あの言葉”は、説得力ねぇよ……」


「不思議です……さっきまで自分も絶対無理だって思ってたのに、今はリオライズさんみたいに戦える気がして……」


真っ直ぐにリオライズを見るエニアルの瞳は輝きと尊敬、

そして何処からか湧いてきている、自信に満ち溢れる目をしていた——


「これからお世話になる先生には、一応見せといた方が良いっすかね? これ俺の武器っす」


リオライズが自慢げに見せたのは、籠手(ガントレット)

鋭利な刃を持つそれは、緑色に脈動するようにして、術者の意図のままに動いているようだった。


「さっき先生のを真似たのは、全てを斬る(ウィンドファング)って技の名前を付けてるっす。俺が術をかける事で”当たってしまえば”体は吹っ飛ぶって訳ですね」


「丁寧な説明感謝します。もうトリックもカラクリも全て理解した……」


今までに感じたことのない異様な雰囲気が、コロシアムを包み、ヴィンティスも、もう一本の刀を抜き二刀流の姿へと変えた——


「先生の第二形態って感じっすね〜 勿論全力で行くっすよ!」


地を蹴り疾風の速さで駆け上がる。


数秒、いや数えるほども出来ない速さで、リアライズは籠手を突き出す。


しかし、籠手の攻撃が届く前に、刀が頭を貫通するようにリオライズに、突き刺さり、血飛沫がアリーナ全体に、激しく広がった。


——剣の先端が右眼に刺さり、リオライズは無性に叫びたくなるのを我慢して、微かに笑みを浮かべた。


「くっそ……が……流石に、舐め過ぎたっすかね」


ヴィンティスの姿を片目だけで確認すると、格好付けて抜いた剣に出番などなく、今までと同じ左手に持っていた刀で右目を貫いていた。


「今のは……追尾攻撃っすか? あの速さに着いて来れるってことは、それくらいしか浮かばないんすけど」


「その通り……君の速さは私と変わりませんが、正確性が欠けていたので、術をかけて必ず右目に命中するように剣を出したのです」


「なるほど……でも今の解説で全て分かったっす……少し華はないっすけど、ヴィンティス先生に勝つ必勝法を——」


ボタボタと垂れてくる血が、ヴィンティスの回復により完全に止まった。


鼻で笑うように口角をあげてリオライズは笑う。

今度は見せかけじゃない雰囲気が漂っていた。


「さっきはトップスピードで痛い目見ちゃったんで、今度は標準スピードで、しっかり動きを見せて貰うっす」


——次の瞬間、ヴィンティスは左手の刀を薙ぎ払うように鋭い風の攻撃を仕掛ける。

しかし、リオライズは落ち着いて高く空に飛び上がり、再び自慢話を話し始める。


「おそらく、今の攻撃もあの速さで駆けてたら、下半身とおさらば状態だったっすけど、武術の才能がある俺なら、この攻撃も簡単に交わせるっす!」


リオライズは続けて、籠手(ガンレット)を装備した左手を強く握り、着地と同時にヴィンティスに向かって、地が割れるほどの威力で拳を叩きつけた。


しかし手応えは無かった——


それでも、知っていたと言わんばかりのリオライズは空を見上げる。


「やっぱり空を飛べる奴は格好良いっすよ」


「少し押されてしまいましたが、これを受ければ貴方は降参するでしょう」


脅しにも近い忠告をされても、リオライズの表情は変わらなかった。それどころか少し頬が緩んだようにも見えて——


「じゃあ今から先生の必殺技を耐え切った後の俺が、一分以内に攻撃を当てれたら俺の勝ちってことで良いっすか? 先生にも、それくらいの自信があるんですよね?」


まるで、幼い子供の強がりのように、交渉を持ちかけるリオライズ。

ヴァンティスは少し考えた後、許諾すること。


「……良いでしょう。貴方の特別ルールを受けて差し上げます」


「じゃあいつでも、どうぞっす!」


リオライズは深く息を吸って呼吸を整える。

一方のヴィンティスは二つの刀を交差させると、風の魔力を集中させ静寂の中、詠唱を始める。


「今ここに命ずるは風属性最強の使い手ヴィンティス・サイル……我の願いに応え、目の前にいる敵を討ち滅ぼせ

——重なりし風圧、光速の刃と化し舞い踊れ……

風の重力と引き裂かれる閃光(アル・グラヴィナズ・ゼクション)!」


刀から放たれる緑色の閃光に、腑や足や腕が引き裂かれる。


——続けて地面に大きな魔法陣が形成され、発動された瞬間、立っているのは不可能なレベルの重力魔法を、リオライズは真っ向から受けた。


「……確かに常人じゃ、即死レベルの攻撃っすね……骨が折れそうだし、閃光で受けた傷にも……響いてるっす」





もう何分膝をついていたかも分からない。

体感では長いように感じた。


「もう何分……このままだっけ………?」


そんな思考を巡らせていると次第に術が弱まっていることに、気付いた。


「少し体が軽く………なってきたっす……」


———空から反響して声が聞こえる


「私の足が他に着いたら、一分のカウントダウンをスタートします。やる気があるのなら構えなさい……無理だと思うのなら降参しなさい」


リオライズの心の中では”やる一択”だった。

ラストアタックが成功することを信じて構えを取る。


——そしてゆっくりとヴィンティスが着地したと同時に、リオライズは動き始める。


攻めて、攻めて、攻めて、とにかく無心に。でも正確に一撃一撃の重い拳をヴァンティスに向ける。


やがてそれは、ヴィンティスを防戦一方まで追い込む力だった。


「あの術を受けて、そこまで動けるのは素晴らしい事です」


「そうすっか!」


皮肉じみた言葉を聞くつもりもない。

今はただ、どんな傷を受けようとも、必ず一分以内に、ヴィンティスに攻撃を当てる事しか考えていなかった——


「なぁエニアル、お前はどっちが勝つと思う?」


「僕は……僕はリオライズさんが勝つと思います」


「何故そう考える…?」


「リオライズさんは、ヴィンティス先生の必殺技を受けると聞いた時、少し喜んでいた表情をしてました。何か策を残しているのかと」


残り20秒——


左の刀を振り上げる動作を見たリオライズは、迷いなく素手で受け止める。


残り10秒——


次の一撃が来る前に、リオライズはそれより早く——拳を届かせる。


次の瞬間——


リオライズの左拳が一直線に、ヴィンティスの右眼に叩き込まれた。

響く衝撃、二人は同時に風に吹き飛ばされ、アリーナの外へと舞った——


砕け散ったコロシアムの瓦礫が、ゴロゴロと落ちてきた。

硬いものがぶつかる痛さは、普段より倍以上に感じた。


それでもリオライズは、今にも壊れそうな体を起こして、アリーナへゆっくり歩みを進める——


土煙の中からヴィンティスの人影が見え始め、彼は言葉を紡いだ


「……お見事です。リオライズ・ニイタ。貴方の勝利です」


ヴィンティスは右眼から血を流して、ゆっくりと宣告した。

その言葉を聞いた瞬間、リオライズの中できつく縛られていた感覚は、一気に解け力が抜けてその場に倒れ込んだ。


「良かったぁ〜」


倒れたまま、顔を上げると微かにゼオンとエニアルの姿を見て、呟きを放つ。


「………先輩、エニアルさん。そして見てるすっか〜 ”お母さま”」


妙に言い慣れない”お母さま”という呼び名。

彼の中でも、何故その単語が出て来たのかは理解できていなかった。


しかしリオライズは、模擬戦に勝った喜びと真似事でしか勝てなかった悔しさを胸に、風属性模擬戦ラスト試合エニアル対ヴィンティスの行方を見届ける——

次回風属性の第一授業編はラストになります。

もしかしたら十二話冒頭部分だけ触れる事もありますが一旦

エニアル・シゼロ対ヴィンティス・サイルで締めたいと思います。

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