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Death Game: Wind of Trial(デスゲーム:ウィンド・オブ・トライアル)ゼオン・ルーゼ編

十二人の生徒が命を賭けて挑むデスゲーム×学園ストーリー

土、火、水、風の四属性をメインに、二つのクラスに振り分けられた彼等は、各自提示された課題をこなして”自分の価値を証明する戦い”を繰り広げる——!

生き残るのは真の才能がある人間のみ

誰が生きて誰が死ぬのか完全オリジナル作品

《Death of the Academia》をお楽しみください

また時計の針がコツ、コツと音を立てる。

再び誰かの脱落を示唆する様に、そして”死とは異なる”結末が迫っている音に聞こえていた——


「皆今日も遅刻無し! 最高の治安を守ってくれて、お姉さん感動しちゃうわ」


早いようにも、長いようにも、感じた第一授業までの二日間は過ぎ去り、生徒達はII組の教室へ招集を受けて、脱落についての説明を受ける事前授業(オリエンテーション)が開かれていた。


「——では改めてルールの確認を。まず水属性と風属性の生徒に別れて各担当教員と模擬戦。

その後に、ランキングを付けて一番評価の高かった者が”シークレットチャンス”の権利を得て、一番成績の悪かった者は”脱落”というルールね」


「とは言え、コロシアムは一つしか用意されておりませんし、代わりのステージがある訳でも無いので私達、風属性の第一授業が終了するまで、水属性の皆さんは室内鍛錬場でマリーナ先生と待機していて下さい」


「ではここまでで、質問がいる人は挙手で受け付けるけどいるかしら?」


ネリカがすっと手を上げて、マリーナがしっかりと耳を傾ける。


「何か困り事?」


「その、室内鍛錬場で、模擬戦は出来ないんでしょうか?」


「……普通に考えたらそう思うのが自然よね」


まるで聞かれることが、分かっていたかの様に返事をしてそのままマリーナは話を続ける。


「でも今回の授業は、一つの属性が全部終わってからじゃないと、全体評価が正式に出来ないの。

あともう一つあるとすればそこまで……好きに動き回れる程広々していないのよ」


「じゃあ、僕等は風属性の授業が終わるまで、マリーナ先生の話を聞いて待ってれば良いんですね」


「話が分かって助かるわ」


「では、あまり長々と話しても退屈でしょうし、昨日風属性として呼ばれたゼオン・ルーゼ、リオライズ・ニイタ、エニアル・シゼロは、今から私とコロシアムへ向かいます——」


辿り着いた時のコロシアムの姿はやはり綺麗だった。


「いつ見ても感動するすっねぇ。この綺麗さ保ってたいけど今からぶち壊すんっすよね」


ヴィンティスは、何かの資料を集中して見ている様でリオライズの言葉は、届いていない様子だった。

構わず彼は、腕をゼオンの首に回して人懐っこく話しかける。


「それにしても、先輩の戦闘スタイルを生で見られるなんて幸せ者っすよ〜」


「あんまり馴れ馴れしくしてんな! 殺されたいか……!」


「おぉ……怖い怖い。あっエニアルさんも互いに頑張りましょうね」


腕を回したまま、エニアルの元へ足を運んで握手を求めると、彼もまた潔く強く握手を返してくれた。


和やか雰囲気は、リオライズがヴィンティスと目が合った瞬間に、重苦しい雰囲気に変わった。

回していた腕を解き、真剣な目つきに変化した——


「ではこれより、現時点でのランキング上位者から授業を始めます。なので——ゼオン・ルーゼ、貴方の準備が整ったらアリーナへ」


そう告げると静かにアリーナへ足を運ぶヴィンティス。

一呼吸置いてゼオンも同じ舞台へ足を運んだ。


「最後の確認と、言っておく事が一つあります。これは模擬戦と言えど、実剣を使って戦います。私達は、回復力には自信がありますし、貴方が死ぬ程の傷を負っても治せるので安心して剣を振りなさい——」


「分かってるって最初(ハナ)からそのつもりだ——」


そしてゼオンは、腰から包丁サイズの剣を取り出すと、眩しい緑色の光が辺りを照らした。

——リオライズとエニアルは次に目を開けると、彼の身長よりも10cm程の大きいグリーンに輝く大剣へと姿を変えていた。


「合図はどうする?」


「いつでもどうぞ」


余裕そうで軽い返事をしたゼオンは、苛立ちを覚えて大剣に魔力を込めた。


全てを解き放つように、ヴィンティスめがけて横に薙ぎ払う。

刹那——立っていられない程の威力の風が吹き起こった。



――しかし、普通なら壊れるコロシアムの観客席も、建物自体も一切の傷は無く、立ち込めた白い煙から姿を現したのは信じられない光景だった——


「中々に良い攻撃でしたが、怒りという感情に任せて放ったせいで、標準は合っていませんし、見かけだけの威力で実際は赤子が触った程度のものでした」


「どうして……! さっき剣が変わった時も薙ぎ払った時も凄い力を感じたのに」


驚きの声を上げるエニアル、リオライズは今の一連の行動を速やかに分析を始めた——


「残念っすけどエニアルさん……ヴィンティス先生の話に嘘偽りは無いっす。俺でも今の先輩の攻撃は赤子同然だった……」


「で、でも確かに感じた」


「それは恐らくエニアルさんが、まだ本来の属性を身に付けていないからだと思うっす。あれは、属性持ちなら瞬殺されるレベルっすよ——」


「では大人として手本を見せてあげましょう」


腰に装備している刀を一本抜いただけで、コロシアム全体が揺れるように、風が吹いた。

その光景を三人は、時が止まったかのように釘付けで見ていた。そしてヴィンティスは、背中に片翼の羽を広げて空高く飛ぶと——


「風属性を極めれば、空を舞うことも容易に出来るのです。では——参る」


大剣で防御耐性に入るゼオン。

突風のように、風が吹き、驚いたゼオンは目を瞑ってしまった。


しかし次の瞬間——


——ピチャピチャ

何かが滴る音が聞こえて視線を向けると。


「……は………? これ血か……」


ガランガランッと、大きな音を立てて落ちる大剣。

そして、自分の左腕が落とされていることに、ようやく気付きゼオンは、激痛と恐怖のあまり泣き叫んだ。


「……あっあぁぁぁぁぁぁぁ!」


泣き叫ぶ声を聞いたリオライズとエニアルは、驚愕した表情でゼオンを見つめ、ヴィンティスは落ち着いて話し始める。


「これで私が一つ勝ち点を貰いました。戦闘になれば、このレベルを許容するのは当たり前になる……」


「………ぐっ……」


「落ち着きなさい。腕くらい修復可能です」


あまりにも淡々としすぎているヴィンティスに、その場にいる者は恐怖という感情へ変化していった。

腕を正確な方向でくっ付けて、そのまま傷口に手をかざすと、先程とは嘘のように、みるみる元通りになっていった。


「………カハッはぁ、はぁ……はぁ……」


ゆっくり呼吸するゼオンに、ヴィンティスは覗き込むようにして、聞いてくる。


「ゼオン・ルーゼ……まだ授業を続けますか?」


「まだ子供にあの体験は早すぎる。でも……一つ分かったことは、先生と俺の考えは似てるっす……」


「どういうこと?」


「俺も間違いなく先手を取るなら、相手の精神を壊す攻撃、仮にそういう意図じゃなくても、体の一部を破壊するのは同意ってことっすよ」


少し引かれた表情で目線を向けられてしまい、リオライズはショックを受けてしまった。


「やっぱり属性を持っていないと、リオライズさんもヴィンティス先生も怖い人だなって思っちゃいます……けど、ちゃんと目覚めれば、ヴィンティス先生と僕も互角に戦えるでしょうか」


「俺は確定で勝てる保証があるっすけど、エニアルさんはどうでしょうね〜」


当事者ではないからこそ言えるような軽口が交わされていた。

そんな矢先——


アリーナからゼオンの叫ぶような声が響き二人は一斉に振り返った。


「——やります!」


ヴィンティスが一瞬眉を上げて問い返す。


「理由を聞いても?」


「俺の勝手な解釈だけど、この対人の授業は”精神を鍛える”授業だと。であるなら、今ここで辞めてしまったら脱落しなくても二度と成長出来ずに終わる気がするんだ……」


ゼオンは大きく深呼吸して立ち上がると続けて話す。


「だからまた腕を落とされてもやる! これが俺の答えだ……」


ゼオンの決意ある言葉にヴィンティスは少し微笑んでいた。


「あの一撃だけで、ここまで成長出来るだけでも、及第点と言った所でしょう……では授業を続けます」


一度落とされた左手で、転がっている大剣を強く握りしめて剣先をヴィンティスに向ける。


明らかにヴィンティスの攻撃を受ける前と、受けた後で目つきが変わっていた。

今のゼオンの瞳は本当に逆転する雰囲気を漂わせていた――


大剣を掲げると、そこから風の魔力が集まって行き、緑の閃光を輝かせた。


「打ち放て……!風の閃光弾ウィンド・ライトスコール!」


ゼオンが技名を言い放ち天空を覆うように魔法陣が現れ、空から風の閃光弾が無数に降り注ぐ。


「嫌な予感がする……エニアルさん! 一旦屋根のある所に避難するっすよ!」


「う、うん——!」


「なるほど考えましたね……ゼオン・ルーゼ。空を飛ばれると攻撃が当たるか分からない。地上で戦うには行動パターンを確認してから……か」


「それもそうだが、俺は負けない……! この閃光は術を発動させた者に当っても無傷だけど、一撃でも相手に当たれば……」


最後の説明をしようとした直後にヴィンティスは閃光を回避しきれず当たってしまう。


その瞬間――


ヴィンティスは血しぶきを上げて膝をつき、止まらない目眩に襲われた。


そしてゼオンは、すかさず一撃を入れ込んだ――


「そこぉぉぉぉぉぉ!」


――グシャ


大剣を下から大きく振り上げて、鈍い音とともにゼオンは、返り血を浴びながら、大剣の光が消えるのを感じた。


激戦後に、体が悲鳴を上げて崩れ落ちそうになるも、ヴィンティスの言葉で安堵の表情に変わった――


「お見事です……これで勝ち点は同点となりました」


ゼオンの傷を癒やした時と同じように、自らの傷跡にも手をかざし、ゆっくりと体を起こしていく。


ヴィンティスは静かに、そして完全に回復していた。


「今の一撃はさっきのお返しな! これでラスト、俺が決めれば勝ちだ!」


「良い覚悟です。それに今の貴方にその言葉は説得力がありすぎる……全力で来なさい。ゼオン・ルーゼ——」


———こうしてII組第一授業、《風属性試験一試合目》はラストアタックを迎えるのだ———

次回は少しだけゼオン編をやりリオライズ戦へ舞台を移してお届けします

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― 新着の感想 ―
デスゲーム×学園ストーリーということで、ワクワクドキドキしながら読ませていただきました! キャラクターそれぞれが作り込まれていて、良かったです。 ありがとうございます!
なかなかのバトル! 今夜の飯がうまくなりそうだ。
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