Death Game: Wish Magic(デス・ゲーム: ウィッシュ・マジック)
十二人の生徒が命を賭けて挑むデスゲーム×学園ストーリー
遂に、記憶持ちへと進化していない{ゼオン、エニアル、サイラス}を学園から連れ出した。
逃げる選択肢を下し、次なる舞台へ駒を進める生徒たち。
そこで彼らは、不思議な空間へと辿り着く。
不可思議なもう一つの鼓動。願い込めた先に——
《Death of the Academia》をお楽しみください
いや……違うな。
僕はあの時、決めたじゃないか。
もう迷わないって。
アーサーさんを助けたい。みんなで生き残りたい。
その気持ちだけは譲れない。
――なら、どうする。
戦う。勝って証明する……! どんな困難があろうとも。
ネリカは頬を叩き、剣を握りしめた。
血に濡れた戦場。水浸しになりながらも、なお立ち上がるヴェイルの姿が視界に映る。
サイラスは呪いに操られ、無情に剣を振りかざそうとしていた。
「駄目だよ……サイラス」
ネリカは剣を構え直して、一歩を踏み出す。
「その人も、君も、この世界を救うのに必要な存在なんだから、大人しくして――」
水面に小舟が流れるように、ネリカの剣が波紋を打ち、サイラスの一撃を逸らした。
「ヴェイル、指示をお願い!」
この隙に目的が分かれば、一気に行ける……!
「……心臓だ。心音と別の鼓動を調べろ! 正体が分からない以上、むやみに攻撃するのは許さん」
「了解!」
ネリカは舞うように刃を走らせ、サイラスを追い詰める。
だが、問題は――その鼓動の対処方が分からないこと。
ヴェイルは脳裏に、精神攻撃を得意とした最初の脱落者――ソニントの影をよぎらせていた。
次の一手が、不意打ちできる絶好のチャンスになる……!
ゼフィリーは一人、ホワイトの創り出した時の止まった家の入り口で、息を殺していた。
闇に潜み、獲物を狙う狩人のように機会を窺う。
その一方で——リオライズが、右足を負傷したアラリックの腕を支えて、立ち上がらせる。
彼らの視線の先には、杖を握りしめるエニアルの姿があった。
「アラリックさん……作戦の確認っすけど、エニアルさんが術を放とうとした瞬間、俺がゼフィリーさんの魔法が届く射程まで持っていく。……で、いいんですよね?」
俺は自然と、アラリックさんの声を聞く前に、作戦を話していた。
長く一緒にいるからか、それとも恩人として無意識に身についたのか――思考の流れまで、いつしか真似ていたらしい。
――ゼフィリーさんをここで使う。というのは、本能的に理解できたのだ。
アラリックさんの口元が一瞬、緩んだ気配がした。
が、すぐに真剣な眼差しで頷き、言葉を返してくれる。
「問題ない。右足も力を入れなければ、置物と変わらん。気にせず飛べ」
そう。
仮にエニアルさんが、ゼフィリーさんの奇襲を読んでいたとしても、二度目の一撃をアラリックさんと同時に叩き込めば――心臓の正体に迫れる大チャンスになる。
「痛い、苦しい。早く僕らを解放してくれ……」
エニアルさんが必死に、声を振り絞って訴える。
胸の奥、本物の心臓の下で蠢く偽物の心臓が、不気味に闇色を帯びていた。
禍々しい光は杖先まで侵食し、膨大な魔力がこちらに向けられた。
刹那――
轟音とともに、巨大な風玉が唸りを上げて爆ぜる。
砂煙が一瞬で戦場を覆い、追撃のように黒い雷が落ちた。
アラリックさんは砂煙の中を後退し、視界の先には真紅の血が階段のように折り重なり、坂を形作っていた。
俺はただ前へ――エニアルさんへと走り出す。
「考えることは歪っすけど……そのお陰で、俺は何度も救われてるっすよ!」
再び奔る、風の閃光。
だけど、天に叩きつけられる雷鳴すら置き去りに、軽やかに身を翻す。
その勢いのまま――偽物の心臓へ拳を突き立てた。
「ゼフィリーさん、お願いしますッ!」
掌を通して、鼓動のような蠢きが伝わる。
バキバキと鈍い音を立て、心臓そのものが意志を宿したかのように、俺の拳を押し返しているのが分かった。
その瞬間、世界の速度が捻じ曲がる。
時空が歪み、エニアルの体は軋むように、後方へ吹き飛ばされた。
やがて、ゼフィリーが影から顔を覗かせると、杖を強く握って願うように魔力を込める。
——お願い、力を貸して……ソニント。
杖先が灼熱し、炎が迸った。
刹那、大砲めいた火炎が奔流となって偽の心臓を焼き裂いていく。
「あぁ……! あぁぁぁぁぁぁぁ!」
禍々しい闇の光と、紅蓮の炎がせめぎ合う。
解放へと足掻くエニアルと、依り代として縛ろうとする偽の心臓――互いの悲鳴が重なる。
そのの断末魔は、サイラスとネリカの死闘さえも凍りつかせた。
医者として、審判として彼らの戦いを見ていたホワイトも——ずっと目を奪われたように、その結末を見据えていた。
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