Death Game: Second Pulse(デスゲーム: セカンド・パルス)
十二人の生徒が命を賭けて挑むデスゲーム×学園ストーリー
遂に、記憶持ちへと進化していない{ゼオン、エニアル、サイラス}を学園から連れ出した。
逃げる選択肢を下し、次なる舞台へ駒を進める生徒たち。
そこで彼らは、不思議な空間へと辿り着く。
不可思議なもう一つの鼓動。鍵を握る攻略法は——
《Death of the Academia》をお楽しみください
「呪い持ちの彼らが、自我を持っていたとしても……何が起きるかは分からない。少なくとも七人で、容易に勝てると思わない方が良いでしょうね」
ホワイトの言葉に、俺はすぐさまレンリーへ言葉を投げかける。
「レンリー、お前は生き残らなきゃならない! 安全な場所に隠れて、じっとしていろ!」
とはいえ、この閉鎖された空間で隠れるのは、無理難題かもしれねぇが……
レンリーが背を向けて駆け出した。
その瞬間、上空から大剣が大きく振り下ろされる。
「わっ——!」
紙一重でその猛追をかわし、視界が砂塵で覆われる。
地を割るような激しい衝撃音が空間を切り裂いた。
「体が、勝手に……」
ゼオンが空を舞い、震える声で呟いた。
どれだけ握っている大剣を剥がそうとしても、吸い寄せられるように柄に絡みつき、離れない。
散乱したガラス片が淡く光を帯び、ふわりと宙に浮かぶ。
アラリックが、レイピアを抜いた瞬間――破片が弾丸のごとくゼオンに穿たれた。
刹那。
氷結の巨大な腕が、盾のようにゼオンの前にせり上がる。
破片は掌で溶け、じわりじわりと冷気をまとう腕の影が迫る瞬間——
「馬鹿が……」
アラリックの一閃は、糸を通すほど正確な一撃。
氷結の腕は一刀両断され、霧のように砕け散った。
俺たちは実質、五人で戦っている。
ゼフィリーは身を隠し、逆転の切り札となるべく潜んでいる。
レンリーは約束通り、安全な場所まで守ると俺は誓った。
剣を構えて、上空を見上げる。
アラリックがゼオンへ斬り込む気配――なら、まず邪魔をするのはお前だ、サイラス!
「ストリクス。お前はレンリーの側で護衛を頼む!」
そう告げた瞬間、レンリーの両翼から巨大な竜巻が迫る。
ストリクスは、爪先をトントンと鳴らすと、ゼオンの残した地面の亀裂から炎が辿った。
——竜巻は火の風となり大きく爆ぜて、火花を散らした。
「こちらは問題ない。何かあれば、そちらも援護する」
「おう! 期待してるぜ」
背中を合わせるように、笑顔でストリクスを見送る。
そして、やり取りしている間も地面から滲み出す魔力の流れ。
サイラスが見えぬところで、あの巨大な腕を生み出していた何よりの証拠だ。
――サイラス。俺らが率いる水属性の生徒さまは、簡単に見抜かれるような冷気は出さないもんだぜ!
剣先が灼熱を帯び、刃を走る炎が弾ける。
地を思い切り蹴って、サイラスへ放物線を描いた——
しかし、俺はある違和感を覚える。
胸元へ刃が触れた瞬間——心臓ではない何かが脈を打ったのだ。
振り抜いた剣も、制服を少し掠めただけ。
疑念を抱いた俺は、サイラスに問いかけた。
「サイラス、お前。何を隠してる?」
「知らねぇよ! 俺だって気持ち悪ぃんだよ、こんな感覚……!」
気持ち悪い感覚というのは、さっき俺が感じた、もうひとつの鼓動と共通しているのか?
——もし正体を暴ければ、この戦いに勝ち目がある。
「アラリックさん! 避けて!」
希望を見出した瞬間だった。
リオライズの叫び声が、戦場を揺らした。
視線を上げると、ゼオンの背後に別の影が蠢く。
しかしその時、俺は一瞬の隙を突かれ、水の檻へと囚われてしまった。
音が遠のき、視界が歪む。
海底へと沈められるように、胸を締め付けられた。
水中で揺らめくアラリックの姿。
奴はゼオンを蹴り飛ばし、影の刺客がゆっくりと形を現す。
風を裂く音。影から出てきたのは——エニアルだった。
杖を振るい、金色の髪を靡かせると、杖の先端から風の魔力が集まってくる。
リオライズが拳を高く掲げて、見えない風吹がエニアルの魔法と衝突して大きく爆ぜる。
そして白煙の中から、血を流して落ちていくアラリックを目の前に、俺は水中で必死に叫ぶ。
「――――っ!」
刹那。アラリックが俺を見て、指を弾いた。
ドリルのように鋭い術が放たれると、水の檻がシャボン玉のように弾け――俺はむせながら、深く息を吸い込んだ。
顔を拭ってアラリックに目を凝らすと、血だまりの中に右足首を抑えて座り込む姿が映った。
ほんの少し視線を逸らせば、血の塊――おそらく肉片のようなものがポツリと転がっていた。
「………リックさん……丈夫………ですか?」
「問題ない…………より、あいつらは」
耳に水が入り、声が途切れてうまく聞こえない。
周囲を見渡しても視界は歪み、力が抜けていく。
あの心臓の違和感を………伝えなくては。
誰か、代わりに――
ヴェイルの意識が朦朧とする中で、リノ・ネリカは一人――胸の内で悩んでいた。
みんな、命を懸けて戦っているのに……僕は何もしてない。戦えてない。
アーサーさんのことがあるから、戦うのが怖いだけかもしれないけど……
僕はどうしたらいいの……? 教えてアーサーさん。
最後まで読んで頂きありがとうございます。




