Death Game: Gambit Rising(デス・ゲーム: ギャンビット・ライジング)
十二人の生徒が命を賭けて挑むデスゲーム×学園ストーリー
遂に、記憶持ちへと進化していない{ゼオン、エニアル、サイラス}を学園から連れ出した。
逃げる選択肢を下し、次なる舞台へ駒を進める生徒たち。
そこで彼らは、不思議な空間へと辿り着く。
新たな切り札へ向けた、一戦へ――
《Death of the Academia》をお楽しみください
「ふむ、ふむ、ふむ。七:三……七人の健常者に対して、三人の呪い持ちと言ったところか」
片眼鏡で、子供たちを覗くように観察する。
呪い持ちは闇にとらわれ、健常者は光に満ち溢れる存在を示してくれる特殊眼鏡だ。
パイプたばこを取り出し、一服しながら彼らに告げた。
「初めまして、先程は失礼なことをしてしまいましたね。ところで……貴方たちは、何をしにここへ来たのですか?」
アラリックという名の青年と、駆け寄ってきたもう一人の黒ローブの青年が耳打ちで話し込む。
「僕に対して、明らかな敵対行為。しかし、単なる防衛反応なら話してみる価値はある」
「もしそっち側の人間だった場合は………いや、とにかく敵意がないことを示して、協力する方向に持っていけないか賭けるしかねぇな」
二人は頷いて意思を固めると、黒ローブの青年が前に出て話始めた。
「驚かせてすまない。おれ……私たちは、この世界の謎を解き明かすために活動している学生の集団だ」
おそらく嘘は言っていない。
私の分析も、今しがた目にしたばかりだ……言ったところで無意味だが。
「貴方に対して敵意はない。世界の根幹を揺るがす元凶との戦いに向けて、協力者を探している途中で、ここに迷い込んだんだ……!」
何故だろう……この青年たちと、私はよく似ている。
誰から産まれたのか、どうしてこの世界に降り立ったのか分からず、何千年もの間、この空間で生き続けた。
基本は独学で勉学に励み、僅かに外から入ってくる情報を頼りに、気付けば時間操作の術を体得していた。
「君たちの言い分は理解した。しかし、私がその協力者に為りえるかどうかは別問題です」
そう……私は外の世界を全く知らない。
この場所さえ残るなら、世界が秩序に転んでも、混沌に飲まれても、どちらでもいい。
「私の名はホワイト。医学……人の蘇生や、傷の治癒なら誰にも劣らない。―― ――つまり、私を欲するならば、試練を越えてみせなさい」
「何をすればいい……?」
私は懐中時計を取り出し、人差し指で針を弾く。
——カチッと音を立てた瞬間、宙に浮いていたガラス片が一斉に落ち、鋭い破片が地面に散らばる。
そして、呪い持ちとして囚われている三人の子供をじっと見据えた。
「協力者を求めるなら、仲間の呪いを解くことは絶対条件。それもできないのなら、話にならない」
「うっ……ゴホッゴホッ」
突如、呪いの気配が濃くなった。
咄嗟にサイラスたちを見ると、胸を押さえて悶え苦しみ、その場に倒れ込む。
「落ち着け! 全員、自分の体に属性魔力を――!」
「無駄ですよ。貴方たちが、元凶にどんな恨みを持たせたか知りませんが……この呪いは随分と強力です」
リオライズがゼオンへと風属性の魔力を流し込む。
淡く緑色の輝きが包み込むも――拒絶するように光は失われた。
「どうやら、その先生の言ってることに間違いはねぇです。アラリックさんが帰ってくる直前に、真実を言い終わったっすから」
そういうことか……!
アラリックたちが、家の探索をしている時は、時間が止まっていた。
だけど帰ってきた後で、ホワイトの手によって動き出し、そのタイミングで呪いが発動したと考えれば説明がつく。
「ゼオン、エニアル、サイラス。辛いだろうが、俺たちが必ず助ける。だから、剣を振るっても気にすることはねぇ」
重い感情は出さず、仲間のためにも優しい声色で語りかける。
あいつらが帰ってきた時、余計な自責に苛まれないように——
「記憶持ちの人間に告ぐ。これより呪い持ちの仲間を救い、新たな協力者獲得へと進行する! 誰も殺さず、犠牲者を出さず、勝利せよ!」
呪い持ちの三人は、まるで操られているかのように剣を取る。
一方、俺たち記憶持ちの人間は、刃を静かに彼らに向けた。
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