Death Game: Time-Stop World(デス・ゲーム: タイム・ストップ・ワールド)
十二人の生徒が命を賭けて挑むデスゲーム×学園ストーリー
遂に、記憶持ちへと進化していない{ゼオン、エニアル、サイラス}を学園から連れ出した。
逃げる選択肢を下し、次なる舞台へ駒を進める生徒たち。
そこで彼らは、不思議な空間へと辿り着く。
待ち受ける者の正体は——
《Death of the Academia》をお楽しみください
俺たちは、ひたすら走り続けた。
行く当ても、帰る場所もなく、ただ『学園から離れたい』という気持ちで、無我夢中にゼオンたちの手を引いている。
息が上がり、視界が波打つように揺れ、頭が重い。
心臓が『止まれ』と叫んでいる。
これ以上無茶をすれば、人間の動きに心臓が追いつかなくなるからだ。
不意に後ろを振り向けば、あの呪われた学園の影は完全に消えていた――
それどころか、俺たちの知る国や都市ですらない。
信じられない光景に、俺は全員に問いかける。
「なぁ………俺たち、どれくらい走ってたか覚えてるか?」
体の疲れや、学園が見えなくなるのが早いとは感じていた。
リゼルドととも接触していない今――攻撃を受けているかもしれない。
「異常だ。まだ数メートル単位でしか逃げてないのに、この風景は……」
「少なくとも、俺たちが追憶の海底から帰ってくる時は、こんな街並みじゃなかったっすよ」
ストリクスとリオライズは、自ら足を運んで外の景色を見ている。
それも平凡とは言いがたい——異様なまでに静かな世界。
白壁の家々が左右に並ぶ び、全て均一の高さと形をしている。
足元を見れば影を映さず、風の吹く音も、鳥の鳴き声すらも聞こえない。
本当に時間が止まった、異空間そのものだった——
「静止の世界、体の違和感……魔力の気配はない」
「えぇ……! 僕たち、死んだんですか?」
分析していた俺の独り言に、レンリーが縋るような声で返した。
衝動的に、首筋の脈に指を当てる。
――ドクリ、ドクリ。
確かな鼓動が伝わってきて、胸の奥から大きく息を吐いた。
「安心しろ、俺たちは生きてる。……ただ、ここが死後の世界かもしれないってだけだ」
「でも……そんな特別そうな場所に、こんな簡単に足を踏み入れられるなんて……違和感しかありません」
レンリーの言う通りだ。
まだ情報が不透明。下手に動いて、仲間を危険に晒すわけにもいかねぇ……
「今から、静止空間の探索組とレンリーたちの護衛組に分かれる。俺たちが来るよりも前から、生存者がいるかもしれないしな」
そいつも、世界の謎について解きたがっているなら……一石二鳥だ。
仮に敵対心を感じれば、勝って黙らせる。
「アラリックとゼフィリーに、中の探索を頼みたい。引き受けてくれるか?」
「もちろん、やらせてもらうよ」
ゼフィリーの穏やかな声に、アラリックは無言で頷いた。
「少しでも危険を感じたら、帰ってこいよ」
俺の言葉を聞きながら、踵を返して家々の並ぶ方へと歩み去った。
俺は残った仲間へと視線を戻す。
ここから先に進むためには、隠してきた真実を伝えねばならない。
「……じゃあ。お前たちには話しておく。今日まで、俺たちがどんな活動をして、どんな風に戦ってきたか――」
リスクはあっても……サイラス、ゼオン、エニアルは記憶持ちへ進化させる決意を固めた。
Ⅱ組生徒であるネリカとリオライズには見張りを任せ、ストリクスとともに危険を承知で――俺たちの戦いを遂行していく。
時を同じくして、アラリックとゼフィリーは、一つ目の家の前へ立っていた。
木製の扉には細い亀裂が走り、まるで止まった時計の針が四方八方へ伸びているようだった。
二人は顔を見合わせ、ゼフィリーが拳で静かに扉を叩いた。
「すみません……誰かいませんか? 開けてください」
しかし、返事はない。
重たい沈黙の中で、ゼフィリーが小さく息を呑み、不思議な感覚を吐き出した。
「今ノックした瞬間、生きている気がしなかった。本当に、時間が止まったみたいに」
アラリックは黙って左手の革手袋を外し、扉へと触れる。
その掌から大地の気配が広がり、柔らかな光の魔法陣が浮かび上がった。
中央に魔力が集まる――だが、そこから先へは進まない。
力は流れ込むのに、扉は沈黙を続けている。
「魔力は感じるが、手ごたえを感じない……」
「この扉が入り口じゃないのかな?」
張り詰める空気。
『そもそも中に入れない仕組みなのかもしれない』と二人が辺りを見渡した、その瞬間――
冷たい風が、唐突に背後を抜けた。
止まっていた世界が、ほんの少し動き出したように。
「アラリック、これは……」
即座に扉に目を向けると、数センチの隙間が開いていた。
アラリックは、レイピアを家中に覗き込むようにして気配を探る。
「罠はない。しかし……間違いなく誰かいる」
アラリックの低い声に、ゼフィリーは背筋が凍えた。
魔力が無効化される可能性はあるものの、杖を構えて真っ直ぐ扉の向こうを見据えた。
「行くぞ」
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