Death Game: Escape Decision(デス・ゲーム: エスケイプ・ディシジョン)
十二人の生徒が命を賭けて挑むデスゲーム×学園ストーリー
遂に、記憶持ちへと進化していない{ゼオン、エニアル、サイラス}を学園から連れ出した。
逃げる選択肢を下し、次なる舞台へ駒を進める生徒たち。
その一方で、心の奥底で蠢くマリーナたちの違和感。
彼らがこの先、進む道とは——
《Death of the Academia》をお楽しみください
待ち構えていたのは――マリーナとヴィンティス。
彼女らは、自身のわずかな魔力で学園のほとんどを寸断し、校庭は瓦礫の更地へと変貌させていた。
僕らは、その圧倒的な破壊と、目の前に広がる絶望的な光景に、ただ呆然と空を見上げるしかなかった。
思考する間もなく、ヴィンティスの風魔法に乗って滝のような激流が、僕らに向かって放たれた。
アラリックが左腕を天に伸ばすと、教室全体を覆うほどの巨大な岩壁が、盾となる。
それに続くように、僕も糸のように薄い火炎の壁を張り巡らせた。
その水圧は凄まじく、岩壁はミシミシと音を立て、崩れていく。
ひび割れた個所から火花のように破片の雨が降り、僕の腕も炎の壁を支え続ける魔力の負荷で、軋むように悲鳴を上げ、重く痛みが奔る。
奴らの攻撃に対抗するのが手いっぱいで、仲間の状況も顔すら見ることがままならない。
刹那――
マリーナの術によって限界を超えた岩壁は、遂に破壊された。
炎の壁を貫通した激流が火の魔力に接触した瞬間、真っ白な蒸気がなだれ込み、僕の左腕は大きな火傷跡が赤く燃え、皮膚が爛れた。
「――っ!」
灼熱の痛みに呻きながら膝をついた僕の横で、アラリックが電光石火のごとく動き出す。
砕け散った岩壁の破片を、無数の鋭利な刃に変えて石礫のように細かく斬り裂き、音もなくマリーナたちへと打ち返した。
しかし、ヴィンティスが軽く手を振り払っただけで、石礫は虚しく校庭に叩きつけられた。
瞬時に白煙の柱が立ち込めると、まるで巨大な爆弾でも落ちたかのように、黒く焦げた地が深く陥没させていた。
圧倒的な力の前に、僕らの足は意思とは逆に、後ろへと引きずっていた。
崩壊しかけた冷たい黒板に背中が当たり、全身が凍てついたような感覚に息を呑んだ。
誰もが『抗えない』と感じ、絶望に諦めかけたその時――沈黙を打ち破り、熱を帯びる、たった一つの声が上がった。
「諦めんなっ! お前らも、これで分かっただろ」
その力強い声で鼓舞したのは――かつて何度も絶望を経験し、なおも立ち向かい続けるヴェイルだった。
そして、記憶持ちへ進化していないサイラスたちも、ヴェイルの献身的な声に、振り返って耳を傾ける。
「嘘を吐いてでも、逃げなきゃいけねぇ理由があったんだ。――ほとんど手遅れになっちまったがな……」
鞘から剣を引き抜き、天に掲げてヴェイルは高らかに宣言する。
「……戦え! 奴らは、自身の神の意向を愚直に信じ、無差別に人を殺す偽善の悪魔だ」
微かに掲げた剣先が光を帯びると、底知れぬ強い魔力がヴェイルの剣へ集まっていく。
剣にまとう魔力は灼熱の炎に変わり、冷え切った全員の心に再び熱を灯す。
「志を共にする者は、俺と来い――!」
ヴェイルの剣先から、静かに爆炎が凝縮され、巨大な火球が形を成す。
薙ぎ払うように打ち放つと、鳥籠のようにマリーナとヴィンティスを包み込んだ。
「あら……随分と大胆じゃないの」
側から見ただけでも、肌を刺すような圧が彼女らを追い詰めている。
僕は腕に走るヒリついた痛みに耐え、レイピアを静かに引き抜いた。
刹那――
アラリックが即座に土を突起させ、駆け上がるための坂道を創り出した。
迷っている暇はない。僕は全力で走り出す。
ヴェイルの術が二人に触れる、その瞬間こそが――命運を決する鍵になる……!
爆炎の檻の目前に辿り着き、全身の力を込めて地を蹴る。
マリーナには、魔力を宿す腹部へ。ヴィンティスには、追跡を封じるため眼へ――回転の勢いを乗せ、剣を振り抜いた。
「――ここだ!」
鋭い一閃。
血飛沫が弧を描き、頬を濡らす。
次の瞬間、爆炎が炸裂し、轟音とともに二人の身体は地へと叩き落とされた。
視線を落とすと、リオライズたちが三人の手を引いて学園の外へ向かっているのが見える。
動かなくなったマリーナたちを横目に、仲間の後を追う。
こうして、僕らは新たな舞台を求めて——世界を救うために、戦っていく。
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