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Death of the Academia 〜十二人の生徒達が紡ぎ世界を巡る英雄譚〜  作者: 鈴夜たね
I組生徒の嘆きの混沌編【エピローグ】
107/115

Death Game: Infernal Trial(デス・ゲーム: インファーナル・トライアル)

十二人の生徒が命を賭けて挑むデスゲーム×学園ストーリー


ネリカの記憶持ちに復活した真意を知るも、思わぬ形で決別してしまったリゼルドとアラリック。


そしてグランの死を通じて、記憶持ちへと進化を遂げるゼフィリー。

一方で——レンリーには、大きな問題が立ちはだかる。


I組の生徒へ課せられた、最難関の試練を彼らは突破できるのか——


《Death of the Academia》をお楽しみください

「駄目だ。マリーナたちがここへ戻ってきたら、俺たちは——生きて帰れない」


今から、リゼルドに救援を……いや、間に合わない。

Ⅱ組の残りの生徒を無理にでも説得して、この拠点(学園)を捨てて逃げるしか――!


「今後の戦いに、あいつらの力は欠かせない。一人でも欠ければ、その瞬間に勝ち目は完全に消える! だから――」


焦りが混じる声に、ネリカたちは心配そうな瞳で、俺を見つめる。

震えが止まらない。もう、弱さは見せないと……決めたはずなのに。


その時、会議室の入り口が何かで引きずられたような音が鳴り響いた。

——そして全員が振り返る。


「ヴェイル。貴様の言う通り、もはや悠長にしている時間はなさそうだな……」


その声音と、どこか尊大な口ぶり。

扉の隙間から顔を覗かせたのは――鋭い眼差しを持つアラリックだった。


最初は、嫌いだった奴の目も……今は本当に頼もしい。

会議室の不穏で冷たい空気は、光の温かさへ変わっていく。


「分かってる。今から何かしらの口実を作って、全員で学園を出るつもりだ」


「なら、すぐに説得しに行かないと――!」


そう言って、駆けだそうとするリオライズを制止したのはアラリックだった。

たちまち会議室の壁に反響し、全員が縫いつけられたように動きが止まる。


「――問題はない。説得は、ストリクスに任せてある」


足を止めたリオライズに、アラリックは淡々と続けた。


「片づけを終えて、三人をⅡ組の教室へ招集した。その後に物音に気付いたストリクスが、その役割を引き受けたのだ」


三人――そうだ。

最初の二人が脱落して以来、俺たちは十人で進んできた。

そこから仲間を増やして……今、記憶を持たないのは、たった三人だけ。


それによく考えりゃ、遠隔で呪いが発動されたとしても、全属性魔力(学園に存在する四属性)の持ち主がいるなら、万一の事態にも備えられる。


「様子を見に行こう。何かあった時でも、すぐ助けられるようにな」



そしてⅡ組の教室では、前列にゼオン、サイラス、エニアルが並んで座っていた。

ヴェイルの言葉に応じ、それぞれ自分に課された役割を背負い、戦っている。


「悪いけど、長々と説明している時間はない。もうすぐ、この学園を快く思わない()()()()()という団体が到着する」


突如として告げられた言葉に、ゼオンたちは顔を見合わせ、困惑を隠せない様子だった。


当然だ……マグヴィフなんて団体は架空の存在で、奴らの魔の手から、逃れるための口実に過ぎないのだから。


「急にそんな話されて、信じられるわけねぇだろうが! そいつらが、ここに来る証拠でもあんのかよ!」


サイラスが荒々しい態度で詰め寄り、僕を威圧する。

無論、彼らにとって僕たちは――余計なことしかしない邪魔者だという認識なはずだ。


「この前の脱落試験で、アラリックとリオライズは別の試験を受けていたのを覚えてるだろ? その帰りに、マグヴィフが宣言したそうだ」


こんな押し問答をしている暇はないのに……!

一刻も早く、この場から離れないと。


これも、マリーナたちが仕掛けた呪いの影響なのか――


徐々に焦燥が面に出そうになった時、廊下から微かな気配が走った。

直後、教室の扉が開き、アラリックがヴェイルたちを連れて姿を現す。


「ストリクスの言っていることに偽りはない。今しがた信用できる連中と、作戦を立てていたところだ」


その一言に、教室は水を打ったように静まり返る。

同時に強い風が窓を叩き、聞こえるはずのない波の音が、次第に近づき始めていた――


「ごめん、本当に時間がない。だから、言うことを聞いて……!」


刹那——

頭上で何かが擦り切れるような鋭音が耳を貫く。

視線の先でも、透明ながら細い糸の一閃が空間を裂いたのを、僕は見ていた。


「ここまで……か――」


一階の天井が崩落し、轟音を響かせながら——白煙が校庭に舞い上がる。

そこで目にした光景は——美しくも凶兆を示す青空だった。


「は〜い、残念。時間切れよ、可愛い生徒ちゃん」


天を舞う彼女らの存在感だけで、記憶を持つ生徒たちの心を絶望で塗り潰すには、十分だった。

最後まで読んで頂きありがとうございます!

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