Death Game: Worst End Fallen(デス・ゲーム:ワースト・エンド・フォールン)
十二人の生徒が命を賭けて挑むデスゲーム×学園ストーリー
ネリカの記憶持ちに復活した真意を知るも、思わぬ形で決別してしまったリゼルドとアラリック。
そしてグランの死を通じて、記憶持ちへと進化を遂げるゼフィリー。
一方で——レンリーには、大きな問題が立ちはだかる。
I組の生徒へ課せられた、最難関の試練を彼らは突破できるのか——
《Death of the Academia》をお楽しみください
そして、僕は寮を出てⅠ組の作戦会議室へ向かう。
かつて自分が思い描いていた理想の教室を横目に見ながら、ヴェイルとリオライズに足並みを揃えた。
ほんの数分前の出来事が、脳裏に蘇る。
二度目の決意を口にした直後、アラリックから思わぬ提案があったこと。
「じゃあ、シーツの洗濯は僕がやってあげる。先に会議室へ行ってくれ」
「えっ……任せていいの?」
困惑する僕をよそに、アラリックの指先から小さな水球が生まれる。
それが宙に浮き、汚れの広がった布地に触れた瞬間――透明な球体が、まるで吸い取るようにシーツを清めていった。
「万一、貴様が水属性の魔力を無駄に使って……アーサーの復活ができなくなったら、堪ったものじゃない」
やがて水球は大きさを増し、シーツ全体を包み込みながら静かに漂う。
冷たい人だと思い込んでいた彼の背中は、不思議なほど温かく、優しい人に見えた。
「ありがとう、アラリック。こんなことさせて……本当にごめん」
「……これが終わったら、すぐに追いつく。できる限り、情報を絞り出しておけ」
「結局、任せちゃったけど……本当に良かったのかな」
自分で汚したものを、他人に押し付けてしまうなんて――到底考えられない。
けれど、僕が下手に水属性を使って、アーサーさんの復活の可能性を潰してしまったら……それこそ本末転倒だ。
「問題ねぇよ。あいつらしい、仲間だと認識してもらう儀式みたいなもんだ。気にせず歩けばいいぜ!」
ヴェイルが笑みを浮かべて、軽く肩を叩く。
その横顔は頼もしく、今この場で一番輝いているのは、きっと彼なのだろう……
また背中を押してもらった――そんな気を感じた時。
「待たせたな、二人とも!」
ヴェイルが勢いよく扉を押し開け、会議室に踏み込む。
視界に飛び込んできたのは、レンリーとゼフィリーが互いに向かい合い、真剣な表情で何かを話している場面だった。
「おかえり、ヴェイル。ネリカたちを連れてきてくれたんだね」
「おう。アラリックも後から合流する。それで、レンリーと何を話してた?」
ゼフィリーは机上の紙を一枚手に取り、びっしりと書き込まれた文字列に視線を落としながら口を開いた。
「これ……会議室に備えられている魔法紙。僕が覚えている限りの出来事を思い出して、書き留めてみた」
ヴェイルがちらりと視線を扉付近に向けると、紙束が山のように積まれていた。
レンリーは居た堪れないように顔を伏せる。
「ごめんなさい……やっぱり思い出せなくて。ゼフィリーさんの言ってることに間違いはないと思うんだけど……」
「記憶が無いと、戦闘において古来の実力が発揮できない可能性もありますし……深刻っすね」
やがて僕も席に着き、リオライズと共に会議へ加わる。
議題は一つ――グラン先生の死の真相。
「俺も情報を出せるとするなら、奴の死体を見た時……泣いてたこと。そして瓦礫を片づけた時、フラーナの姿が消えていたことだ」
「昨夜は怒涛の一日でしたからね。どうです……ネリカさん。死ぬ間際、グラン先生から何か言葉はあったっすか?」
ヴェイルに問われ、昨夜の記憶を必死に掘り返す。
コロシアムが崩壊する刹那――グラン先生は……
「笑ってた。勝ち誇ったみたいに……崩壊寸前に、笑みを浮かべてた」
「他にはあるか?」
「そうだね……」
思い出せ……そんな数年前の出来事じゃないんだ。
剣を交えた時の表情、言葉、立ち居振る舞い……全部思い出すんだ……!
戦闘中――確かに彼は怒気を露わにしていた。
けれど、最後には笑顔を浮かべ、そして……涙を流して逝った。
戦闘では怒り、崩壊直前には笑み、最期は涙。
――つまり。
「I組を思うように操れず……失敗の積み重ねの上、他殺。もしくは、自分の過ちに気付いて自害。最後の力でフラーナ先生を逃がした……」
その瞬間、ヴェイルの顔色が青ざめ、険しく淀んでいく。
「グラン……お前は、いつから罪に気付いたんだ……? それに、もし他殺なら仕組んだのは確実に……!」
「……っ! まさか——」
II組の生徒たちは、僕を含めてずっと騙し続けられていたし、今もサイラスたちは目覚めていない。
もちろん、I組にアーサーさんの登場があったとはいえ、彼らで定めた契約上の天罰なのか……?
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