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Death Game: Your Choice Stands(デス・ゲーム:ユア・チョイス・スタンズ)

十二人の生徒が命を賭けて挑むデスゲーム×学園ストーリー


ネリカの記憶持ちに復活した真意を知るも、思わぬ形で決別してしまったリゼルドとアラリック。


そしてグランの死を通じて、記憶持ちへと進化を遂げるゼフィリー。

一方で——レンリーには、大きな問題が立ちはだかる。


I組の生徒へ課せられた、最難関の試練を彼らは突破できるのか——


《Death of the Academia》をお楽しみください

毎晩、俺たちが学園に迷い込んだのは全部夢で――目が覚めた時、何一つ不自由のない世界と日常が迎えてくれる。



もし、そんな朝が来るならどれほど幸せだろうか――


だが現実は非常である。

今日も目を開けた先に待っているのは——理不尽な世界と混沌と化す学園の日常だ。


****** ****** ******


「やっと起きましたか。待ちくたびれて、死にそうでしたよ」


扉の前で、昨夜渡した剣を抱えたレンリーが立っていた。

眉間に皺を寄せ、不機嫌そうな顔を隠す気もない。


「おう……悪かったな。すぐに行くから、Ⅰ組の教室で待っててくれ」


受け取った剣をドアノブに掛けると、レンリーは教室に向かって姿を消した。

俺はレンリーが、完全に見えなくなってから頭を抱えて、自分に語りかける。


負けるな俺。

今、全員を支えてやれるのは俺しかいない。

たとえレンリーが帰る道を選んだとしても……必ず皆を解放してやるんだ……!



寮の奥にある隠し扉を開き、作戦会議室から白紙の紙と一本のペンを持ち出した。


「待たせたな」


I組の教室の中を覗くと、レンリーは二つの机を寄せ、教壇の前に陣取っていた。

窓から射し込む光を背に、俺を射抜くように睨む。


「じゃあ。あんまり長引かせても悪ぃし、早速始めるか」


****** ****** ******


レンリーと向かい合うように席に着き、机上に一枚の紙を広げ――持ち出したペンで文字を書く。


{この会話は、周りの人には聞かれたくない。面倒かもしれないが、筆談で頼む}


冷や汗が止まらない。

手のひらがじっとりと濡れ、膝の上で必死に擦って拭う。


震える指先で紙とペンをレンリーに差し出した、その時――廊下から乾いた足音が近づいてくる。


俺は反射的に立ち上がり、教室の扉へ駆け抜けた。

縁に埋め込まれたロックを、下へ落として施錠し——自分の心臓の音を聞きながら、ゆっくりと振り返る。


レンリーは一瞬だけ何かを考え込んだ後、無言でペンを取り、紙に走らせる。

息を呑んで席に戻ると、無表情のまま俺の机上に紙を叩きつけた。


おそるおそる目を落とすと、そこに記された文に安堵が広がる。


{仕方ないですね。どうして、そんなに焦っているのか理解できませんが、最低限は許容してあげます}


心の中で「ありがとう」と呟き、俺は椅子に腰を下ろしてレンリーからペンを受け取った。


{この世界では、選別という名の殺人が起きても当たり前だと、定められていたら……お前はどうする}


文字を目にした瞬間、レンリーは固まったように黙り込む。

頬杖をついたまま、ペン先を何度も机に打ち付けていた。


ネタに困ってる記者かよ……


内心では苦笑いをしていたが、体は緊張と汗で嘘をつかない。

廊下から近づいてきていた足音も、気づけば遠ざかっていた。

まるで「鍵を忘れるな」と警告していたかのように——


教室には、ペン先の音に隠れて——時計の針が静かに動き続けていた。


****** ****** ******


あれから、ずっとレンリーの手は止まったまま。

無意識に時計を確認すると、俺が問いを投げてから二十分ほど経っていた。


気が付かない間に、レンリーも静かに考え出し——教室は重い沈黙の中、静寂が胸を締めつけた。


そして――レンリーは苛立ったように眉を寄せ、殴り書きで文字を刻みつけた。

考え抜いた自分の回答を読み、深いため息を吐くと俺に手渡した。


{世界を救う側に立つか、安全な場所で長生きをするか、悩みました。でも僕は、命を懸けてまで前者に立とうとは思いません}


そうだ……そうだよな。

レンリー、お前の考えは正しいよ。何も間違ってない。


気付けば、ペンではなく口が動いていた。


「……ありがとな。長い時間、悩んでくれて」


筆談で交わした紙を折り畳み、俺は続けて言葉を紡ぐ。


「お前が後者でも俺は止めない。死んでも良いと思える奴だけが、戦場に立って腐った理を否定して、世界を救うんだ」


「いいんですか……! 僕のこと、引き止めなくて」


椅子を引き、机を元の位置へ戻した俺を、レンリーの声が呼び止める。

それでも、俺の中で答えは決まっていた。


「いいんだ……皆には、俺が説得してやる。退路も俺がなんとかする。お前は気にせず待っててくれ」


それ以上は振り返らず、教室を後にした。


これでいい。

何も知らなかった奴を、無理に巻き込む必要はない。


俺たちも、あいつらも近いうちに、きっと動き始めるだろう——

最後まで読んで頂きありがとうございます!

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