Death Game: Your Choice Stands(デス・ゲーム:ユア・チョイス・スタンズ)
十二人の生徒が命を賭けて挑むデスゲーム×学園ストーリー
ネリカの記憶持ちに復活した真意を知るも、思わぬ形で決別してしまったリゼルドとアラリック。
そしてグランの死を通じて、記憶持ちへと進化を遂げるゼフィリー。
一方で——レンリーには、大きな問題が立ちはだかる。
I組の生徒へ課せられた、最難関の試練を彼らは突破できるのか——
《Death of the Academia》をお楽しみください
毎晩、俺たちが学園に迷い込んだのは全部夢で――目が覚めた時、何一つ不自由のない世界と日常が迎えてくれる。
もし、そんな朝が来るならどれほど幸せだろうか――
だが現実は非常である。
今日も目を開けた先に待っているのは——理不尽な世界と混沌と化す学園の日常だ。
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「やっと起きましたか。待ちくたびれて、死にそうでしたよ」
扉の前で、昨夜渡した剣を抱えたレンリーが立っていた。
眉間に皺を寄せ、不機嫌そうな顔を隠す気もない。
「おう……悪かったな。すぐに行くから、Ⅰ組の教室で待っててくれ」
受け取った剣をドアノブに掛けると、レンリーは教室に向かって姿を消した。
俺はレンリーが、完全に見えなくなってから頭を抱えて、自分に語りかける。
負けるな俺。
今、全員を支えてやれるのは俺しかいない。
たとえレンリーが帰る道を選んだとしても……必ず皆を解放してやるんだ……!
寮の奥にある隠し扉を開き、作戦会議室から白紙の紙と一本のペンを持ち出した。
「待たせたな」
I組の教室の中を覗くと、レンリーは二つの机を寄せ、教壇の前に陣取っていた。
窓から射し込む光を背に、俺を射抜くように睨む。
「じゃあ。あんまり長引かせても悪ぃし、早速始めるか」
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レンリーと向かい合うように席に着き、机上に一枚の紙を広げ――持ち出したペンで文字を書く。
{この会話は、周りの人には聞かれたくない。面倒かもしれないが、筆談で頼む}
冷や汗が止まらない。
手のひらがじっとりと濡れ、膝の上で必死に擦って拭う。
震える指先で紙とペンをレンリーに差し出した、その時――廊下から乾いた足音が近づいてくる。
俺は反射的に立ち上がり、教室の扉へ駆け抜けた。
縁に埋め込まれたロックを、下へ落として施錠し——自分の心臓の音を聞きながら、ゆっくりと振り返る。
レンリーは一瞬だけ何かを考え込んだ後、無言でペンを取り、紙に走らせる。
息を呑んで席に戻ると、無表情のまま俺の机上に紙を叩きつけた。
おそるおそる目を落とすと、そこに記された文に安堵が広がる。
{仕方ないですね。どうして、そんなに焦っているのか理解できませんが、最低限は許容してあげます}
心の中で「ありがとう」と呟き、俺は椅子に腰を下ろしてレンリーからペンを受け取った。
{この世界では、選別という名の殺人が起きても当たり前だと、定められていたら……お前はどうする}
文字を目にした瞬間、レンリーは固まったように黙り込む。
頬杖をついたまま、ペン先を何度も机に打ち付けていた。
ネタに困ってる記者かよ……
内心では苦笑いをしていたが、体は緊張と汗で嘘をつかない。
廊下から近づいてきていた足音も、気づけば遠ざかっていた。
まるで「鍵を忘れるな」と警告していたかのように——
教室には、ペン先の音に隠れて——時計の針が静かに動き続けていた。
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あれから、ずっとレンリーの手は止まったまま。
無意識に時計を確認すると、俺が問いを投げてから二十分ほど経っていた。
気が付かない間に、レンリーも静かに考え出し——教室は重い沈黙の中、静寂が胸を締めつけた。
そして――レンリーは苛立ったように眉を寄せ、殴り書きで文字を刻みつけた。
考え抜いた自分の回答を読み、深いため息を吐くと俺に手渡した。
{世界を救う側に立つか、安全な場所で長生きをするか、悩みました。でも僕は、命を懸けてまで前者に立とうとは思いません}
そうだ……そうだよな。
レンリー、お前の考えは正しいよ。何も間違ってない。
気付けば、ペンではなく口が動いていた。
「……ありがとな。長い時間、悩んでくれて」
筆談で交わした紙を折り畳み、俺は続けて言葉を紡ぐ。
「お前が後者でも俺は止めない。死んでも良いと思える奴だけが、戦場に立って腐った理を否定して、世界を救うんだ」
「いいんですか……! 僕のこと、引き止めなくて」
椅子を引き、机を元の位置へ戻した俺を、レンリーの声が呼び止める。
それでも、俺の中で答えは決まっていた。
「いいんだ……皆には、俺が説得してやる。退路も俺がなんとかする。お前は気にせず待っててくれ」
それ以上は振り返らず、教室を後にした。
これでいい。
何も知らなかった奴を、無理に巻き込む必要はない。
俺たちも、あいつらも近いうちに、きっと動き始めるだろう——
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