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きたる大学受験は、受験生にとっては、いままで生きてきた人生で最大の難関といえるだろう。
森川家では、浩一よりも母親の方が、せわしない。受験票は持ったか、筆記用具はそろっているか、他にもハンカチ、腕時計、忘れ物はないかと何度も訊いてくる。
おかげで準備は万端だ。浩一は「じゃあ、行ってくる」と言って受験会場へ向かう。そんな息子を心配そうな顔で見送る母親だが、浩一自身はそれほど不安に思ってはいない。
──やるだけのことは、やった
これでダメなら仕方ない。そういう運命にあるのだろうと、覚悟を決めるかのように割りきった。
よけいなことは考えず、最後まで自分を信じようとする浩一である。
のり越えるべき壁に挑んだ浩一は、それなりに手応えを感じていた。
しかし、結果を確認するまでは、まったく安心できなかった。むしろ、日が経つにつれて不安が徐々にふくらんでゆく。
そして二月になり、合格発表の日を迎える。待ちどおしくもあり、また、恐れてもいた。
結果を知ったとき──浩一は自分の感情が、思わず口に出る。
「やった……!」
合格の二文字を勝ちとったのだ。自分のなかに棲む、得体のしれない存在にひたすら悩まされ、引きずられ、もうダメかと何度も思った。
──でも、間に合った
友理奈にキスされて以来、これまでの遅れを取りもどそうと、必死で勉強にはげんだ。
彼女との進展は全然ないままに、まさに勉強一本槍の状態だった。
その努力が実を結んだのである。
──吉野、本当にありがとう!
浩一は、友理奈に心から感謝した。
同じ大学を受験したモテない連盟の同志たちも、全員が合格した。この日、浩一は仲間とつるんでカラオケに行き、ハメをはずすように歌って騒ぎまくった。
──今日ぐらい、自分を褒めてやってもいいだろう
みんなが、そう思った。
国立大学を受験した友理奈と、防衛大学を受験した外山の合格発表は、卒業式を過ぎてからになる。
浩一は、二人とも合格することを心から願っている。
そしてしばらくのあいだ、喜びの余韻にひたる日々を送るのだった。




