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田舎町の竜少女

コンッ、カンッ


広大な草原に軽快な音が鳴り響く。

音の鳴る方を見れば、そこには二人の人物がいた。

一人は長身の男。短めの蒼い髪は染料によるものなのか所々に地毛の黒髪が見えている。その童顔から二十代後半と勘違いしてしまうが、実年齢は38歳。


ブォンッ


男の槍が勢いよく振り下ろされる。そろそろ体にガタが来るであろう年齢だがその動きは未だ全盛期であることを示している。


ガンッ


振り下ろされた槍を同じく槍で受け止めるのはまだ十代の少女。その髪は柑橘類を彷彿とさせる鮮やかな橙色である。男の方と違ってこの髪は生まれつきのものだ。一般的に見ても珍しい色であるが、彼女を初めて見る者が驚くのはそこではない。

尾骶骨から生えたしなやかな銀白色の"尾"。そして、額上部から突き出た半透明一対の"角"であった。


「ッチ!」


受け止めた槍を受け流しながら、男の頭を狙うもギリギリで躱されて思わず舌打ちする。

間髪入れずに槍を振り上げる──また躱される──、距離を取り後ろに下がったのを見逃さず突く──これも躱される──。


「~~~~っ!」


攻撃の悉くが当たらず、更に相手は余裕の笑みを浮かべている。彼女自身実力差があることは理解しているが、ここまで簡単にあしらわれるのも流石に悔しい。

こちらも一旦距離を取ろうと足を引いた瞬間、一気に男が間合いを詰める。


「ッ!!」


重心を後ろに移してしまった。もう迎撃の体勢には入れない。だが、


(狙いは足下の振り払い)


即所で跳んで回避すると同時、地面から足を離したことを後悔する。この距離ならば態々足を狙う必要などない。誘導された。

彼女がその考えに至るまでに、男は一歩踏み出し、その足を軸にもう片方で蹴りを入れる。狙うは腕。実戦練習とはいえ頭は避ける。それでも素人がくらえばただでは済まない威力ではあるが。


「ぐっっ!」


「おっ」


間一髪槍を間に差し込んで蹴りを防ぐ。しかしその身は空中。鞠の様に彼女の体は蹴り飛ばされる。

直ぐに体勢を立て直すが、吹っ飛ばされた最中に地面につっかえて槍が手元から離れてしまった。


(槍.......じゃない!)


ほんの一瞬、男から目を離してしまう。その一瞬で目の前まで距離を詰めた男が槍を振り下ろし────


スコンッ


「あでっ」


寸止めした槍で少女の頭を軽く小突く。


「今日のところはこれで終わりにすっか」






「あ〜ぁ、結局一回も父さんに勝てなかったなぁ」


帰り道の途中で少女・ラニアはため息をつく。物心が付いてからはずっと父に槍を教わってきた。ある程度上達してからは、先のように父を相手に実戦練習をしている。当然ラニアは一度も手を抜いたことはなかったのだが、戦績は全戦全敗。今日の最後の稽古でも勝つことはできなかった。


「こちとら三十年以上やってんだ。そう簡単に黒星付けるわけにぁいかねぇよ」


カカッと笑う父のハオラン。その様子にラニアが拗ねていると、


「なぁに。俺と比べるのがおかしいだけで、お前はちゃんと強くなってるよ」


ワシャワシャとラニアの頭を撫でる。


「ほんと?」


上目遣いで父に問う。


「あぁ、本当だ」


その笑顔に嘘は無い。撫でる掌からハオランの、父の優しさが伝わってくる。


「へへ」


その睦まじい様子は確かに親子のものであった。


「「ただいまー」」


「おかえりなさい」


玄関の戸を開けると母のレミィが出迎える。


「朝食できてますよ」


「俺は先に食べるよ」


「私軽く水浴びしてくるね」


洗面所に向かうと丁度妹のリリエッタが髪を結っているところだった。


「お早うございます、姉さん」


「おはよー!リリィ」


「ちょっと待っててください、すぐに終わりますから」


「いいよいいよ気にしないで」


構わず服を脱ぎ始めるラニア。


「ちょっ!?姉さん!!」


「何ー?」


「人前ではそう簡単にに服を脱がないでください!」


「家族の前だよ?」


「良くありません!いいですか───」


(あ、これ長くなるやつだ)


そう察したラニアは急いでリリエッタを洗面所から押し出す。


「はいはーい、リリィは洗面所使い終わったでしょ。お姉ちゃん水浴びするから、ほらデテッタデテッター」


「まだ話は終わって───はぁ......もぅ......」





「お腹減った〜」


水浴びを済ませ、漸く朝食にありつくラニア。自分の席の隣にはリリィが座っていた。


「あ〜...」

「もうさっきの話はしませんよ。早く朝食を取りましょう」

「待っててくれたの?」

「はい。最後...ですから......」


途端にリリエッタは悲しそうな顔をする。確かにラニアは明日の朝、日が登り始める時間にはこの街を出る。リリエッタにとってはこれが最後だと思ってしまうのも無理はないのだが、ラニアはそう思っていなかったのでリリエッタの目に涙が浮かんだことに少し驚く。


「リリィ」

「はい...?」


そっとリリィの頭に口付けをする。


「帰ってくるよ。絶対」

「うん......」


自分の胸の中で涙を流す妹を見て、ラニアも泣いてしまいそうになるのをなんとか堪えてリリィを抱き締め続ける。

暫くしてリリエッタが泣き止んだところで声をかける。


「さ、ご飯食べちゃお!」

「はい...!」




「そういえば父さんと母さんは?」

口にパンを含みながらモゴモゴとリリエッタに話しかける。

「父さんは街に出かけました。何の用事かは分かりませんが......」

「なんだろうね」

「母さんならご存知かと。今庭で洗濯物を......あ、戻って来ましたよ」

「どうしたのですか?」


母の問いかけにラニアが質問で返す。


「父さんがなんで出掛けたのか知ってる?」

「それは......いえ、私も存じておりません。2人で探しに行ってみては?」


笑顔でそう伝えたレミィは買い物に出かけて行った。

残された2人は顔を見合わせる。口の中のものを飲み込んでラニアが口を開ける。


「それじゃ、行こっか!」

皆様初めまして『しまんた』と申します!

遂に投稿を始めることができました!

文章力が無いまま書き始めてしまったので、感想などで遠慮なくご指摘していただけると幸いです......

これからも拙作を温かい目で見守っていって下さい!

宜しくお願いします!

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