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「夏朗様はマジだったらしい。けど李凰様から交際許可がおりなかった。隠れてキスしてたのを見たって奴がいる、それも一度や二度じゃねえってな。しかも李凰様の許可なしだから重大な背徳行為だ。だがその話が李凰様の耳に入ってもお咎めなしだった。通常なら即刻、闇小屋送りの案件だ」


「いや、李凰様はご自分が涼華様と結婚されることで夏朗様にお咎めを食らわしたんだろ。なんかよく分からねえけどな」

 浩平がちゃぶ台に頬杖をついて言う。

「李凰様は断じて夏朗様の交際を許可しない。夜遊びはさせるのにな。意味わかんね」


「しかし李凰様との結婚は国内の女にとっちゃ大出世だ。涼華様は悪さをした結果、大出世したわけだから批判を浴びまくったようだ。入国してものの二年での大出世だったしな。それに涼華様はそこまで美人ってわけでもなかった。まあ、おとなしくて可愛らしかったけどな」


「しかし、夏朗様が執行人になってからまだ女の罪人は出ていないな」

 ふと浩平が言う。ちゃぶ台に肘をつき身体ごと慎也達のほうを向いて。

「あの方は罪人が女であっても手を下すんだろうかな」

「罪人に男も女も関係ねえからな。女の処刑なんざ見たかねえがな」

 慎也が篤弘の腕を抱きながら左右にゆっくり揺れ始める。

「夏朗様にとって年齢が関係ないのは確かだ。十五歳の子を処刑した。去年の夏だ」

 ああ、と辺りが少し静まった。

「むごかったな」

「やられるほうが悪い」

「当時、夏朗様は十六になったばかりだった。真夏だったな。暑かった」

「そうだよ、あっくん、あいつは十五だった。あっくんと同い年だったんだよ」

と篤弘に抱きついてくるのは太一である。慎也が太一の肩を掴んで篤弘からその身を引き剥がし、篤弘の頭を自分のほうへ引き寄せた。


「あいつは身体も小さく、夏朗様がいつも気にかけていた。児童部の頃からの幼馴染だったらしい。お気に入りだったみたいだ」

「なんか知らんが、あいつは十四の頃に李凰様からお声がかかって神の館に拠点を移してそこで暮らしながら学校に通ってたんだが、急に気が触れて小刀で李凰様を斬りつけて怪我をさせた。大罪となり処刑されたってわけだ」

「夏朗様はこの国と李凰様を裏切った者には容赦しない。どんなに気に入った奴もだ」

 慎也の手が篤弘の頭をゆったりと撫でている。自分の胸元に引き寄せながら。


「そういえば、」

 不意に浩平が言った。篤弘の目を真っすぐに見ている。

「篤弘、おまえさ、誰かに似てると思ってたんだよ。今、分かった。あいつだ、あいつ、十五歳で処刑されたあいつにおまえ顔がよく似てるんだよ」


 篤弘の頭を撫でていた慎也の手が動きを止める。無表情のまま篤弘の顔を見下ろしてくる。そのまま口の中で舌をころころ回し篤弘の顔を眺め続けた。


 あ、と誰かが声を上げた。さっと寝室の空気が緊張する。屋敷に一人残った側近の姿が廊下に見えた。すぐさま慎也の手が篤弘のもとから離れてゆく。




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