1日目
大きな陰謀渦巻く世界観ですが基本的に学園ものだと思ってもらうといいかもしれないです。主人公は焦ったり傷ついたり悩んだりしますが困難の中でも進む力を持っています。それらの過程で当たり前にできる人間関係や恋模様、思春期の懊悩を混ぜて書いていきたいです
あと初投稿です。ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いします。
ガタンゴトン、ガタンゴトン…ゴオー…
その電車はまるで木々を掻き分けて進んでいるようだった。ちょちょぎれた夕方の太陽が車窓から差し込み、車内を下から照らしていく。四月初旬の陽気が乗客を呑み込んでいる。二列席にまばらに座っている乗客は、全員が高校生だ。僕を含めて。
半分ほどが目を閉じて揺れるシートにその身を預けている。また半分ほどが帽子やキャップをかぶり、そしてほぼ全員が大きな荷物を持っている。この電車は辺鄙な土地にある、とある学校へと向かっているのだ。
一瞬切れた林から光がさす。視界の端で斜め向かいの座席に座る女の子を捉えた。その白い髪が淡いオレンジに染まる。薄目を開けてどこか一点を見つめるその表情に、僕は見惚れてしまったのかもしれない。キャップをかぶっているが、肩口まで伸びた白髪に瞼からのぞく黄色。背後からさす光も相まってある種神々しいとさえ言えそうな姿だった。溶けていく視界にそんなことを思いながら僕は眠った。
体に揺れを感じて起きるとちょうど完全に停車したところだったようだ。止まっている駅は未だ林の中のようだったがオレンジが増しているように感じる。そこまで気づいたところで今度は自分の状況に気づく。荷物をまとめて急いで黒のキャリーケースを引いて外に出る。忘れ物は、と最後にもう一度車内を振り返るが人も荷物もなかったかのようにすっからかんだった。とりあえず忘れ物がないことを確認して安心した僕は、一本道を歩き出した。
「まあとにかく長旅お疲れ様。じゃあさっき言った通りこれが部屋の鍵でこっちの冊子は今日中に読むこと。」
「はい、ありがとうございます。お世話になります。」
鍵と冊子を受け取ってホールにある中央の階段から二階に上がる。一本道は迷いようがなかった。本当に学校と駅とを繋ぐためだけの道路のようで、かつキャリーケースがスムーズに転がるくらいには綺麗な道だった。途中坂道で数人の男子を追い越したが在校生だろうか。同じ行き先のヒトはいないようだった。今年度の新入生のみがこの寮に入寮するらしく、寮長さんが言うには自分は近年でも大分遅めだったそうだ。階段を上り切って左の通路へと歩みを進める。
209、ここか。渡された鍵と同じ番号のプレートの前で立ち止まる。ごく一般的な作りのドアの鍵を開けて中に入る。部屋は夕陽が明るく広がっていて、狭い玄関を抜けて居間に立つと山並にしずみかけのオレンジが見えた。視線を右に移すと、百メートルほど離れたところに学校施設もいくつか見えたがどれも無機質な白いコンクリート造りといったところだ。とは言え明日から新入生として新しい生活を始めることを考えると、不思議と小さな高揚感のようなものが心に湧く。そうしてどこか落ち着かない心のまま日は暮れていった。
ほんのり温かみを感じるLEDをつけて改めて狭い部屋を見回す。もらった冊子に目を通すが、寮生活にあたっての注意点がそこそこの分量で書かれていた。十一時以降外出は控える、女子の入室禁止などだ。それでも二十分ほどで読み終わり、鍵を眺め始めたところで決めた。今日は寝てしまおう。することもないし、疲れもあった。明日は入学式だ。起きられるだろうか。荷物をひと段落つくまで片して、買ってあった夕食と風呂を済ませ、すぐに備え付けのベッドに横になった。
不安を感じてしまう前に。
ここが読みにくい等あれば教えてください。助かります。