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3/5

あるカップルに不安と幸せが同時に押し寄せるお話

地の文少なくして、会話メインを意識した練習作品

「あータクマさんや、ちよっといいかね」

「どうしました、アケミさんや」

 幼馴染み兼恋人のアケミが問いかけてくる。

 

「良い話と悪い話があります」

「あっ、よく漫画とかで見るフレーズだ」

「うんそれな。どっちから聞きたい?」

「じゃあ、悪い話で」

 俺は嫌なことから終わらせてしまうタイプだ。

 

「りょ。悪い話でございますが、私、高校退学しないといけないかもしれません」

「え?」

 軽い雰囲気から、予想以上に重たい話が飛んできて虚をつかれてしまう。

 

「えっ、その、マジで?」

「うん、本当(マジ)。多分早くて今月いっぱいでやめるかも」

 声をのトーンが真剣なときのアケミだ。

 

「えっ理由って聞いていいの?全然気づかなかったけど、何か問題起きてた?イジメとかないよな?」

「そういう問題じゃないかな。つか、私が問題起こして退学なったとかは考え無いん?」

 とりあえず問題が起きてたわけではないそうなので、少しだけホッとする。


「アケミが退学させられるような問題起こすなんて、思いもつかなかったわ」

「私への信頼は嬉しいけども。まぁ退学理由は私原因なんだけどね」

「えっそうなん?何しちゃったん?」

「しちゃったというか、なんというか……」

 モゴモゴと煮え切らない態度でつぶやく。


「ちなみに、悪い話は良い話にも繋がってます」

「えっ?そうなの?退学に繋がるような良い話なんて、あるのか?」

 想像もつかない。


「とりあえず、良い話聞いてみて良い?」

「OK。ただし、私にとっての良い話はタクマにとって悪い話かもしれないので、心して聞くように」

「えっそうなの?ってことは俺が退学に関わってるってこと?」

「……」

「え、待って、アケミさん沈黙怖いっす」

「どうする?聞く?」

「……聞く」

 そう答えると、アケミは少しだけ神妙な顔になるとまっすぐにこちらを見つめ、一度深呼吸をする。


「赤ちゃんできました」

 ……赤ちゃん。妊娠したってことか。俺の子って事だよな。心当たりは、ある。1ヶ月くらい前に、避妊せずにしてしまっている。多分それだろう。退学理由、俺のせいじゃないか。おかしい、申し訳ない気分や今後の不安などが押し寄せてきているというのに。


「俺の子、産んで、くれるってことだよな」

 好きな女の子が自分の子を授かった事実が、嬉しいと感じている。

 

「もち。堕ろせとか、……言わないよね?」

「当たり前だ!俺は……産ん欲しい!」

 不安な顔をしたアケミに、本心を伝える。


「よかった。駄目って言われたら、どうしようかと思ってた」

 彼女はポロポロと涙を流しながらも安心した顔をしている。俺はそんな彼女を抱き締める。感謝と彼女の不安を少しでも軽くできるように。


「あー。それでね?お母さんには、相談してて、それで高校は諦めようって、話になったわけですよ」

 ちょっと重くなった空気を軽くするように、少しだけおちゃらけた雰囲気で、俺の腕の中で話す。


「お父さんには、タクマから話せって。殴られてこいってさ」

「了解だ。おじさんには申し訳ないが、ケジメはつけるさ。今後の事考えると俺も中退して働いた方がいいよな……」

 産まれてくる子のことを考えても、そうすへきであろう。俺はまだガキなのは否定できる状況に無い。


「多分、それは駄目って言われるかな。お金とかは私の親とタクマの親で何とかするって」

「ん?俺の親知ってるの?」

 俺何も言われてないんだけど。

「お母さん同士で先に話したみたい。タクマには私から初めて聞かせたいからって言っといたから」

 なるほど。だから朝、母さんがよそよそしかったのか。


「……タクマ。私の人生あげるんだから、幸せにしてよね」

「アケミ……。俺、頑張るわ。お前も、産まれてくる子供も、幸せにする」

 そう言って、今後の不安や幸福を想像しながら、俺たちは優しく口付けを交わした。


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