幼馴染な二人の日常から、ちょっと甘い雰囲気になるお話
夏が終り、気温が涼しくなり始め、秋の日を感じるようになった頃の昼下がり。俺と幼馴染みの遥は得に何かする用事もなく、俺の部屋の白い絨毯の上に、2人して寝転んでいた。
「ハヤトー」
「どした?」
「暇」
奇遇だな、俺もだ。最近、お互い大学の授業やバイトも慣れてきたのか時間に余裕が出てきたのだが、その空いた時間を今度はもてあましてしまっている。
「どっか出かけるか?」
「疲れるからイヤー」
ゴロゴロと転がりながら答える。子供かコイツ。部屋を転がる大人はだいぶと鬱陶しい。
「じゃあゲームとかするか?」
「んー今やりたいものないなー」
面倒なやつだ。じゃあ、おやつとか食べてお茶でもするか。そう伝えると、「いいねー準備よろ!」と返してくる。キッチンに向かうため立ち上がると、ゴロゴロ、ゴロゴロ転がっていたせいか、彼女のスカートが捲れ上がり、灰色のダボッタイパンツ……ではないな、魅せパン的なやつだろう。それがだらしなく見えている。
「お前、スカートはしたないぞ」
「やだーえっちー」
何とも思っていない用な棒読みである。まぁ実際気にしていないのだろう。俺は無視してキッチンへ向かう。
……さて、困ったことに、キッチンを探すがおやつになるようなものが、何もなかった。とりあえずお茶のためにお湯だけ沸かし部屋へと戻る。
「まだスカート捲れてるじゃねえが」
部屋へ戻ると、仰向けにだらけきった格好で、未だにスカートが捲れ上がっていて、先ほど見えていた灰色のものが丸見えになっていた。
「どうよ?興奮した?興奮した?」
スカートを正しながら、煽ってくる。
「した、したから。俺を興奮させて何がしたいだよ」
部屋でる前に、俺が反応を示さなかったので、多分これはその報復なのだろう。
「悶々とさせたままお預けを喰らって、恥ずかしがりながら困ってるハヤトが見たかっただけ」
「今の色気のない下着じゃあそこまではいかないな」
「むぅ残念」
何が残念だ、何が。このままからかわれていても仕方がないので、おやつが無かったことを告げる。
「えーもう何か食べる気分バリバリだったのにー」
「すまんな。お麩ならあるんだか」
そう言ってキッチンから持ってきた味噌汁用のお麩の袋をわたす。
「いや、お麩持ってこられてどうしろと」
そう言いなから、袋を空け、一つ取り出しバリバリ食べる。
「んぐんぐ。わりと美味しいね」
「本当に食べるとは思わんかった」
味しなくないか?お麩。
「配達サービスで何かスイーツとか頼む?」
お麩をそのまま食べている姿が、何だか不憫だったので、俺はスマホの画面を開きながら提案する。
「もぐ。うんいいね。ケーキとかある?」
まだお麩をバリバリと食べている。本当に気に入ったのか。後で俺もそのまま食べてみよう。
「これなんかどうだ?」
二人で一つのスマホを、肩を寄せながら覗き込み、アプリを操作し注文する物を探す。今見ているのはパイのお店らしい。
「あっこのお店美味しいよね。私アップルパイで」
ケーキじゃないが良いらしい。注文を決め決済する。これで届くまでまた何か時間を潰さないといけない。
「そういえばさ、高3の時に同じクラスだった川崎さんっていたじゃん?なんか今度結婚するんだって」
彼女の方から話題を振ってきてくれる。
「え、早くね?」
まだ俺たちは19である。
「なんか子供できちゃって出来婚だってさ。やばくない?」
「やばい、やばい。俺らの歳でも、もうそういう奴等出てくるもんなんだな」
子供何て、まだまだ先の事かと思っている。他にも当時の同級生がーなどと適当な会話で時間を潰す。
「子供といえばさ、ハヤトは男の子と女の子とかどっちがいいとかある?」
何だその恋人とか夫婦がするような話題は。ちなみに、俺たちは恋人同士ではない。まぁ俺はコイツの事が好きだか。
「そうだな。両方がいいな。男の子と女の子1人ずつ」
とりあえず思い付いた事を答える。兄妹でも、姉弟でもいいが、子供同士仲のいい家庭が理想だ。兄弟や姉妹でないのは、せっかくなので男の子と女の子どっちもいるのがお得かな、とか考えたからだ。
「男の子は大変そうだから、私はいらないかなぁ」
「ん?そうなのか?」
遥は女の子だけがいいらしい。女の子同士の会話とか家庭でしたいタイプなんだろうか。
「だってさ、あんたみたいのがもう1人増えることになるんでしょう?めんどくさそう」
「えっ、ひどくない?」
予想した理由よりヒドい話だった。俺が増えてもいいじゃないか。ん?というか、それだと俺の子供を産む話みたいになっていないか?
「ハヤトだって、私みたいな女の子がもう1人いたら、面倒じゃない?」
ふむ、女の子の場合は彼女似の想定の話らしい。言ってて気づいているのだろうか。多分気づいてないな。気づくと多分、遥は滅茶苦茶照れるはずだ。彼女とこういった会話をすることは、今まであまりなかったので、せっかくだから本音で答えようと思う。
「いや?むしろウェルカムだ。バッチコイ」
「えぇ本気で?」
ちょっと口許がにやけていて、嬉しそうである。
「本気で。こんな可愛い子が2人もいるとか考えたら嬉しくてしかたないな、きっと」
「ふへぇ?ちょ、何よ。普段そんなこと言わないじゃん。え、ちょっ恥ずかしいんだけど」
「本音だぞ?」
「あぅ、予想外の展開なんですけどー?!あれなの?私のこと好きすぎちゃったの?」
「うん」
「そんな純粋な目で言わないでよぅ」
完全に照れてしまったのかうつむき、モジモジしている。そんな彼女を見つめ続けてみる。たまにこちらを向く遥と目が合う。その度に顔をそらされる。真っ赤な顔が可愛い。というか赤すぎて茹でタコみたいである。
しばらくそんな気まずいような、妙な沈黙の時間が続と、インターホンの音が響く。
「あーパイ届いた!私取ってくる!」
そう言って逃げるように部屋を飛び出していってしまった。俺たちに恋愛はまだ早かったのだろうか。とはいえ、照れてるだけで、嫌われているわけではないのだから、そう問題はないだろう。そんなことを考えながら、俺はキッチンへ紅茶を入れに行くことにした。