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懐かしい手紙  作者: jun
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後編

『まつした君が転校すると聞いて、とてもびっくりしました。えーっ! という気持ちでした。かなしいです。ライオンを見に、動物園に行きましたね。すごく楽しかったです。キリンもいて、首が長かったです。でも、とってもかわいかったです。しっかり者の松下君なら、新しいところに行っても問題ないと思います。たくさんの思い出をありがとう、これからも元気にがんばってください。』


「たしかに、なんか不思議な手紙だな」中原は文面を見つめている。


「でしょ? これを天然というかは微妙だけど、でも僕はもらってうれしかったよ」


 中原は手紙を見たまま、黙って考え込んでいる。「なあ松下、お前はユカちゃんと仲良かったのか?」


「うん。よくみんなで遊びに行ってたよ」


「ユカちゃんのために何かしてあげたことはあるか? 印象的で特別な何かだ」


「印象的? そうだなあ、彼女がクラスに馴染むきっかけを作ったのは僕だったかも」


「詳しく教えてくれないか」


「うん。さっき彼女をもの静かと言ったけど、実際は根暗で独りぼっちだったんだ。でも彼女の様子を観察していると、本当はクラスのみんなと喋りたいんだっていうのが伝わってきてね。だから彼女がみんなと仲良くなれるように、僕があれこれと取り計らったんだ」


「なるほどな」話を聞いていた中原は、合点がいった顔をした。「ユカちゃんがお前を好きになるのに十分な理由だ」


「好きになる?」松下はきょとんとした。


「ったく、お前はどんだけ鈍いんだ。そんなに優しくされたら、好きになるのが女心ってもんだろ。それにこの暗号文にもちゃんと書いてあるしな」


「暗号文? この手紙が?」


「そうだ。小学六年生だったら『まつした』くらい漢字で書けるだろ。現に二回目の『松下』は漢字だ。するとこれは何かのヒントだと考えられる。文頭の松下をわざわざひらがなにしているってことは、文の最初の文字を『松』ではなく『ま』にしたかったということ。あとはそれぞれの文の最初の文字を順番に読んでいくと『まえかラすキでした』になるだろ? 前から好きだったんだよ、お前のことが」中原は持っていた手紙を渡した。


 松下は驚いた顔で手紙を見つめ、恥ずかしそうにしていた。


 テレビではユカが質問に答えていた。お笑い芸人から好きな男性のタイプを聞かれている。


「えーっとね、ぽっちゃりしていて、メガネをかけてる人が好き!」


「お前のファンはそんな奴ばっかりやないか! どんだけ媚び売っとんねん」


 観客はどっと笑ったが、ユカは懐かしそうな顔で笑っていた。

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