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メッセージノート

メッセージノート

夏の暑さが和らいだ9月下旬

友人知人と疎遠になりつつあった俺んとこに一人の女性が訪ねてきた

ガラスのケースに入った1冊のノート

何冊目になるだろう


前のノートは別の場所に保管されている


内容は主に友人・知人からのメッセージだ


一時はすぐにいっぱいになっていたが

ここ最近はあまり書き込みがない


最近はメッセージノートなんてものあまり使われないのか?

いまはSNSっちゅーもんがあるしな


ある日

一人の30半ばくらいの女性が訪ねてきた


どこかで会ったことあるような


うーんよく覚えてない・・・歳は取りたくないものだな


ん?まてよ?俺まだ25歳だぞ(汗



その女性は

しばらくの間こちらを見つめて

なにやらつぶやきはじめた



-いろいろあってね、こんなに時間がたっちゃった

 私ね、あれから結婚してすぐに離婚したんだ


ん?古い知り合い?はて?


-ほんとはさ、ヤツも一緒に来るはずだったんだけどね

あいつ多忙でね、いま海外なんだって

逃亡じゃないよ、学会だって


ヤツって?

学会って?


あぁー哲のことか

思ったよりまともに生きてるのか

あの頃はずいぶんヤンチャしてたんだがなアイツ


つかこの女だれ?

松葉杖ついて顔色悪くて中年入った女性に知り合いいたっけ?


女性はまだ話を続けてきた


-サークルね、解散になったの。先日皆集まって片付けしたんだよ

そんときさ、あなたの絵が何枚か見つかってね、持ってきたよ


サークル?

あ、思い出した

大学んときに入ってた美術系のサークル


哲は大学の1年んときに知り合った悪ダチだったな


それにしても大学んときのことあんまし覚えてない

この女もそんときの仲間なんだろうか


って・・・あれ・・・なんか頭痛くなってきた(汗


-私方向音痴だし、いまはこんな身体だから哲に一緒に来てもらいたかったんだけどね

アイツが帰国するまで私が待てないから・・・


-私ね、来週から入院するんだ

ガンなんだって

ステージ2だから手術受ければたぶん大丈夫だろうけど

できれば会って話したかったんだ


ありゃま・・・それは大変でしょうけどご無事をお祈りしますわ


-あと・・・

 セージくん・・・ごめんね・・・

・・・ちゃんとお別れ言えなくてごめんね・・・


気づくと彼女の目には涙が溢れていた


・・・また頭痛

・・・

・・・

・・・

・・・

はるか・・・!?

はるかさん・・・!?


あぁ!


なんで今まで忘れていたんだろう


俺が初めて本気で好きになった女性じゃないか


なんで忘れていたんだろう


・・・振られたから?

いや、正確に言うと振られたわけじゃない


いろいろワケあって・・・だ


思わず彼女を抱きしめようとした

・・・がそれも叶わない


なぜって

俺はもう彼女を抱きしめられる身体じゃないから


泣くなよ・・・はるかさん

俺怒ってなんかいないよ


そんなに泣かないでよ・・・


俺まで泣きたくなる


そんなに泣くくらいなら

別れなければよかったじゃないか・・・


あれから何年たったんだ・・・


俺は25の時に年を取るのをやめてしまったから


しばらく彼女は泣き続けていた


どれだけ時間がたっただろう


彼女はガラスのケースからノートを取り出し

ページを開いて何か書き込み、またケースに戻した


-また来るね。今度は哲引っ張ってくるから


彼女はこの場を後にした


ノートを見たら

「ごめんね」とだけ書き残してあった


・・・彼女が現場に花を供えてくれたのも

警察署で当時の事故担当に俺の最後の事を聞いて泣き崩れたことも

いままで忘れてたよ・・・


もう一度会いたいと思っていたことも・・・


「また来るね」

まだ成仏できないじゃん・・・ま、いっか(汗




セージ・・・学生時代に付き合った女性と別れてその後25歳で交通事故により他界。

  はっきり別れ話もしないまま彼女と会えなくなったことが心に残っていたのだが

  年月がたち、そのことも忘れかけていたまま成仏しないでいる。


彼女はるか・・・とある事情で「俺」と別れ、数年後に別の男性と結婚したが後に離婚。

   「俺」のことを忘れられないままでいたが、がん手術が決まり、その前に「俺」と

   会っておきたい(墓参り)と、遠方から訪ねてきた。

   現在30代半ば。松葉杖をついてるのは先天性の下肢疾患のため。


ヤツ(哲)・・・二人の共通の友人。現在高校教師と某大の研究員の掛け持ちという

   真面目な男だが学生時代はヤンチャだった。

挿絵(By みてみん)

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