旅立ち
私の名は、【ヴェッチ・ルーベルト】。人は、天才科学者または美食考古学者とも呼ぶ。
確かに、天才ではあるが、食への探求心が異常なため、陰では変態博士などとも言われている。
(はあーーー。また、この人は自分の世界に入ってしまっている。)
そう心の中で、呟いているのは彼の助手である【ケイト・クロサワ】であった。
ケイト『ルー博士しっかりしてください。』
彼女は、いつも通り尻を蹴り上げるのであった。
ケイト『博士!!おいしい物を食べるたびに、意識を飛ばないでください。』
ルー博士『ケイト君。おいしい物は、神なのだよ。特に今日のケーキはね。この苺は、すでに絶滅したものを研究を重ねて完成し、使っている砂糖も作り出すのに、どれだけかかったことか。まーしかし、いつもながら良い蹴りなのだよ。もう少し、捻りを加えると・・・』
ケイトは、若干引きながらも、話を中断した。
ケイト『それよりも、タイムトリップ装置は、どうなっているのですか?食へのこだわりもいいですが、博士には、地球を再生するという大事な仕事があるのですよ。』
ルー博士『フフフ。そのことなら、すでにできているのである。』
現在の地球は、温暖化が進み、人類は大地に住むことができなくなっていた。
あまたの生物・植物が絶滅したが科学の発展により人類は何とか生き延びていた。
生活自体は、昔より向上し、病気や飢饉・戦争はなく暮らせていたが、食の問題があった。
現在の食べ物は、すべて科学的に人工で作られているため栄養的には問題はないが、どれも同じような味であった。
そのため、人類は過去にタイムトリップし、絶滅した生物・植物のゲノムを確保することが目的であった。
装置が完成したのもあって、ケイトは足早に上層部に報告し、タイムトラベラーの選抜を打診するのであった。
ケイトが出て行った時、一人ほくそ笑む人がいた。ルー博士である。
ルー博士(どうせ、人の選抜に時間がかかるであろう。まったく時間の無駄である。過去の食への知識・探求心がり、かつ装置の使い方もわかっているなら私が行けばいいのだ。)
そう考え、ルー博士は人知れず過去にトリップするのであった。