破壊者の運命(さだめ)
タケルは、またも人を助ける事になったが
破壊者としての自分に、虚しさを感じていた…。
「タケル〜 起きた〜?」
俺は昨日風呂上がりに、三人で酒を飲んだ。
久々の美味い酒に、少し飲み過ぎた様で
頭が痛い。
「は〜い 今起きま〜す」
俺は起きて、下に降りた。
「タケル〜 昨日飲み過ぎちゃっねっ 今日は
どうする冒険? 実はさぁ、今街にサーカスが
来てて、一緒に観たいなぁと思ってさぁ。」
「サーカスかぁ いいねぇ三人で行こうか?」
「残念! お母さんは、行けないのよ。お店閉める
訳いかないからねぇ。だ か ら私と二人で行くの
いいよね。お母さん!」
「あんたって子は、あぁ〜行って来なさい。
二人で楽しんでねぇ 帰ったらユアン 交代だからね
分かってる?」
「あい〜 分かってま〜す じゃ用意するね」
「ほい、俺も用意する」
二人は、街に来ているサーカスを観に行く事に
なった。俺なんか子供の頃に、観た記憶があるが
もう、いつかも忘れてしまった。
サーカスに着くと、流石に賑やかでお祭り騒ぎ
だった。いつもの街の三倍は人がいる感じだ。
人混みを避けながら、二人は空中ブランコの
テントに入った。
「あぁ〜私 ワクワクするわ ココ来たかったの」
「そうだな、観るだけで緊張するよ 」
「ねぇ、腕組んでいい?」
「そんなの一々聞くなよ。いつも通りのユアン
でいいさ。」
「は〜い 今日は私だけのタケルだもん!」
腕にしがみつきながら、歩くとやたらユアンの
胸が左腕に当たってくる。と言うよりコレ
押し付けてる? まぁ柔らかくて気持ち良いから
良いとするか。俺今、鼻の下伸びてるなきっと。
空中ブランコって落ちそうで 落ちないから
ドキドキするんだよ、あの高さからじゃ
確実に死んじゃうからねぇ。
おっ 始まった!
二人は、暫くブランコを楽しんで観覧していた。
そしてクライマックスのシーンで、観客全てが
固唾を呑んでいた。
太鼓の音と、音楽が一瞬止まった!
おぉ〜成功!
そして再び! 止まった!
しかし、観客席で見守る前でそれは起きた!
失敗し回転しながら、女性が転落したのだ!
彼女は、頭から真っ逆さまに落ちて、グチャと
いう変な音を出した。
サーカスの皆んなが駆け寄った。
泣き叫ぶスタッフもいた。
首を振るスタッフもいた。
慌ててバタバタしている者もいた。
観客席は、騒めいていた。
放送が入り、事故を報告し演技は終わった。
「あ〜もう 心配だわ 死んだのかしら?」
「怪我だけじゃ すまないよ きっと。高さがね」
「ねぇ、タケル行ってみましょう!」
「おぉ〜そうだな。」
二人は、スタッフが集まっている裏のテントに
入っると、やはり彼女は、亡くなっていた。
殆ど即死状態だったらしい。
完全に首の骨が折れていた。
「もう、どうする事も出来ないのね」
「あぁ、どうする事も出来ない……。」
[システムオープン]
今なら蘇生スキルで、蘇生可能です。
あと、20秒、19秒、18秒
「何〜蘇生可能? じゃ、早く発動!」
[システムオープン]
蘇生スキル発動します!
暫く掛かります。
完了しました。蘇生成功。
「あっいたたたたっ首が痛い!」
横になっていた女性が、叫んだ。
周りにいたスタッフが、口を開けている。
「あぁ〜説明します。俺が今蘇生スキルを使い
彼女を蘇生しました。運良く成功です、はい。」
スタッフ達が、一斉に我に戻った!
女性に駆け寄る者、泣く者、天を仰ぐ者。
その中で、一人が近づいて来た。
「本当にありがとうございます。貴方様は娘の
命の恩人です。私はグアンと申します。娘は
クルトンと言います。なんとお礼を申し上げ
ればいいものか…」
「いや、私はたまたま、サーカスを観に来た
冒険者です。お気になさらないで下さい。」
「貴方様のお名前は?」
「あぁすみません。タケルと言います。」
「おぉ タケル様、どうか明日の夜 またこの
テントに来てもらえませんか?娘と共にお礼を
申し上げたく存じます。どうかお願い致します」
「タケル 来てあげて。わかるの私も」
「うん、分かりました。明日の夜また来させて
頂きます。よろしく」
サーカスの皆んなが一斉に頭を下げていた。
娘はまだ、横になっていたが、こちらを気にして
いた様子だった。
「あぁ〜なんかタケルって いつも何処でも
人を助けるんだね。そう言う星の元に生まれた
んだね、きっと。益々尊敬しちゃうよ」
二人は、サーカスを後にして宿に戻った。
早速母に、今日の事を話しているユアン。
俺は、自分の部屋に戻り調べたい事があった。
「システム聞きたい事がある!」
[システムオープン]
はい、何なりと。
「俺は破壊者なのか、この世界を壊す為に
転生されたのか?」
[システムオープン]
はい、その通りです。この世界を全て破壊し
新しい世界を創造するのが貴方の役目です。
「そうか、この世界はそんなに悪いのか?」
[システムオープン]
良い悪いの問題では有りません。時の問題です。
時期が来たので、破壊し創造するだけの事です。
「そうか、理解した。勿論ココにいる人達は
全て消えてしまう訳だな?」
[システムオープン]
はい、その通りです。
「では、期限はいつまでにやるのだ!」
[システムオープン]
後10年の期限です。
その間であれば、破壊者に委任します。
「そうか、了解した。あと10年しかこの世界は
存続出来ないと言う事か……。」
ユアンやミラには 言えんなぁ。
それも、俺が破壊するなんて……。
「タケル〜! 入っていいかな?」
「あぁ どうぞ!」
「お疲れの所、悪いんだけど 母にも少し
構ってあげてくれる? 」
「あぁ 飯ももう出来ら頃だと思うから
下に降りるよ。」
「ありがとう! じゃ待ってるね」
下に降りるともう、食事が出来ていた。
「タケルさん 今日は手によりを掛けて作ったのよ
それと、サーカスでは、本当にお疲れ様でした。
ご自分では、あまり気づいていないかも知れない
けど、タケルさんは周りの人を、自然と幸福に
していると思うの。何かオーラ見たいな物が
出てるのよね。私だけで独占しちゃいけないの
かも知れないわ。本当に残念だけど……」
俺はそんないい奴じゃ無いんだよ
後10年の内に、この世界を全て消し去ってしまう
張本人なんだ! 俺は本当はそう 叫びたかったが
今は、どうしても言えない。 苦しい……。
「あら、どうしたのタケルさん。顔色が悪いわね
横になる?」
「いや、大丈夫です。頂きます。」
せっかくの料理が台無しだ。何か打開策は無い
ものだろうか?俺は頭がいっぱいになっていた。
冒険は続く