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遠くの君へ

作者: 犀星ゆき


ああもう! イライラしすぎて身体の内から尖った鉄骨が飛び出そうだな。


手とかムカつくし、なんでこんなのあんの?


怖い。訳のわかんないもんが私を規定してる。


くまのぬいぐるみが私の友達。でも、それが恐ろしい。だってそれが現実になりそうで。


妄想なのに。設定なのに。


それが私のこののっぺりとした景色にはそれさえも現実と変わらなく映ってしまうだろう気がして。


高校を卒業してもうすぐ一年。


まさかこの年で自宅のベットの上で必死にでぬいぐるみにしがみついて呻き声を漏らして、手首を切りたいような変な衝動が起きないように感情の波を穏やかに保つ行動をしてるなんて。


平日の昼間っから。


中学生の頃とかの私ならこういうのをメンヘラとかって言うだろう。冗談めかして。嘘っぽく。


ほんとかよそれって。


構って欲しいだけのイタい女だって。


なんてイタい奴だって。


ほんとうるさい。


私そんなんじゃない。


朝、ベッドで目が覚めて伸びをして起き上がろうとして、ちょっと脳貧血のような目眩がして。


こんな唐突に訳の分からない恐怖感に駆られてる。


理由なんてない。


だから怖い。


だって、なんで理由がないの?


なら、もしかしたら逆に全てが原因なんだ。


でも、それをリストアップも出来ない時点で訳のわからないのっぺらぼうな恐怖感が時間を支配して頭の中は真っ白に漂白されて、ちょっとでも理性的な思考の入り込む余地もないほど空っぽになって、それから着ぐるみの中で光みたいに無茶苦茶に反射しながらそれが増幅していって。


無尽蔵だ。


これは無尽蔵だ。


いや、もうだめだ。


世界が回ってる。


他人の目眩の中の世界のぬいぐるみの目が目眩を起こした時みたいに。


もうそういう時って私の場合上下ってのがないのよね。


ベッドから体が捩れながら月に引っ張られて浮き上がって、あの時渡った足元から浮き上がる吊り橋の感覚がぶり返してきて。


感覚はぶり返すんだ。


風邪みたいに。


というか、これが真実でない根拠が崩れさっている。


重力は当たり前に下には働かない。


どうして私の重力は変になっちゃってるんだろ。


わかんない。


怖い。


怖いなぁ。


ひどいよ。


私だけって思うよ。


こんなの。


だって。


世間からは馬鹿にされてるらしいけど。


どうして。


こんなに辛いんだ。


切らしてよ。


収まってぶっ倒れて汗びしょびょになって目覚めた時に前、あんまり酷くて手首血だらけにしてたもんだからいつも深爪にするように言われてる。


でも、実際分かるわけない。


私のことなんて私しか知らない。


他人の感覚を私が体験出来ないのとおんなじように。


私の感覚は私だけのものだって。


それがいけないこと?


でも、大丈夫。


これはぶり返すから。


風邪と一緒だよね。


波があるんだから。


満ちる時もあれば引く時もあるよ。


だから。


今だけだから。


きっと今だけだから。


遠くの君へ。

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