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コーヒーについて

 たまにはお話続行。

 朝の散歩終わりにコンビニでカフェラテを買って、一服しながら帰路に着く私たちなのだった。

「巴先輩、コーヒーお好きですか?」

「ああ、好きだよ。甘ったるいコーヒー牛乳からブラックコーヒーまで」

「カフェイン中毒ですね」

「それは違う。第一カフェインって、コーヒーよりも玉露の方が多いらしいよ。玉露は玉露でまあまあ好きだけど、そう頻繁に飲むものでもないし。カフェインを摂りたいんじゃあないよ」

「そうですかそうですか。コーヒーの味がお好みなのですか」

「なのですよ。……なんというか、苦味、甘味、酸味の間にある香ばしさが好きなんだよね。コーヒーの中毒ではあると思う」

「家でもよく飲むんですか?」

「飲むよ。一人暮らしだとあんまり上等なものは飲めないんだけどね」

「……おぉ? その言い方だと、ご実家にいらした時はもっと上等なものを嗜んでらっしゃったようですが?」

「うん。実家ではコーヒー豆買って、豆を挽くところからやってた」

「豆からですか! 本格的ですねえ。ご実家は喫茶店か何かだったんですか?」

「違う違う。一般家庭だ。別にそこまで本格的な道具がなくても、手動で豆を挽ける道具があるんだよ」

「へえっ。そういうものがあるんですね」

 ……常日頃思うことだけれど、椎菜のコミュニケーション能力は高い。恐ろしく聞き上手である。ふと我に帰るまで、私がここまで喋らされている自覚がなかった。

「末恐ろしい後輩だよ……」

「ん? 何がです?」

 声に出てた。

「いや、椎菜が小気味よくリアクションしたり質問を振ったりするから、いつのまにか沢山喋ってたな、と思って」

「うふふ。そうでしょうそうでしょう。私は人の話を聞くのが好きですからね。まあ相手は厳選しますけれど」

「厳選なんだ」

「ポケモンも昔はよく個体値厳選してました」

「あー、結構なガチ勢だったんだな」

 私もネットで見て個体値厳選のやり方は知っていたけれど、やり始めてもすぐに放り出してしまった。ゲームで根気強く作業できるのは精々レベル上げまで。

「ポケモンのことはさておき、意外だな。椎菜って誰に対しても人当たりが良いと思ってたけど」

「おやおや、それは嬉しい誤解ですねえ。まあ人当たりの良さは誰に対しても発揮しているつもりですけれど、それと話を聞きたいと思うのはまた別物です」

「別物なのか」

「別物語です。興味のない相手と話すことになったとしても、やんわりと会話を打ち切って早々に立ち去りますね。その辺は選別差別してます」

 千差万別に語呂が似ていて、それでいてシビアなオリジナル四字熟語で言い表す椎菜なのだった。

 私にやたらと懐く椎菜だが、分別はきちんとつけているようだ。

 いや、そもそも何故椎菜が私に懐いているのかが謎だけど。

 考えるのが面倒なので、私はカフェラテを一気にあおった。うん、美味しい。

「巴先輩?」

「ん、何?」

「先輩って時々遠い目をしますよね」

「そうなの?」

「そうです。そんなだから、わたしみたいなやつに興味を持たれてしまうんですよ?」

「そりゃあ大変だ」

 話しながら歩いていると、私の住むアパートが見えてきた。椎菜共々大学に出かける支度をしなければならないが、その前にウチでももう一杯だけコーヒーを飲もうと思う。

 今はブラックコーヒーを飲みたい。

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