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第四章 望みと激突のページ 4

    4



「……ッ!」

 庵は驚いた。

 ルナと分かれて数分経ったところで、家に着いたのだが、そこで驚くべき光景を目の前にした。

「なんだ、これ……」

 家の周りを何か、透明な半球のようなものが覆っている。雰囲気としては、漫画でおなじみの「結界」のそれに似ている。

 何が起こっているのかわからず、ただ立ち尽くす庵に、不意に声がかかった。

「……あなたは誰ですか?」

 庵は振り向く。そこには、巫女が着ている服を身にまとった、同年代ぐらいの少女がいた。

「え……、だ、誰って」

 庵が戸惑っていると、少女は不思議そうに彼をじーっ、と見る。すると、何かひらめいたように、

「ああ、あなたが獄魔庵(ひとやまいお)さんですか」

 あまりにもいきなり本名を当てられたので、庵は少し彼女に敵意を抱く。

(……まさか、敵?)

 警戒態勢に入った庵を見て少女は「大丈夫ですよ」と薄く笑う。

「敵ではありません。私の名前は「神和巫東(かんなぎみと)」、「執行人(ハントメーソン)」です。上位支部からの命令で、ホネットさんと竜串さんの援護をしにきました」

「援護……?」

「ええ。ホネットさんから上位支部へ救援要請が出たので、現地に一番近い場所にいた私が派遣されたわけです」

「ホネット……。そうだホネット! なあ、ホネットはいないのか!? ルナから呼んで来いって言われたんだ!」

 庵が訊くと、巫東は怪訝そうな顔をして、


「ホネットさん、ですか? ……おかしいですね。ここにはいませんでしたし、なにより竜串さんと一緒にいる、と上位支部には言ってあったので」


「―――……!? 今なん、て……?」

 巫東は「?」 とした顔を浮かべながら、

「だから、ホネットさんが竜串さんと一緒に敵と戦っているから、あなたを護衛するために私が呼ばれたんです。この結界も、そのためなのですけど」

 庵の全身から血の気が引いていく。

 ホネットがルナと一緒に戦っている? そんなはずはない。庵は今日一日中ルナと一緒にいたし、ホネットは朝から仕事で出ていた。一緒にいるはずがない。そもそも、戦闘もしていない。

 ホネットが嘘をついた? としか考えられない。なら、何のために? そこまでしなければ神和巫東は来なかったから? 庵の護衛を固めたかったから? ルナの負担を減らしたかったから?

 庵は巫東が嘘をついている、という可能性も考えたが、違うと思った。明らかに敵意が感じられない。根本的理由はないが、敵だとは思えなかった。

「なんで……?」

「? 何を悩んでいるんですか? 魔力の放たれている、あの方角の先で、二人は戦っているのではないですか?」

 巫東は、海のある方向を指差す。確かに、この方角にルナは走っていった。

 分からない。ホネットの考えていることが。何のつもりだ。何が目的なんだ。

 庵は少し考えた後、

「巫東、さん。お願いがある……あります」

 巫東は困った顔で庵を見ると、「なんですか?」と返した。

「俺を、その場所へ連れて行ってくれませんか?」

「……? 何を言っているんですか?」

「すごく場違いなことなんだろうっては分かってます。でも、何が起こっているのか、確かめないと……。もしかしたら、ルナは……」

 その先は言えなかった。

「意味が分かりません。どう理由があったとしても、そんな危険な場所に行か」

「それでも! 行かなきゃならないんです! あいつは俺を守るために一人で戦ってくれているのに、それを遠くで見ているだけなんてできないんだ!!」

「……!」

 庵に圧倒されて、巫東は少し身を縮める。

 彼女は顎に手を当てて、しばらく考え込んだあと、笑ってため息をついた。

「あなたみたいな人、嫌いじゃないですよ。竜串さんはきっと迷惑するでしょうが、彼女もきっと、心の底では嬉しいはずです」

 え!? と庵は顔を赤くする。

「そ、そそそんな……。……ん? て言うことは?」

 巫東はクスクスを笑い、

「さあ、彼女を助けに行きましょう」

 と、庵の額にお札を貼り付けた。

「では、行ってらっしゃい。わたしも後から参ります」

 ―――え、と庵が言う隙もなく、光と音ともに庵の体はその場から消えた。


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