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面白い奴じゃ

セシルじゃ。まず結論から言おう。


わしはあやつ、二階堂伊吹を信用する、というより仲間にすること決めた。


この考えをフィレスに伝えると満面の笑みで許可を得れた。何故そんな急にと思うじゃろう、じゃが決めた理由は簡単じゃ。


自分と同類、面白い事に対して全力を尽くす人間じゃと、いやわしはエルフじゃがの??

まぁ、まずどういう経緯でそうなったのか話そう。



妙に明るい、いや、眩しい。まだ真夜中のはずじゃ。じゃがかなり眩しい。目を閉じているのに。


そして違和感が一つ、一緒に寝袋に入ったフィレスの感覚が無いのじゃ。もしやと思い焦って寝袋から出て目を開ける。


すると何故か昨日以上にピッカピカになった自分の胸当てで太陽光を反射させ、自分の顔に当ててくるフィレスの姿があった。


「おはようセシルちゃん」


「おーせっちゃん、おはようさん」


「その前にフィレスははようその胸当てを下せ」


いかん、まだ目がチカチカする。


「何故、交代時間に起こさなかったのじゃ??」


「ウッ...いや...まぁ....アレだ」


「私の胸当てと剣を磨くのに集中しすぎて私が肩を叩くまで気づかなかったんだよ」


訳が分からない。いや、本当に訳が分からないのじゃ。


まだはっきりとしない目で太陽の位置を確認する。だいたい8時ごろじゃろう、寝たのはだいたい23時のはずじゃ。つまりこやつは9時間近くも磨き続けたのか??じゃが、ざっと見渡してもイブキが動いた形跡が一切無い。


「セシル見て見て〜〜」


そう言ってフィレスは右手で剣を握り、腕には力を一切込めず走り出す。一瞬何がしたいのか訳が分からないがすぐに理解する。


足元の草がいとも容易く切れていくのじゃ。これまでの記憶を辿るがその剣がそこまで切れ味よかった覚えは無い。というより今持ってる中では粗悪品に近いはずじゃ。


目に魔力を灯して刀身を見るが一切の魔法の痕跡は無し、イブキがすまなさそうに握る右手には異常に小さくなった砥石。つまりあやつがあそこまで研いだという訳か....もしかして異常にレベルが低いのは鍛冶屋の息子だったのか??


いや、でも昨日の夜伊吹は言ってたのじゃ、俺は転生者と。つまりこやつの前の世界はそんな技術が求められる世界じゃったのかもしれんな。相変わらず信用は出来んがな。



何故か異常に美味しい朝食を食べて歩き始めた頃、事件が起きたのじゃ。


急に伊吹がちょっと借りるぞとフィレスの腰の剣を勝手に抜きとり、街道から竹林の深くに一瞬で入っていったのじゃ。


そしてすぐに殺意を持ったというサイン。そう、昨日奴につけた魔法は結界なのでは無い。誰かに殺意や敵意をもった瞬間わしに知らす魔法じゃ。


「フィレス、多分奴が襲ってくるぞ。そして仲間たちを引き連れてくる可能性があるのじゃ」


「セシル、そこらへんは多分大丈夫だと思うよ??」


「何故??」


「勘だよ、私の勘」


こやつの勘は外れたことがこれまで一切無いからのう。じゃがいつでも魔法を撃てるように準備だけしとくのじゃ。


初級の土魔法の一つ、《ストーンバレット》を10個ほど展開させる。これでいつでも撃てる準備じゃ。じゃが、相手も予想済みじゃたんじゃろう。遠距離から魔法の反応、迎撃に全弾使ってしもうた。その隙に多分潜伏スキル持ちの連中が近くまで近づいて街道の方に出てくる。こやつら賊の割には大したものじゃ。これまで一切声を出してない。それだけ統率がとれているというわけだ。


数は10人、ある程度危険は予測していたのじゃがのう。生憎フィレスは丸腰、囲まれたから伊吹の方が一杯上手じゃったというわけじゃ。


じゃが、そう簡単に捕まってはたまるか、もう一度ストーンバレットを展開するが魔法が飛んできて阻害される。


「フィレス、お前だけでも逃げるのじゃ!!」


何故か一切動こうとしないフィレスに声をかける。するとこっちを向いて一言。


「大丈夫、すぐに終わるみたい」


全くもって意味不明なのじゃ、じゃがその答えはすぐにやってきた。


生首と共に。いや、厳密には生首付きのフィレスの剣が目の前の賊の顔面に突き刺さる。


「ごっめーんフィレス。俺剣苦手でうまいこと引き抜けんかったわ」


ニヤニヤしながら近づいてくる奴の両手には何故か切られた竹が数本握られていた。

「なんだぁオメェは!!」


顔面に剣が刺さった賊は倒れ、その穴に堂々と伊吹が入ってくる。さっき叫んだ賊には見覚えがある。確かギルドで懸賞金が懸けられていたはずじゃ。ジェッソと言ったかのう。


「よっと」


そう、軽い声と共に竹を一本、遠くにぶん投げる。小さく悲鳴が聞こえるあたり命中したのじゃろう。


恐ろしいほど正確な投擲じゃ。一体何者じゃこいつ。


しかも一瞬の出来事でフリーズした隙にジェッソ以外の人間を全員竹を投げて串刺しにする。3人一気に貫いたあたり威力も相当なものだろう。よく見たら竹も斜めに切っており、刺さりやすくしておるがこんな簡単に刺さるわけ無い。それだけ伊吹の槍スキルがすごいのじゃろう。そして伊吹は無言のままジェッソに近づく。


ジェッソは両手で大剣を振りかぶるが両手で竹を持った伊吹はまず指を切り飛ばす。そう、刺すのでは無く切り飛ばす。即席の竹の槍でじゃ。


当然大剣を握れなくなったジェッソは痛みで後退しようとしたがわしには見えない速度で接敵し、パァンッと両頬に二発竹槍をぶち当てて喉を貫く。


その光景を見てわしはドン引きした。もちろんフィレスもドン引きしていた。


じゃがわしは同時にワクワクしたのじゃ。こやつといれば今後も絶対面白い事が起きると。



2、30分ほど身ぐるみ剥いだり賞金首袋に入れたり休憩していた時に一つだけ伊吹に質問してみる。


「お主の人生とは何だ??」


そう聞くとさも当然の様にこう答えよった。


「うまい料理食って、好きな女抱いて、気の向くままに世界を回って理不尽に死ぬ事だろ??」


思わずわしは大声を出して笑ってしもうた。わしが20年ほど前に出した結論じゃからじゃ。


まぁだいぶ言い方は違うのじゃがわしはこう見えてもエルフの中ではお姫様みたいなものじゃ。里を出る条件の課題にあったのじゃ。

自分の人生をどうしたいかとう課題がのう...3年ほど考え続けた結界、


「好きな様に生き、理不尽に死ぬ」


と答えを出したのじゃ。そうかそうか、こやつはわしと似たもん同士、じゃったのか...


ならまずは仲間にするのをフィレスに相談するとするかのう。



フィレスの日記


2/12


私は多分、生まれて初めて現実の非情さを知ったと思います。ええ、伊吹さんです。昨日寝過ごして書き忘れたので昨日の分も合わせて書きます。


まず、見た瞬間分かったのですよ、自分より数倍強いと、尚且つとても優しい人だと。そこで仲間にしたい、最悪でも関係は結んでおきたいと直感的に思ったのですよ。


お父様もお母様も昔冒険者で、自分より強い人がいたら最悪名前でも覚えてもらっておけと口すっぱく言われたのです。


セシルちゃんは最初は反対していましたけど強引に引っ張るとしぶしぶ承諾してくれました。やりました!!


ナイフ、それもサビが浮いたようなナイフ一本投げてうさぎを捕まえる所を見たときは痺れました、かっこよかったです。


夜にレベルが2と聞いた時は目を疑いました。ですがステータスのレベルを弄るのにはそういう特殊なスキルが必要な上、そこまで下げる良さが分かりません。その上、伊吹さんは転生者、これはちょっと前に読んだ神話の主人公となる人かも!!


そうワクワクしながら寝ちゃいました。そう、寝過ごしちゃいました。


朝、セシルちゃんよりも早く起きるとシャーコ、シャーコと何かを研ぐ音が聞こえました。目を開けると外はもう朝です、その時完全に寝過ごしたと気づき、伊吹さんの姿を見ると何故か私の剣を一生懸命研いでいました。


えっ??と疑問に思い周りを見渡すとこれまでになくピッカピカになった私のお気に入りの胸当て、そこで分かったのです。伊吹さんがやってくれたと。


そこでセシルちゃんを起こさないように寝袋を抜け出して伊吹さんに近づき肩を叩きました。


すると伊吹さんは、


「おっ、もう交代の時間か??んん???

マジか、朝か。マジかよ....すっかり忘れてたじゃねえか...」


と呟きました。それから


「ごめ、今から朝飯の準備するしセシル起こして、あと勝手に装備弄ってごめんな!!」


と言われたので慌ててありがとうございますと感謝を述べました。


すると伊吹さんはニッコリと笑って


「気にすんな」


と言いました。あっ、この人いたずらっぽい所はあるけど私の白馬の王子様になってくれる人かもと思いました。


えぇ、現実は違いました。いや、救ってくれたのは違いないですけどやはり夢と現実は非情だなぁと。


途中急に剣を盗られた時はびっくりしましたけど一切悪意は感じませんでした。あぁ、モンスターがいたのだろうと思いました。


でも、相手は盗賊、潜伏スキル持ちの人たちにあっという間に囲まれました。


私は丸腰でしたがセシルちゃんに頼めば剣はいつでも出せます。ですが遠くから近く音が聞こえたのです。あぁ、これは盗賊の後ろから忍び寄ってピンチの時にギリギリ間に合ってズバッと一断ちで全員倒してくれると。なら私は堂々と待つだけだ。そう思っていました。


まさか自分の剣に生首が刺さった状態で飛んでくるとは一切思いませんでしよ。あとは一瞬で伊吹さんが盗賊を殲滅して終了。それもそこらへんで収穫した竹で作った槍で。


伊吹さんの戦う姿はかっこよかったですがそれ以上に夢が壊れたショックが大きくしばらく何もできませんでした。その時セシルちゃんは伊吹さんに何かを聞いていました。


そして答えを聞いて納得したようで私に近づき、一言。


「伊吹を仲間に引き入れるのじゃ」


私はもちろん頷きます。夢が壊れたショックは大きいですがそれ以上にワクワクが大きかったのです。


これから何か大きな面白い事が起きると。


その言葉をセシルちゃんに伝えたら笑っていました。まだまだ書き足りないですがセシルちゃんに寝ると呼ばれましたので大事な事を一つ。


セシルちゃんと伊吹さんの3人でパーティーを結成しました。セシルちゃんがリーダーです。


以上が大体二日間に起きた出来事です。あっ、もう一つ書き忘れていました。


明日も明後日もいい1日でありますように。


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