三話 街道を整備するつもりだったのだが・・・
バセレイル「いつもお読み頂きありがとうございます。陛下。大丈夫ですか?」
ベル「問題無いというか・・・」
セフェラ「問題アリアリじゃん。バセレイルってばスパイだし、任務をすっぱいするし」
ベル「・・・急に寒くなった感じがするのだが」
バセレイル「陛下。羽織る物をお持ち致しました」
ベル「おお、助かる」
セフェラ「何か、アチキに冷たい気が・・・」
ベル「こんな寒いオヤジギャグを言いやがって・・・凍死するかと思ったわ!」
バセレイル「同感です」
ベル「兎に角、三話いくぞ」
「バセレイル。今のはホントの話しか?」
何だと!?
バセレイルがザルヘルバ王国の工作員だとぉ!
家宰は、あれはあれでかなり有能だ。
その家宰の目を誤魔化してここまで来たのだから、ちょっとやそっとじゃ口を割らんだろう。
「ええ。ホントの話しです。ザルヘルバ王国の外相のベリアル閣下の占卜に、貴方様の事が出ましたので、リル様の命に依り、この国に入国致しました。その後、仕官募集の立て札を見て、こちらに潜入しました」
・・・よくもまぁベラベラと喋るなぁ。
しかし、肝心な所が抜けている。
オレの事が占卜に出ていた、という事だけなら、態々仕官なぞしなくても、我が国なら普通に民草に紛れて、情報収集するだけで十分なのだが・・・
目的が全く見えない。
・・・ザルヘルバ王国は内陸国だ・・・・・・そうか!塩か!
ザルヘルバ王国は内陸国で、優良な森林資源や鉱物資源に恵まれているが、内陸国の宿命、海に面していない上に、沙漠は有るが、ここ数百年で出来た新しい沙漠なので、岩塩すら採れない為に、塩がとても高価だ。
しかも、ゲームでの事で言えば、周辺国との友好度は、察して欲しいという位芳しく無いので、塩を安価に輸入出来ず、暫し外交カードとして切られる場合が有るので、こっちでも恐らくそうなのだろう。
そうでなければ、この状況は説明出来ない。
という事ならば、この塩という外交カードを利用して、ザルヘルバ王国から何らかの譲歩を引き出す事が出来るだろう。
いや。我が国が今後大国に侵されない為には、形だけでもザルヘルバ王国の傘の下に入った方が良さそうだ。
さて、問題なのは、バセレイルがどれだけの権限を持たされているかだ。
・・・オレは腹芸が得意ではない。
というか、オレは技術屋だ!!
兎に角、直球で行ってみるか・・・
「という事は、占卜の結果に因り、国として我が国の塩の獲得を目指して来たのか?」
そうオレが言うと、一瞬ではあるが、バセレイルは驚いた顔付きになった。
バセレイルは、直ぐ様取り繕ったが、オレはその一瞬を見逃さなかった。
どうやら図星の様だな。
「ええ。その通りにございます」
「そんなに、直ぐにバラしていいのか?」
「問題有りません。ベリアル閣下の占卜通りになったので、いささか驚きました」
「そうか。所で、どの辺りまで権限を持たされているのか?」
「直に来ますね。貴国との交渉等に関しては全権を託されています」
オイオイ、全権大使様かよ。
オレは精々ザルヘルバ王国にまで通じる街道を整備する様に誘導する事と、街道の整備が完了後の、塩の獲得交渉程度だと思っていたが・・・
どうやら、ザルヘルバ王国は本気の様だ。
ザルヘルバ王国の周辺国の中で、海に面していて、更にはザルヘルバ王国より弱い国は全くない為に、沿岸国を戦争に因って征服しようにも、下世話な話し、費用対効果から言えば、塩だけの為にその様な事は出来ず、しようものなら赤字どころの話しではなく、ザルヘルバ王国が現在どれだけの状況か知らないが、ゲーム知識だけで言えば、ザルヘルバ王国はそれをするだけの国力は無く、それは自殺行為にも等しく、その先には滅亡の二文字が待っている。
まぁ、ラナバルラントは軍事国家で結構強い国なのだが、それを属国化したのだから、その事が、オレのゲーム知識が役に立たない事の左証だろうがな。
そして、ラナバルラントを落とした事で、オレの国が浮上したという事だ。
ここで、オレが街道の整備に強固に反対しても、あちらはレバオラまで無理矢理街道を繋ぎ、この国を占領してでも安価な塩を手に入れるつもりだろう。
ザルヘルバ王国には、それだけの事を成し得る国力が有る様だな。
何だ。この国を維持するには、オレは是と答えるしかないではないか。
早いなぁ・・・詰むのが。
オレがこの世界に転生(?)して、まだ半年も経っていないぞ。
オレが、ゲームでこの国を選んだ時でも最短で一年半は保ったぞ。
それを・・・
最早、塩という外交カードは無いも同じではないか。
・・・いや待てよ。
あちらさんは、この国が地下資源の宝庫だと言う事は知らんだろう。
当然、埋蔵場所も知らない。
オレは、どこに何が埋まっているか詳しく知っているがな。
しかも、ザルヘルバ王国とラナバルラントにはミスリル鉱山及び鉱脈は一つも無い。
我が国には、世界でも五指に入るとも言われる鉱脈が在る。
という事は、それも合わせれば何とか外交カードとして利用する事は可能だな。
よし!その方針で行こう。
「という事は、塩に関してだけではないのだな?」
「その通りにございます」
「我が国エルベリアは、貴国ザルヘルバ王国と対等な条約を締結したい」
「我が国と対等?ご冗談を。貴国にそれだけの力がお有りで?我が国が本気を出せば、エルベリアなぞ鎧袖一触ですよ」
バセレイルは、剣呑な表情でオレを睨み付ける。
「何。そんな事をすれば、ミスリルを餌にエーベレンスに泣き付くがな。当然、エーベレンスの朝貢国となる事から逃れなくなるが、エルベリアが地図から消える事だけは免れるだろう」
オレがそう言うと、バセレイルは諦めた感じで溜め息を吐く。
「こういう事は、私では無理なのですかね。それにしてもまさか、この国にミスリルの鉱脈が在るとは思いませんでしたよ。どうやらブラフでも無い様ですし、ホントにやりかねませんね・・・分かりました。そちらの条件を全て飲みます」
そうして、オレとバセレイルは改めて握手を交わした。
「バセレイル。帳簿を見ただろうから言うまでもないが、ウチは無い無い尽くしだ。だから鉱山開発は、ザルヘルバの資本を充てにしたいとは思っている。それと、レバオラからラナバルラントの国境までの森林の木は木材として優良なのだな?」
「そうですね。この国は清々しい位何も無いですよね。レバオラから国境までの森林の木は木材としては確かに優良ですね。ラナバルラントの開発はこれからで、資材は幾ら有っても足りないので、道さえ在ればこちらで欲しい位ですよ。しかし、そんな気の利いた物は無いので、当面はエーベレンスに輸出するしか有りませんね。その売却益を鉱山開発に回しても、圧倒的に資金不足なのは確かなので、これ位の割合でしたらザルヘルバから回せますよ」
オレ達は、今後の方針について話し合っている。
今は、街道整備と、実はミスリルやその他の主要鉱脈の場所は、その街道からさして離れていない所に在るので、それに付随する鉱山開発について話し合っている。
バセレイルは、ザルヘルバから回せる資金を紙に書いてオレに渡す。
・・・木材の売却益予測が三千ED(約3,600万円)程で、第一期分の鉱山開発に必要な資金の推測額は二万ED。不足分の17,000EDを、ザルヘルバ王国の通貨ズゼで支払うと・・・支援額は1,020万ズゼか。
「バセレイル。こちらに支援する資金は、ディナール金貨に両替出来ないのか?」
「両替ですか?・・・大丈夫だとは思いますよ。陛下。あと鉱脈の場所はどこになりますか?」
バセレイルはそう言うと、地図を出して来る。
「ミスリルはここだな。銀と金はこことここで、銅はここに在る。鉄と石炭は、残念ながらこの街道沿いには無いな。別の場所になら在る」
「ムムム。ミスリルは兎も角、鉄と石炭とが一番欲しいのですが、街道沿いはおろか国内には無いと」
バセレイルは、街道沿いに鉄と石炭の鉱脈が無い事を聞いて、どうやら勘違いをした様だ。
「ホウ。鉄道網を構築する位だから、鉄が必要なのは分かったが、そんなに欲しいのか?」
「本来、こういう姿勢は望ましく無いのですが・・・欲しいです!どこに在るんですか!」
おうおう。バセレイルは恥も外聞も無く、鉄を要求して来やがった。
これでもオレは一応国王様なんだがなぁ・・・
「確かに頂けんなぁ。まぁ、それだけバセレイルはオレに対して気のおけない感じで居るのだろう。鉄なら在るぞ。こことこことここだな。石炭はここに鉱脈が在る」
オレは、少し呆れながら、鉄鉱石と石炭が採れる場所を指し示す。
「街道から外れている。というかあさっての方向に在るのですね。遺憾ですが、これは街道の整備が終わっても直ぐには無理ですね」
確かに、バセレイルが残念がるのは分かる。
何せ、街道は西を通るのに、鉄鉱石や石炭の鉱脈は東も東、エーベレンスとの国境からさして離れていない所に在るのだからなぁ。
安全保障上の問題から、それを解決せねばこちらの開発は出来ない。
突然エーベレンスが攻めて来て、鉱山を奪取されましたでは話しにならない。
さて、残念がるバセレイルに、一つ面白い事を教えてやろう。
「バセレイル。実は我が国では油が採れる」
不思議がるバセレイル。
オレが何を言ってるか分からん様だな。
「陛下。差し出がましい様ですが、油でしたらザルヘルバでは足りていますので、必要有りませんが・・・」
「兎に角、あちらの国王か側近共に、エルベリアでは石油が採れると言って見ろ」
「えっ?石油ですか?食用油の事では無いのですか?」
「態々、食用油位の事をこの場で話す訳ないだろう」
「・・・陛下。少々中座してよろしいですか?」
「構わん」
オレがそう言うと、バセレイルは執務室の外に出る。
『ベリアル閣下。バセレイルです。一つ報告が有るのですが、エルベリアでは石油という物が採れるのだそうですが、石油って何ですか?・・・・・・えっ?何が何でも確保しろと?・・・えっ?私に任すですか?閣下。それは丸投げというヤツでは・・・あっ!閣下!閣下!・・・切られた』
・・・バセレイルよ。秘密の相談なら、誰にも会話が聞こえない場所でしような。
しかし、ザルヘルバは無線機まで有るのか・・・
「お待たせ致しました。石油ですが、採れる場所はどこになりますか?」
オイオイ。こいつは先ほどの通信がこちらに聞こえないと思っているのか?
「バセレイル。本国と連絡取るなら、会話が他に聞かれない場所でする様に。それと、無線機持ってるならちょっと貸してくれないか?」
オレがそう言うと、バセレイルは驚くとともに、ガックリと項垂れる。
「ハハ。こんな失態しては最早クビかな・・・ハイ無線機です。使い方は・・・」
バセレイルは、乾いた笑い声を出し、アイテムボックスから無線機を取りだし、オレに使い方を教える。
「もしもし。リネルメ陛下ですかな?私はエルベリアの国王マーゼベルだ・・・」
その後、オレとリルーエット嬢は、四半刻ばかし話し合った。
この世界では初めての、電話会談ならぬ無線会談が行われたのだ。
バセレイル「ここまでありがとうございます。誤字、脱字などございましたら、お気軽にご連絡くださいませ。そこのへぼ作者。このあとどうなるのですか?」
セフェラ「章タイ通りになります」
バセレイル「そんな事は分かっています。私が聞きたいのは細かい内容です。そんな事なのだからへぼ作者なんですよ」
セフェラ「ヘボスティックマイヤー・セフェラとか言わないで」
ベル「寒いなぁ」
バセレイル「先ほどの分だけでは足りませんね。それより次話はいつくらいに更新出来るのですか?」
セフェラ「明日午前1時に予約投稿出来ればと思ってる」
バセレイル「無理ですね」
ベル「無理だな」
セフェラ「ふたり共いけずやわ」
バセレイル「へぼ作者はほっといて。それでは今後ともガルダフェリナ年代記をよろしくお願い致します。ブクマや評価など頂けましたら幸いです」