十話 観スポ開発をする筈なのだが・・・
バセレイル「いつもありがとうございます。皆さまには、前回より長らくお待たせしてしまい、大変申し訳ありません。現在ヘボ作者は、ベリアル閣下監視の元、次話を鋭意制作しておりますので、今暫くお待ち頂ければ幸いです。さてさて、わたくしめの長い話しは兎に角、それでは第十話をどうぞ」
翌朝。
オレはインベントリからいくつか食材を取り出して、タチアナに調理して貰った。
「主様。出来上がりましたので、お召し上がりください」
しかし、昨日に続きいい感じに茹で上がったロブスター数匹が、当然の様に食卓に上る。
オレが渡した食材で出来た料理を押し退けてだ。
流石に食い飽きたよ・・・
さて、どうするかな・・・
観光スポット(以下観スポ)と一口に言っても様々な形態が在る。
温泉地や史跡に遊園地、テレビ塔等のランドマーク等々たくさん在るが、今回は、折角南国に来ているので、この白い砂浜を最大限に利用した開発をしようと思う。
ただまぁ、それだけだと早い段階で観光客数が頭打ちしてしまう恐れがあるので、それ以外の観スポの開発も併せて行う予定だ。
ともあれ、先ずは街道の拡張整備を行わなければ、観光客の数に制限が出来てしまう。
「なぁタチアナ。この村の名は何て言うんだ?」
「特にありませんね。強いて言えば、この辺りの者達は、北沿岸村って呼んでます」
「何か味気無いなぁ。ちなみに、お前の出身の村は?」
「内陸中央村って呼んでます」
「ハァ。まぁそもそも、この地区自体に名前が無いから致し方ないか・・・」
名は重要だよな・・・
地区の名前は後で考えるとして、この村の名前は考えないとな。
・・・何にするか。
地球の観光地にあやかってみるかな。
サムイは・・・無いな。
サムイ村かぁ、正に寒村だね。
とディスられてしまう。
スパは・・・スパっと観光客が途絶える・・・不吉過ぎる。
アテネ・・・南国リゾートって感じがしないなぁ。
コタキナバル・・・いまいちだな。
マレ・・・観光客は稀にしか来ない。
んー。ネガティブになりすぎなんだろうか・・・
あとはプーケットしか思い付かないな・・・
デンパサル!!・・・電波猿・・・無いな。
やっぱりプーケットかぁ・・・
「この村は、プーケットという名前にするぞ」
「どんな意味が有るのですか?」
タチアナは尋ねる。
「古代エリル語で【楽園】という意味だ」
もちろん口からでまかせ。古代エリル語などという物は無く、真っ赤な嘘であるが、こういうはったりも必要だと自身を納得させる。
「楽園ですか・・・そうしたいですね」
「いや。するんだよ・・・兎に角、レバオラからの交通の便が悪いから、先ずは街道の整備拡張工場からだな」
前にも言ったかも知れんが、レバオラからこのプーケット村までの道はとても悪く、馬車が一台やっと通れる程度の道幅しかなく、その上、雨期には泥濘が出来てまともに馬車は通れ無いので、レバオラ方面に行く用がなければ誰も通らないし、特産物の無い南部地区に来る商人も滅多に居なくなる。
南部地区でも北に位置するこの地域は、一月から三月の間、少ーしだけど乾期が有るので、南側に比べそう言う意味では、晴れが多い分開発がしやすいのである。
あー、ホントに無いんだぞ。
サトウキビも南国特有の果物も、ガチで無いからな。
オレも、最初は精糖して内陸国に輸出すれば、対抗馬も無くウハウハだと思っていた時期も有ったさ。
しかし、バセレイルの報告を聞いてorzになったのは言うまでも無い。
ただ、魚介類だけは南国特有の物は有るが、冷蔵の技術が開発される迄は、乾き物や塩漬けになってしまい、当然、加工出来る種類も限られる。
というか、そう言った加工品はあまり無いので、観光客のお土産にもなるし、住民の生活レベル向上の為に、今後、指導・推奨させて行きたい。
さて・・・何をするにも、しっかりと整備された街道が無ければ、南国リゾート開発も、特産物の開発も、結局絵に書いた餅である。
「タチアナ。手配の方はどうなっているんだ?」
「資材等の調達の手配は済みましたが、現状の内容ですと、以前より幾らかましになったとは言うものの、雨期には通行が困難になりますよ」
「そうなんだよな。合材で舗装出来ればいいのだけど、石油の生産はまだだから無理だし、次善でコンクリート舗装と行きたいけど、セメント自体無いだろうから、現時点では砂利道にするしか方法が無いもんな・・・」
「合材やコンクリートがどういうのかは分かりませんが、それが有れば雨期でも道が泥濘事無く通行出来るのですね?」
「その通りだ。遺憾ではあるがな」
そうオレが残念がっていると、不意に足元が光だし慌てて飛び退く。
そこからは、次第に人が浮かび上がって来た。
それもよく知る人物だ。
「喚ばれて飛び出て皆様のベリアルの登場だよ」
そう、それはベリアルだった。
一応悪魔だし、そういう芸当が出来ても不思議じゃないし、それにここは地球じゃない。
「ん?閣下がどうしてこちらに来たのだ?シェラベリエで愚妹に指導していたのではないのか?」
「んー。一段落したからね。あとは計画書さえ有れば、誰でもは語弊が有るけど、僕が居なくても大丈夫だし、君のその愚妹の姫もこちらに向かっているよ。それにしても、ベルっちもまんまとバセレイルに嵌められたみたいだね。彼女アレでいて意外と曲者だし。多分ここがこんな状態なの知ってと思うよ」
なんだと!?
バセレイルの奴は全て知っているだと!?
・・・や、やられた。
上手く言いくるめたつもりが、逆に南部地区の開発を押し付けられたのか・・・
クソッ。意気揚々と出立するオレの顔はさぞかし滑稽に見えただろう。
・・・まぁいい。
奴の手のひらの上で、踊ってやろうではないか!
・・・ま、待てよオレ。少し冷静になろう・・・・・・ハァ。
「時に聞くが、セメントは有るのか?」
「ああ。立ち直ったみたいだね。まぁ、彼女の事はケセラセラだよ。と、質問の答えは、有るよ・・・ポルトランド?んー。街道に使うなら高炉の方がいいのかな?まぁ、どっちにしろ、今は輸出出来る程リゼルアには余剰分が無い、というより慢性的なセメント不足だし、ベルっちの頼みでもちょっと無理だね」
「ダメなのか」
門外不出かと思いきや、只足りないだけとは・・・
「リゼルア国内の開発もまだまだこれから、というか、生産量が国内需要の四割程しか賄えていない上に、ラナバルラントの開発も行わないといけないから、二国の総需要からすると二割にも満たないよ。生産工場の建設及び、拡張工事も併せてやってるけど追っ付かない状態だね。幸い、原料の方は、ラナバルラントから調達出来る様になったから、原料不足で工場が操業停止。何て事は無くなったけどね。ホントにゴメンね」
ベリアルの話しを聞いて納得した。
そういう事なら仕方ない。
計画書に修正を加えるしか無いな。
当のベリアルは申し訳無さそうな顔をする。
「仕方ないさ。こちらもあわよくばと思っていたし、リゼルアからの観光客もこの先二年位は期待出来ないだろうから、今有る計画書に多少修正を加えるだけだよ。これは、いよいよ我が国でも生産工場を建設せねばならないな」
「そう言って貰えると助かるよ。所で、原料の当てはあるのかな?」
「ああ、この南部地区に大きいのがな」
南部地区には、日本のセメントの年間生産量の、実に500年分
にのぼる埋蔵量の有る、巨大な鉱床が存在する場所が在る。
当然、露天掘りになるので、環境面に配慮しなければならない為、すぐには採掘は出来ない。
現時点では、道幅を馬車が四両並んで走っても、まだ余裕の有る8セル程にし、その道を押し固めた後に、砕石を0.3デルセルの厚さで敷き固める。
当然隙間が出来るが、そこには川砂を0.1デルセルの厚さで敷き詰める。
強度に不安有りまくりだが、セメントが入手出来ない以上、これが限界だと思う。
ちなみに、レバオラ-シェラベリエ間は、石切場がさほど離れていなかった為に石畳だ。
将来的にはコンクリート舗装にしたいが、プラントどころか、原料の採掘もまだなので、砕石道で整備しつつ、シェラベリエから石畳用の石を輸送して順次石畳に変更したい。
「雨?」
いろいろな準備や手配が済んで、いざ着工しようとした時に、雨が降ってきた。
「もう、そんな季節ですか」
「タチアナ。季節って?」
「主様。これからこの地域は、雨期に入ります。雨期に入りますと、極端に晴天の日が少なくなり、雨期が終わる迄の数ヶ月間、両手指折り数える程度しか晴れなくなります」
「ハァ?何その現象。工事はどうするんだ。雨期の間足止め食らう訳か?」
オレは想定外の展開に目が点になる。
ゲームでも、天気の影響はある。
あるにはあるが、戦争の時に著しく影響があるだけで、内政に於いては、たまに天候不順で凶作になる程度だ。
それに、オレは南部地区の開発は殆どしなかった事も大きい。
ちなみに、レバオラでの雨期は、月の半分は晴れるので、こちらはそこまで晴れないまでも、三分の一程度は晴れるだろう。
と、思っていたら、南部地区は雨期の期間、晴れる日数は多くとも十日程しか無く、当然、アメダスみたいな気象観測システムや、天気予報も無い為に、何時晴れるか分からず、工程の計画が立てられ無い。
「参った」
オレは、執務室で机に突っ伏し愚痴ってみる。
「強行する?」
「そうもいかんだろう。雨の中やったら街道の泥寧具合が酷くなって、通行自体出来なくなるぞ」
「でも、雨期はあと四ヵ月あるんだよ?このまま雨期が終わるまで待つつもり?」
「そうなんだよな。ここばかりに構けている訳にはいかんものな」
「やっぱり強行?」
「是非も無しか・・・・・・」
オレは天を仰いだ。
それからという物、レバオラープーケット線は難工事となった。
資材を積んだ馬車が、泥濘に嵌まる事数知れず。
密林・・・とまでいかなくても、既存の街道の両側には、結構な密度で生い茂る森林が在り、それが更に足枷となる。
ラナバルラント国境からレバオラ迄の時とは違い、街道自体の強度もさることながら、元々の地盤の脆弱性に因り、木材一本をレバオラ迄搬出する程度の事も、この泥濘に因って儘ならないのである。
「何とか・・・ならんなぁ。この雨では」
オレは、レバオラ側の起点から400セル程進んだ地点に設けられた、簡易宿泊施設に居る。
この簡易宿泊施設に使われている建材の殆どは、木材を搬出するのが困難な事への苦肉の策であり、現在結構な量の木材が伐られた更に外側に打ち捨てられている状態だ。
上手く搬出され売却できれば、建設資金の一部を回収出来るのだが、このままでは、建材には使用出来なくなり、二束三文の価値にしかならなくなってしまうのだが、こちらから出る時は木材、こちらに戻って来る時は街道の整備拡張の為の資材を積んでいて、往復どちらかが空荷ではないので、余計に時間が掛かる。
街道の整備拡張工事を強行してから一ヵ月、プーケット側からも建設しているが、進捗具合は芳しくない。
計画では、レバオラからプーケット迄、全長4万5千セルの内、レバオラから5千セル程を除いた、残り4万セルの整備拡張を行うのだが、両側合わせて進捗率僅か4%程に当たる1,500セル程度しか整備が終わっていないのだ。
内訳は、レバオラ側が500セルで、プーケット側は千セルになるが、何故プーケット側からの方が進んでいるかというと、プーケットに簡易の波止場を作り、そこからシェラベリエの真南に在るバリエ港とを船で結んでいる為に、レバオラ側と比べ輸送量が大きいからだ。
「もう、こうなったら馬車に、九州の有明海の干潟で利用されている、潟スキーみたいなの履かせたら?」
ベリアルが、ふとそんな事を言う。
「馬車に脱着式のソリを履かせろ。という事なのか?」
「そう言う事」
何故脱着式かというと、積み換えの手間を省くのと、馬車自体の総数が少ない為だ。
脱着式のソリが出来ると、途端に進捗具合が改善した。
その事に因り、【いつまで】というのが明確になった。
明確にはなったが、それでも次の雨期が来るまでは掛かってしまう。
まだ後八ヵ月も先の話しだが。
それに、雨期が後三ヵ月程で終わるらしいが、雨が降る日数が減るだけで、雨期じゃなくても、月の半分位は雨が降るらしいので、本来馬車には大して積めないという事だ。
この辺の事は、タチアナに聞いた事なのだが、脱着式のソリが出来た事に因り、これからは、より多くの物が積める様になったので、雨期に物資が窮乏する事が無くなる。
尤も、全て石畳に出来れば、そんな心配は無いのだが、それは更に先の話しになってしまう。
国内の幹線道路を全て舗装出来るのはいつになるだろうか・・・
「という事で、脱着式ソリの発明は、商人、住民共に好意的に受け止められています・・・で、これが今回の分です」
タチアナはそう言うと、書類束を机の上に多少粗雑に置く。
この書類束は、十日おきにレバオラに居るバセレイルから、竜便を使って送られて来ている物だ。
竜便とは、小型・・・大体羊程度の大きさの、ミニマムドラゴンというドラゴンに、半セル四方のカゴを首から下げさせて、指定の場所に配達させる物だ。
この竜便に利用される竜は、大変大人しい上に、人の言葉を解す種族で、大陸北の大帝国を中心として生息している。
本来は、大帝国から遥か離れた我が国の様な所には、融通はおろか、貸与すら不可能なのだが、同盟国であるリゼルアに大帝国の姫君が滞在(?)しているとの事で、その縁で十頭程融通して貰える事が出来たのだが・・・・・・
「オイ。ヘボ国王。バセレイルの姉ちゃんへの返信の今回分は出来たのか?ちったらしてたら夜が明けちまうからさっさと片付けちまえよ」
まったく口の悪いミニドラだな。
これでもメスなのが驚きだが、あまりに酷いとワニ革ならぬミニドラ革のセカンドバックにしてしまうぞ。
それから更に十ヵ月、二回目の雨期に入ってひと月半掛けて、ようやく街道が全て砕石道になった。
バセレイル「ここまでありがとうございます。誤字、脱字などありましたらよろしくお願いします。さて、一年程の時間を費やして、漸くレバオラからプーケット迄の街道の第一次舗装工事が完了しました。次話は、いよいよプーケットの観光地としての開発が始まります。どのような事になるかは、お楽しみにお待ち頂ければ幸いです。それでは今後とも、ガルダフェリナ年代記をよろしくお願いします」




