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若ハゲも若白髪も不治の病だとは思っていませんが、該当者にとっては永遠のテーマではないかと思われます。

佳苗の母方の祖父も晩年は禿げてました。真ん中禿げです。

まだ出ていませんが、ふしぎな踊りの青年も家系的職業から禿げと言う言葉には結構神経質で髪型はびくびくおどおどしている所が無自覚にあります。ついでに言えば、その辺りの感覚は遺伝的なもので20年に一人くらいの割合で禿げ怖い症候群の人が出ています……それが原因じゃね?

14



「お前さん、ちょっと待って欲しいそうだよ?」

『えぇぇぇぇぇぇ……』

「別にいいじゃない、すごくバランス取れてるよ? そこの人が動いても全然大丈夫でしょ?」

『まあ……こんなのに遅れる程は遅くないけどさぁ……』


 サイズ的にミニマムではあるが、恐らく殺傷能力は高いだろう……普通の人には見る事も触れる事も出来ないのだから基本的には問題ないと思うが。見る事も触れる事も出来ているだろう青年にとって相棒は驚異に違いない。

 外見は、こんなに愛らしいのになあとは思うけれど。

 好みなんてものは、人それぞれと言う事なのだろうと思う事にしている。


『面倒だなぁ……』

「はい、そこで残念そうな顔しなくて良いから。

 んじゃ、そろそろ帰ろうか?」

「え……?」

『はあぁぁぁぁぁぁぁいっ!』


 間延びするしゃべり方がするのが、まあ気にならないかと言えば気になるが。

 そんなものは魔法の言葉「個性」と言うオブラートで包みこんでしまえば良いのだ……もし、限界までイライラしていたらどうなるか判断が付かないけれど。その辺りは相棒にも事前に言ってあるし、その時には直前にも言うつもりだ。いつもそうしてきた。

 だから、今回だって大丈夫。

 何とかなる手段があるのならば、気にする必要などない。


「ちょっと待て!」

「何か用事?」


 文字通り一っ跳びで足元に降り立った相棒を見て、心がほっこりして表情が緩むのが判る。

 だと言うのに、至福の時間を邪魔されるのはどうかと思う……ついでに言えば、恐らく相棒がその気になれば怪我の一つもさせただろうと佳苗でさえ判るのに、その恩人に対してする態度ではないな……とも思ったけれど。

 相手は子供、若い子なんだから駄目。他所のおうちの教育方針に口出ししちゃ駄目……でも、こっちはすごく迷惑かかってる。物凄く迷惑かかってる。頭もすごく痛かったし。


『むっとしてるぅ? むっとしてるぅ? ヤっちゃうぅ?』

「……ううん、そんな価値ないから必要ないよ。

 そんな勿体無くも面倒で後片付けが必要な事なんてしてるくらいなら、とっととおうちに帰ろう?」

『……そうだねぇ、そんな価値なんかないよねぇ』


 どうやら、にやりと相棒は笑ったらしかった。

 名前も知らない青年は、焦った様子で体制を立て直す。


「一応、拉致られたとは言ってもアッパーカットかましちゃったお詫びとしてここまでついて来たんだし。そちらさんも歩くのに支障はないみたいだから、これでチャラで良いよね?」


 喜んでいる相棒は、まるで犬の様に足元をくるくると回ってから器用に体昇りを初めて。どこぞの電気鼠が主人公にするみたいに首を挟み込むように座り、爪を立てない様にしてくれているのだろう頭に刺された痛みを感じる事なく前足が添えられたのが感触で判った。

 人に断りなく昇り始めるのはさて置くとして、爪を立てない様に配慮する事が出来るのは良い事だと思って自然と手が後頭部に回されて指が撫でている感触と。相棒が指に身をこすりつけて来る感触に笑みが零れる。


「良いよね?」


 こちらを、何だかぽかんと口を開けたまま見ている姿と言うのは言ってやった方が良いのだろうかと言う気がするが。先ほどの、部屋に入った時の事を思い返すと何だかと言わずにすごく腹も立つ。

 大人気ないとは思うが、かと言ってここで許すのも良くはないだろう。色々な意味で。


「ソレが俺を転がせたのは?」

「その分については私に言うのは筋違いでしょう、それを言うのならば日本国憲法で証明出来る程度の物証を要望するよ? それが出来る?」


 恐らく出来るわけがないだろうと思いながら佳苗が口にすると、案の定。出来ないらしく青年もものすごく嫌そうな顔をしている……しかして。

 佳苗は思う。

 膝カックンで転がされた青年と、アッパーカットをした為に場違いなホテルまで連行された佳苗。

 どちらの方が割を食ったと言えるだろう?


「いや、ちょっと待て」

「待てと言って待つと思うの? そこまでお人好しに見えるかしら?」

『まぁ、そう見えてもおかしくないと思うけどさぁ……』

「お前さん、一体どっちの味方なんだい……」


 何となくではあるが、佳苗は「もしかして、私が思っているより愛情を感じていないのかしら?」何て考えるだけ無駄な思考に陥ってみる。

 そんな事は、今考えた所で何の意味も無ければ必要もないのだ。

 少なくともの話、今は。

 だが、長年の習慣である「現実逃避」は常に味方でありお荷物だ。


「それだ!」

「何がよ……」


 うっかり、気にしないで帰れば良かったという気になった。

 どうせ、物理的に相棒が青年に危害を加えたのだと証明出来なければ。少なくとも、日本国憲法で佳苗に処罰を下す事など出来るわけはないし。場合によっては名誉棄損で訴える事も出来るかも知れない……。

 年齢差だけを考えれば大人気無いかも知れないが、だからと言って見ず知らずの青年に危害を加えられて泣き寝入りをする必要はあるだろうか? いや、ない。

 等と考えていたのも、良くは無かったのだろう。


「まさか、お前野良なのか……?」

「お前の親の顔が見てみたいわ……!」


 話が通じない……この手の人種を、佳苗は最も毛嫌いしている。

 動物や植物、昆虫などは良い。彼らは原典でる言語形態が異なるのだ、それを愛玩動物(ペット)よろしく勝手に声をかけた所で即座に言語を理解出来るかと言えば、そんな事はない。よほど毎日世話をする人が熱心に教え込むか、双方に学習意欲が無ければ躾なんてものはそうそうに出来るわけは無いのだ。

 佳苗が実家で学生だった頃、飼っていた犬の躾が上手くいかなくて嘆いた時に言われて初めて気づいた事があった。その事もあって、佳苗の実家では犬が亡くなった後で無意味にすぐ次の動物を飼うと言う気になれなかったと言う事がある……今の両親の姿を予知しておけば、佳苗は間違いなくあの時に次の子の話が出たら問答無用で飛びついたに違いないのに。とも思う。


「初対面……でもないけど、失礼ぶちかましまくって許されるのは6歳までだと思わんかね?」

「なんで6歳……」


 流石に、余裕を崩さずにため息をつく相手の事が気になったのだろう。

 青年はかなり、(いぶか)しげな顔をしてくる……この点だけは年齢相応なのだろうかと疑問も出るけれど。それ以前の問題として、佳苗は青年の年齢など知らないので確かめようがないし。確かめた所で気が抜けるだけではないかと言う気がした。


「習い事を始めるのは6年6か月までが望ましいと言われてなあ……それまでに始めると一生忘れないそうだよ。

 それとは関係なく、個人的に我が子もしくは庇護対象者を相手にきちんとした教育もしないと言うのは。一体、どこまで使えなくて腐っていてどうしようもない親なのかと後学までに見てみたい気もするけれど子供を作る予定も未定もさくっと存在しないから全くもって無意味だという現実に、なんかうっかり絶望したから帰ろうそうしよう……」

「いやだから待てって野良!」

「ちっ……」


 己のペースに巻き込んで、そのままフェードアウトしてやろうと画策していたのに足止めをされれば。当然、ただでさえ機嫌が急激に下降一直線だった佳苗の機嫌も角度が鋭角になって行くというものである。

 加えて、足元のもふもふ相棒がお気楽に佳苗の足に向かって「てしてし」してくるから、自然と意識はそちらに向かって目の前の青年の事をうっかり視界やら記憶やら認識から消去してしまいたくなるのだが……先ほどから、どうにも声が脳天に響くような感じで愉快でも無ければ好意的に見る事は大変に膨大な労力を必要とするのが更に腹立たしい……そう、別に親の金を湯水のように無駄に使いまくっているのを平気で行われているのが目の前でどんどん怒りが貯金よろしく積立あげられているのに佳苗自身の貯蓄が目に見えて削られてゆくことを思い出しているからではない……違うったら、違う。


「舌打ちしたっ!?」

「そりゃするでしょうよ」

「何で野良が舌打ちなんてするんだよ!」

「どうしてしないとか思うかなあ……ねえ、お前さん?」

『そりゃ、坊やだからじゃないかなぁ?』

「なるほど、それは名言……」

「何それ」


 ううむ、もしかしてこれは「ギャップ」と言うものだろうか……などと佳苗が思っていると。

 目の前の青年は半目になって、こちらをじぃっと見ている……若いっていいなあとも思いながら「結構名言なんだけどなあ……」などと口にしつつ、内心で少しばかり困ってみた。

 何しろ、目の前の青年は先程から帰りたくてたまらない佳苗を前にして「待て」しか言わないのである。まるで躾けられている犬猫の気分だ。どうせなら毛玉的にもふもふ出来る奴らと相手をしたい……最初は恐怖心に支配されてツンデレよろしく懐くのに時間がかかっても良い。少し寂しいけれど。

 逆に、マイペース・マイウェイな両生類や爬虫類でも良い。亀とヤモリと、種類によっては蛇までなら平気なんじゃないかと言う気がする。飼った事はないけれど。

 魚は、正直に言えばあまり飼うと言う範疇(はんちゅう)に入れたくない。見ていると空腹で無くても食べたくなるからだ。しかも、己で開きだろうがなんだろうがしなくてはならない。

 佳苗は、自覚がある程度には慣れていない作業について普通に不器用だ。


「あああああぁぁぁぁっ! 何なんだよお前は一体、野良なんだろうがっ!」

「帰る家くらいあるわボケ、誰かに飼われてる様に見えるのか阿呆、何を口にしてやがるば……とっとっと。

 何はともあれ、私は君に用事がありません。君が私に用事がある時には『常識として』の事前連絡を要請します。以上」


 佳苗は、一つ心がけている事がある。

 言霊(ことだま)と言う単語を知っているだろうか? 簡潔に言えば「口にした言葉は力を持つ」と言う事だ。微妙なのが、必ずしも実現するとは限らないと言う事で口にした事は「そのままではない形」で叶う事もあれば報酬はきっちり取られる事があると言う、佳苗にしてみれば「サービス悪くない?」と言いたくなる現象を言う。

 しかも、口にした当の本人は必ずしもいつ言霊が実行されたのか認識出来るかと言えば常に出来るわけではないのだ。これは意外と真面目な人にはきついのではないかと言うかする。

 要は、口にした人物の「力」が実行するのに足りているかいないかの差でしかないのではないのかと言う気もすが、だからと言って検証出来るような内容でもない。

 だからこそ、佳苗は自らに「決して口にしてはならない単語」と言うものを心がけている。無意識で出る場合を除いて、意識的に出てしまう言葉は可能な限り良い意味である方が「万が一」の事が起きても罪悪感は少ない。


「とにかく、君の行った事は犯罪行為です。このホテルの従業員、防犯カメラで見ても私が君に好意的な意図があって着いて来た様には見えないと推測できます。故に、ここで暴れてセキュリティを稼働させるのも考慮する用意があります」


 ちなみに、自分でもある程度は暴れる予定だが部屋に損害が出るのは真っ黒もふもふの相棒に頑張って貰う予定だ。


「あぁっ? そんな事したら訴えるぞ手前ぇ……」

「どうやって?」

「んぁ?」

「君に恐喝されて暴行を加えられ、拉致されて連れ込まれて……ここで出さなかったら監禁も追加かしら?

 私は良いのよ? 部屋に損害を出して暴れた所で、それで頭を下げる保護者がいるわけでもないんだし?」


 ついでに言えば、社会的に死亡するかも知れなが首になる会社もない……出来れば、社員を守ってくれる会社に一度くらい就職したかったが、出来なかったものはどうしようもない……思い出すと佳苗の怒気は地味に上昇の一歩を辿るので出来れば下げる時間が欲しいのに。一瞬で下げる方法を、佳苗は知らない。

 瞬間的に怒りがこみ上げる事は基本あまりないのと同じ様に、一度上がった怒りは簡単に収まってくれた試しがないのだ。ピンポイントで怒りのストライクゾーンが狭い弊害だとは思うが、何にでも簡単に怒りを上げる人物と言うのも迷惑だと可能な限り怒りをそらす努力をしてみる。

 怒る事は嫌いだ、何故なら無駄と思えるほどに疲れるから。


「な……それは……」

「どこの誰だか知らない相手、どうやって訴えるの?」

続きます。

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