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誰も知らない勇者紀行。  作者: c/1-0@斜の廃塔。
1:始まりの森。
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1-1:小鳥の見る景色。

=2081字=

 突き抜ける様な青空の元、一羽の小鳥が飛んでいた。

 飛翔する小鳥の下には広大な森が見える。

 小鳥の視線の先には、ぽつん、と小さな穴の様に木が生えていない場所があった。

 小鳥は其処に惹き付けられているかの様に翼を動かす。


 だんだん近付いてくると、その広場の中央に泉がある事に気が付く。


 泉の隣に何かが横たわっている。 

 それが二人の人間である事は、広場の上に来てやっと判った。


 小鳥はパタパタと羽ばたきながら下降し、二人の近くに降り立った。

 そこから二人の内の一人、銀髪の女性に向かって跳ねる。

 そして顔の整った女性の顔の前に立ち、チュンチュンと鳴く。

 銀髪の彼女に起きる気配はなく、スヤスヤと寝息をたてている。

 小鳥は鳴くのを止め、今度は彼女の頬をその小さな嘴でつつき始める。



「ん、んん…………。」


 彼女は頬をつつかれ、煩わしそうな表情を見せる。

 小鳥はつつくのを止め、また先程と同様に鳴き始める。



「…………ぅん。」


 彼女は眠気に呻きながらも、地面に手をついて身を起こす。

 上半身を起こし座っている体勢にはなったが、瞼は閉じており未だ眠たそうである。



「…………眠い。」


 目は開けずに思ったままの事を口に出す。


 小鳥はその間にパタパタと飛んで、起き上がった彼女の肩にとまった。


「…………ん、? 何だ。」


 彼女は肩の重みに気付いたのか、漸く目を開け自らの肩を見る。


「…………鳥、か。ほら、おいで。」


 彼女が手を肩に持ってきて小鳥を促すと、言葉が通じたのか、小鳥は彼女の手の甲に乗ってきた。


 彼女は小鳥を顔の前に持ってきて、ぼんやりと眺めている。




 暫くして頭が冴えてきたのか、周りを見渡し始める。


「…………何処だ、此処は。」


 彼女は見た事の無い景色に、軽く狼狽する。

 そして自分の横にもう一人寝ている事に気が付く。


 隣で寝ている女性は彼女もよく知っている人であった。

 只、顔は全く同じだが、燃える様な赤い髪や戦闘を前提とした服装には現実世界では見覚えがなく、親戚か何かだと言われたら信じてしまいそうであった。



「…………おい、起きろ。」


 銀髪の彼女は、小鳥の乗っていないもう片方の手を使い、赤髪の女性を起こそうとする。



 暫く揺すると赤髪の女性も目を覚ました。


「ふわぁ、……あ、ケンおはよー。」


 彼女も眠たそうではあるが、銀髪の女性よりは目覚めが良さそうである。


「……んにゃ、? ここどこ?」

「俺にも判らん。」


 その容姿に似合わない口調で銀髪の彼女は、眠そうに目を擦る赤髪の彼女に返答する。



「……一つ聞くが、お前、『カエデ』だよな?」

「……? うん、そうだよ?」

「俺の名前が判るか?」

「それ位判るよ、『ケン』でしょ? もしくは『アリア』かな。」


 銀髪の彼女つまりケンの問答に、赤髪の彼女つまりカエデは恙無(ツツガナ)く返答する。



「よし、お前がカエデだという事は判った。

 だが、俺達が今居る此処は一体何処だ?」

「……さぁ?

 って言うかその可愛い小鳥の方が私は気になるんだけど!」

「此処で寝ていた俺をコイツが頬をつついて起こしたらしい。」

「何それ羨ましい!」


 カエデはケンが小鳥に起こしてもらった事が余程羨ましいらしい。

 また地面に寝っ転がって

「さぁ私を起こして!」

 と自分の頬をつつきながらお願いをしている。

 それをケンは手に小鳥を乗せながら冷めた目で見ている訳なのだが。



「俺達は、あの後一体どうなった?

 百階層に居たあのNPCの手をとってからの記憶が一切無い。

 起きたら此処に寝ていた(・・・・)。」

「…………そうだね。」


 カエデは起こしてもらうのを諦めて、しかし起き上がらずにケンに返答する。


「そもそもVR内での睡眠は不可能の筈だ。何故寝られる?」

「寝落ちしたら強制終了するモンね。」

「この小鳥みたいな野生動物も居ない。精々鳴き声や遠吠え程度だ。」

「でも結構な種類あるんだよね。」

[ピー。]

「……お前、逃げないんだな。」

「人懐っこいのかな。」


 小鳥は二人が会話している間もケンの手の甲から逃げずにいる。



「…………ゲームの仕様だと思うか?」

「え?」

「もしかしたら、仕様じゃないかもしれないという事だ。

 例えば、何時の間にか行われていたVR機器への細工。

 だがそれで此処まで仮想世界が綺麗になるとは思えない。」

「そんな簡単にグレードアップ出来たら苦労しないよね。

 

 …………でもそれだったら他に何かある?」

「俺が思うに、これは現実(・・)なんじゃないか?

 どうしても此処が仮想世界だとは思えない。」

「…………え、いやいやいや。それは無いんじゃない?

 異世界転生とか、小説じゃないんだからありえないでしょ。」

「何故有り得ないと言える?

 VR技術すら良く解ってない奴が『転生は不可能。』とは言い切れないだろ。」

「それはそうだけど…………。」


 カエデの言う事もケンは理解はしている。

 だが此処ではケンが正しかった。




 この後二人で小一時間この議論を続けた。


 その議論の内にメニューが開けない事が発覚した。

 つまりログアウトやその他荷物確認等も一切出来ないという事だ。

 よって所持品は現在身に着けている物のみであった。


 結論としては兎に角この森を抜け出してからその時もう一度考えようと言う事になった。









 此処まで飽きずに読んだあなたはいい人です。読まなかった人は時間を無駄にしないいい人です。


 此処からはチンタラ投稿ですが、暇でしたらまたお越し下さい。

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