表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
誰も知らない勇者紀行。  作者: c/1-0@斜の廃塔。
4:対魔族戦争勃発。
37/40

4-4:敵は王都に有り。

 そろそろ遅刻の挨拶がレパートリー尽きて辛い、ホント辛い。


 今回1週間休暇を頂いたので明日も出来れば投稿します。


=2127字=


 次回の視点は未定。

 視点変更[アリア]→[ルーク・F・ラータン]

□□□




 戦線は未だ変化なく、双方睨み合いが続いている。

 このラータン王国の軍勢なら勝利を納められるだろうが、殺戮はできるだけ避けたいとルークは考えていた。


 昼の刻過ぎから始まった膠着状態は、空が赤く染まり、太陽が山々に隠れるまで続く。


「……うむ、そろそろ野営の準備をさせろ。

 彼方も疲労もあり、休息が欲しい筈。易々襲ってはこまい。」

「は、各員に伝達します。」


 側近のプラントが今度は軍内の伝令係へ簡潔な通達を送る。

『野営準備せよ、精気を養い、本戦に備えん。』

 そしてその後に腰に下げていた汽笛を大きく鳴らした。



 少しすると、軍の前線部分に居た先鋒部隊が引き始め、代わりに柵や櫓を建てる為に建築部隊が木材を持って現れる。

 素早く木材とロープのみで組み上げていく彼らは、戦闘部隊ではない。

 建築関係に特化した部隊で、ありとあらゆる場所に驚異的な速度で砦を組み上げるエリート集団だ。

 

(…………やはり、向こうは仕掛けてこないか。

 夜襲には警戒が要るが、一先ずは緊張を緩めてもいいか。)


 此方が柵などで防壁を造っていると、帝国軍側でも警戒態勢を解き、陣を敷き始めた。



「殿下、テントの用意ができました。」

「…………判った、今行く。」 


 馬を家来に預け、豪華に設えられたテントに向かう。

 周りの物より非常に大きいそのテントは、王太子である彼の為だけに建てられた物だ。


(又か、こんな物にまで無駄な装飾を…………。)


 昔は怒りも覚えた父親の行動だが、今では諦めを感じていた。

 軽蔑でさえない、呆れ。ルークはもう数年前から己の父親に一切の希望を持っていない。


 付人を外に追いやり、1人になってテントに入る。

 重い鎧を脱ぎ、肌着だけになってベッドに倒れ込む。


(体裁を保つのも案外疲れるな……。

 城では常に一人になる事もできるが、此処ではな。)


 戦争に駆り出される事をルークはその話が来る前から拒否したい感情があった。

 しかし、己の我儘を貫いて国が滅びるのは国民に申し訳が立たない。


(愚兄が城に残っていれば大将の座を押し付けられると言うものを。

 ……奴が必要だと思ったのは久し振りだな。)


 ルークの兄、つまり第一王子が現在行方不明の為ルークが王太子となっているが、彼にとって王太子の肩書きは無用の長物、どうせ官僚のトップが政治を乗っ取るのだと、何も期待をしてなかった。

 恐らく彼が即位しようと、直ぐに王位を譲り、何処か遠くで隠居でもするのではないだろうか。

 側近のプラントでさえこのような事をルークが考えていると知らない。



 酒も飲まず、ただハリボテの屋根を仰ぎ見ていたルークだったが、誰かが走る足音が聞こえた。

 この軍では緊急時以外では走ってはならないと規則されているので、ルークは直ぐに起き上がった。

 緊急ならばまず己に通達が来るからだ。


「ルーク殿下っ! 急ぎお知らせすべき事が御座います!」

「慌てるな、冷静沈着に現状を報告せよ。」


 垂れ幕を翻し、許可も取らずに入室したのはプラントであった。


「……はっ。では本題から入らせて頂きます。

 『我が王都に敵影あり、敵は未確認のモンスター及び魔物多数、帝国軍に非ず!』」

「……何だと、情報元は何処だ。」

「近衛軍大将、ライト・クラリウスより直接の伝達です。」

「彼奴か、…………信じ難いが事実と言う事か。」

「その様です。」


 ラータン王国首都、通称王都はその周囲を山岳、森、海に囲まれており、交通可能な街道は一つしかない。

 よって帝国軍に裏を欠かれること先ずない。

 しかし、モンスターなどへの対策は立地を鑑みれば判るように、しっかりとした結界や防衛拠点など、様々な策が張り巡らされており、これの心配もない筈だった。


 だがこの伝達はどうだ。

 ルークが極少数ながら信頼している近衛軍大将ライト・クラリウスが嘘を付くことは万に一つもない。それこそ王都が攻め込まれる事よりずっと。

 だからこそ今ルークは眼を閉じたのだ。


(現在は夕陽も沈み、暗くなってきた頃。敵は我々と同じく夜襲の警戒をしてよう。

 軍の総人員は同等、個人の能力を計算に入れれば此方側の有利。

 只、王都救援の出せば流石に此方も危うい。

 恐らく帝国側から攻め込む事はないだろうが、追撃は免れないだろう。)


 王都が陥落すれば戦争どころではなくなる。

 ルークにとってそれ自体はどうでもいい事だが、問題はそれが帝国軍側に知られた場合だ。

 躊躇なく侵攻され、モンスターなどとの挟み撃ちとなる可能性がある。


(撤退すべきなのはいいが、此処まで来て急に兵を退けば恐らく帝国に勘づかれる。

 追撃されないよう、少し時間を稼げればいいんだが、うむ……。)


 黙っていたプラントが口を開く。


「此方が情報を得たにも関わらず、帝国軍が何も仕掛けてこないと言う事は、確かにこの事件は帝国の仕業ではないのでしょう。

 しかし敵は敵、軍の半数を割き、王都に向かわせては。」

「……いや、それば愚策だ。」


 眼を開き、反論をする。


「此処で中途半端に半数を残しても無駄だ。

 無意味に命を散らし、兵を減らすだけだろう。」

「では如何しますか。」

「策は既に完成した。残るは実行のみ。

 伝令を発する、用意してくれ。」

「は、了解しました。」


 ルークは眼を閉じ、手を組んで、そして淡々と話し始めた。


 明日9/5(土)[4-5]投稿予定。

 来なかったら9/11(金)です。でも明日も必ずや書いてみせます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ