2-6:一次試験。
小説と2525を見ながら親方と提督を兼業する事は楽しいが、小説を書く時間は流石に確保できないので、提督は秘書艦に熊野据えて木曜日休業です。
=2395字=
翌日、二人はとある施設に来ていた。
そこには老若男女、割合は若者が多いか、十数もの人が集まっていた。
彼らは三列ある受付の列に並んでいる。
その多くが真新しい武具を身に着け、自分の番は未だかと意気込んでいる。
此処は冒険者学校入学試験の会場だ。
そして彼らが今回行われる入学試験の受験者である。
「思ったより人は多くないな。」
「高校受験とかは数百人位いたよね。
余り人気じゃないのかなぁ?」
「冒険者志望なら必ず受けるのだから、それは無い。」
「じゃあ冒険者が不人気? でもギルドは結構繁盛してたしなぁ……。」
実際は月一で試験があるという環境が、決意の揺らぎや受験者の分散に繋がっているからなのだが、それを教えてくれる人は此処にはいない。
アリア達は、『1番受付』と書いた看板を頼りに、その列に加わる。
列の先では、受付が簡単な質疑応答をし、受験会場となる部屋を振り分けているようだ。
少ししてアリアの番が回ってきた。
「おはようございます。
では、幾つか質問に答えてください。」
初めに名前年齢など、個人情報を答える。
受付係は質問をしながらその情報を書類に書き出す。
次に今何処に住んでいるのかなど、冒険者として働けるのかを聞かれる。
疾病持ちなどは程度によっては落とされることがある。
「では最後に、アリアさんは初の受験ということなので『魔力量測定』をして貰います。」
「『魔力量測定』……ですか?」
「はい、この魔性石に触れて貰うことで、色の具合である程度魔力量が測れるんです。」
受付のカウンターに置いてある拳程の石を見る。
紫色に輝くそれを、アリアは手に取った。
「…………変わりませんね。
言いにくいのですが、つまり貴女の魔力量は、0ということになります。」
「いえ、知っていましたから。」
「そうですか……。
いえ、失礼しました。
それではこの書類を持って『1』と書いた部屋の前でお待ちください。
順番が来ましたら中の者がお呼びします。」
カエデに一言声をかけてから、アリアは言われた通り『1』の部屋に向かう。
数分ほどドアの前で待っていると、
「次の方、中へお入りください。」
呼ばれたのでノックをしてからドアを開け、その部屋に踏み入れた。
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一次試験が終わり、アリアは会場の奥にある武闘場に通されていた。
周りにいるのは十名ほど、カエデは未だ面接中のようだ。
先に来た者から順に鍵を渡され、ロッカーに不要物や武具を置くように指示をされた。
武闘場はかなり広く造られており、十数名が同時に戦闘を行ったとしても問題は無さそうである。
煉瓦造りであり、強度もあるだろう。
尤も、魔法的な強化も施してあるので、空の見える天井でさえ貫けない程強固である為、建材は余り関係ない。
武闘場にある木製のベンチに座っていると、通用口からカエデが出てくるのが見えた。
しかしカエデの顔に、遠目でも判るほど不安が出ている。
キョロキョロしているかと思えば、アリアを見付けた途端顔を綻ばせ、其方に駆けてく。
「よかった~、アリアも大丈夫だったんだぁ……。」
「いや、元々あの試験は余り関係ないと事前に聞いていただろ。
そんなに不安がる必要が何処にある?」
「だってぇ……。
もし片方だけ受かったら、私独りきりになっちゃうんだよ?
そんな事になったらもう私生きていける気がしない。」
「有り得ない事を悩んでどうする。
あとカエデ、お前私が居ないと生きていけないってのはどうなんだ…………、いや、確かにこの世界で一人暮らしするのは些か難しいか。」
「『若くして孤独死』って朝刊にデカデカと載せられるんだ……。
…………あれこれって有名人になれるんじゃ?」
先程までの不安は何処へやら、カエデは顎に手を当てて真剣に悩んでいる。
「全世界に私の顔写真が配られる…………うん、いいかもしれない。」
「…………。」
アリアは(この世界に新聞あるのか?)と思ったが、面倒になったのか、何も言わなかった。
二人並んでベンチに座っていると、
「一次試験が終了しましたので、これから二次試験を行いたいと思います。
受験者は此方にお集まりください。」
係りの者が拡声器を使い武闘場の一角に受験者を集合させる。
「二次試験は学校教師との武具及び魔法等を使用しない無手での戦闘となります。
合格判定に勝敗は関係いたしませんので、受験者が負けたとしても合格の可能性はあります。
そこの所、しっかりとご確認ください。
毎回聞いてないとか言ってくる莫迦が居てこっちも困ってるんですよ。」
受験者たちが皆集まった所で、淡々と係りの者は二次試験の説明始める。
愚痴が混じっているが、気にしてはいけない。言いたくなる時が誰だってあるのだ。
「では、質問はありますか。無ければこのまま試験に移りたいと思います。
あとで質問されても無視しますから。言いたい事があるなら今のうちに。」
「一つ、質問いいですか?」
「どうぞ、18歳、アリアさん。」
手を挙げたアリアを指差し、質問を促す。
一方アリアは、
(この人、書類も見ず私の名前を…………この短時間で憶えたのか?)
と別の事を質問したくなっていた。
「はい、先程の話から察すると、相手の教師を倒した場合は合格という事でしょうか?」
「ええ、そうです。
しかし教師は熟練の冒険者として今も現役です。生半可な実力では勝てませんから、勝利で合格したものは殆ど居ませんよ?」
「そうですか、判りました、有難うございます。」
[ふ……]とアリアが小さく笑ったのに気が付いたのは、隣のカエデだけだった。
少ししてアリアが何故笑ったかに気づいたカエデは、若干不安な表情になっていた。
「やめといた方がいいと思うんだけど…………。」
そっと隣のアリアに囁く。
「…………何故?」
「…………まぁ、アリアがいいならいいんだけど。
私は忠告したからね!」
(…………何の忠告なんだ?)
カエデの忠告を聞いても、アリアはこれから行う事に対しての短所を見出せなかった。
一週間後4/24[2-7]投稿予定。
最近睡眠不足で辛いけど書きます。




