0-1:始まりは何時も静寂。
どうも初めまして。
この小説には作者の感性が多分に含まれておりますので、どうぞお暇な時に適量服用して下さい。
とは言いつつも欲望はなるべく抑えて書きます。ご安心を。
感想くれたら必ず返事書きます(失踪してなければ)
=3017字=
↑この様にしてその話の文字数(空白・改行含まない)を表示しておきます。
作者の文字数管理の適当具合が楽しめます。
その日は雲一つない晴天だった。
このような日であるにも拘らず、この話の主人公たる彼は今日自室から一歩も出ていない。
しかし彼の目の前には広大な草原が続いている。
この矛盾を生み出した科学技術。
それは『Virtual Reality』略して『VR』と呼ばれるものである。
まぁこれを読んでいる人の多くは知っているのではないだろうか。
しかし一応説明はしておこう。
人間の感覚とは神経を通し脳へ伝えられる。
その時使われる信号は電気である。
電気は線が無くても伝える事ができる。
この事を使い、脳にダミーの電気信号を送るのだ。
視覚をジャックし、光を。
聴覚をジャックし、音を。
触覚をジャックし、感覚を。
五感を全てジャックすれば、新しい世界にその人間は降り立つ事になる。
しかし未だ人間の全ては解明されていない。
故に触覚や味覚など、まだまだ改良の余地があり、研究は日々行われている。
さて話を戻そう。
彼が今草原に立っているのはVRの世界であるのは説明した。
しかしVRの世界にも様々ある。
彼が居る世界はMMOである。
多人数同時参加型オンラインと言えば分かりやすいだろうか。
戦ってLv.を上げ、世界を旅するゲーム。
彼はその中でもトップランカーであった。
此処で過去形を使ったのは、彼が最近ランキングを上げる為のポイントを稼いでおらず、現在のランクは若干落ちているからである。
その間何をしていたかは、また今度話す事にしよう。
「……久し振りだな、此処に来るのも。」
彼がこの様な事を言うのも無理は無い。
何せ彼が此処に来たのは約半年振りであるからだ。
とは言えその間このゲームをやっていないと言う訳ではないのだが。
「…………やっと来たのか。30分の遅刻だ。」
「ゴメン! ちょっと色々頼まれちゃって。
それにケンなら許してくれるし。」
「別に怒ってもいいのだが?」
「でも怒らないじゃん?」
「まぁ言った所で無駄だからな。」
彼女は彼と旧知の仲であり、このゲームを始めたのも同時期である。
そして『ケン』と言うのは彼女が彼に付けた愛称である。
「……まぁ遅れて来たのは許容しよう。
しかしだ、ゲームの中でまで『ケン』と呼ばないでくれ。
如何考えてもこの容姿にそれは似合わない。」
「呼びやすいからいいじゃん。」
「……二人きりの時だけにしてくれ。」
「はーい。
…………ていうかさ、それをケンに言われたくないんだけど。」
「別に普通の範囲内ではないのか。」
「いやぁ、なかなか居ないよ俺っ娘とか。」
「確かに遭った事はないな。」
「でしょ?」
彼のアバター、実は女性である。
勿論彼自身は男性なのだが、このゲームでは男女どちらかのアバターでしか就く事の出来ない職業があった為、彼は課金アイテムを使って時折女性アバターを使っていたのだ。
まぁその専用職業とは言っても他の一般的な職業に同様の物があるので、極めようとでもしない限りは如何でも良いのだが。
彼らがこの『無限草原』と言うエリアに来たのには理由がある。
昨日、このゲームには約一年ぶりとなるアップデートが行われた。
一年間アップデートしていないと言うのに、このゲームは世界で圧倒的人気を誇り続けてきた。
幾ら攻略しても次のエリアが出て来る、魔物モンスター図鑑も未だ完全に埋めた人は報告されていないなど、この圧倒的とも言えるゲームの広大さがその人気を支えてきた。
この様なゲームの運営が『アップデートをするから。』と言う報告をしたとくれば。
そう、世界中のプレイヤーがこの情報を聞きつけ一斉にログインして来たのだ。
そうなればサーバに負荷が掛かりゲーム全体が止まる事も懸念されていたのだが、そこは世界最高のゲーム会社、一切操作性に影響は無かった。
さて、その大々的アップデート、その内容とは。
1つ、魔物モンスターの種類拡張。
2つ、エリアの拡大及び新エリアの開放。
未だ全てを網羅していない人が殆どであると言うのに、内容が上級者向けだと思うかも知れない。
しかしこの運営はしっかり様々なLv.に合わせてアップデートを行っていた為特に不安は出なかった。
このアップデートの1つが彼らが此処に来た理由である。
この草原に新しいエリアへの入り口が造られたのだ。
その名は『初めからもう一度』。
この名前の通りこのエリアは、足を踏み入れたと同時にLv.が初期化され、徐々にLv.を上げながら階層を上がらなくてはならない。
通常のエリアより多くの経験地を得られる為、Lv.自体は簡単に上がるようだ。
しかしエリアを一度出てしまうと再入場時にLv.がまたリセットされてしまう。
つまり一度入ると出られない仕組みである。
あと、このエリア内では自身のステータスを閲覧することが出来ない。
エリア外に出ないとLv.の上昇具合などのステータスが判らないのだ。
「じゃあ行くぞ。」
「りょーかい!」
二人は軽い口調で会話をしつつ、『初めからもう一度』に向かった。
さて、此処で彼らについて話そう。
彼の名は歌詠健一。
かなり特殊な苗字だが、先祖が短歌などを詠む人として有名だったらしい。
元々身体能力が高く、コントローラーで操作するゲームよりもVRは合っていたらしい。
現在のアバターは前著の通り女性である。
名前は『アリア』。
腰まで伸びた流れる様な銀髪が特徴的である。
瞳も共に銀であり、冷たく且つ深い光を放っている。
服装は至ってシンプルな物で、動きやすさを重視している。
可愛いと言うよりは格好良いと言うべきだろう。
彼女は山本楓。
彼とは子供の頃からの付き合いで、幼馴染と言っていいだろう。
このゲームに彼を誘ったのは彼女である。
始めたのは二人とも同時期なのだが、彼女のランクは一般人の部類である。
彼女のアバターは勿論女性である。
名前はそのまま『カエデ』。
容姿は名の通りの楓の様な燃える赤髪と輝く瞳が先ず目に付く。
装備は上半身は腕甲のない紅い線の入った鎧。
下半身は白のスカートで、膝などの関節には各所別途に装甲を着けている。
「ところでさぁ。」
「何だ。」
「その職業って何? 私初めて見たんだけど。」
「『結界術師』だ。確かに余りメジャーな職業ではなかったか。」
このゲームは二の腕に職業毎に異なる模様が印されている為、印を知っていれば見ただけでその人の職業が判る。
「へー、そんな職業あったんだ。
…………強いの?」
「汎用性があって使い易いからな、俺自身は気に入っている。
お前のは……『聖騎士』か。
騎士の上位職だな。」
このゲームには『職業』がこれでもかと搭載されている。
そのお陰と言うべきか、上位ランク者であればあるほど職業がダブる事は先ずないと言われている。
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「じゃあ開けるぞ。」
彼らは『無限平原』のある場所、つまり『初めからもう一度』への入り口までやって来た。
そこの周りには大きな石が幾つも転がっており、太古の遺跡の様な雰囲気も漂っている。
その中央に他の物とは大きさが圧倒的に異なる石の扉が佇んでいた。
彼はその扉に右掌を押し当てる。
すると、扉は重さを感じさせる事なく勝手に開いていった。
開いた扉の向こうには夜空を思い浮かべる深い暗闇が広がっている。
「なんか入る前から大変そうなエリアの気がして来たんだけど………!」
「気のせいだ、行くぞ。」
「あ、ちょっと待ってよー!」
彼らは扉をくぐり『初めからもう一度』へ足を踏み入れた。
暗闇に呑まれた彼らを見届けた扉は、そっとその入り口を閉じた。
4話までは一日毎に投稿します。
2014/11/13 12時に0-2
2014/11/14 12時に0-3
2014/11/15 12時に1-1
です。
 




