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Look at me

「私を見て下さい」


 フィリアは顔をあげて、彼を見た。彼は蒼白な顔をして、こちらを見ていた。

 ……やっぱり。やっぱり、あなたは私に誰かを重ねて見ていたのね。私が身寄りのない魔女であることを、利用して。気付いていたけど、私を必要としてくれるのなら、よかった。でも、もっと大切なことに、気付いてしまったから。



 国境に程近い、平穏な村。都から遠く離れたこの村に、突然の客が訪れた。突然村に現れた異色に、人々は慌てて自分の家に帰って行く。それも当然だろう。彼らが乗ってきた馬車には、大きな紋章。見た事もないくらい豪華な服を纏っている彼らは、人々にとって、敵以外の何者でもない。家の窓々から鋭い視線が飛んで来ているが、彼らは全く気にも留めずに、村の真ん中を通る道を静かに歩き始めた。


「いらっしゃいませ」


 からんからんっ、と軽く歌うような鈴の音がして、フィリアは本から顔をあげた。見た目よりも大人びた笑顔で、異色の客を迎える。そして、店の外の気配の変化を感じ、本を棚に戻して立ち上がった。


「どういったご用件でしょう?」


 あくまでも、冷静に。フィリアは小さく深呼吸して、いつも通りの言葉を連ねる。腰に剣を携えた男が一歩前に出て、軽く頭を下げて言った。


「私は、クライドと申します。王子殿下の側近をしております」

「……ここは、ただの薬屋ですが、何かございましたか?」

「殿下よりあなたへの令状を托された故。こちらでございます」


 クライドは後ろの従者から一通の封筒を受け取り、フィリアに差し出した。フィリアは恐る恐るそれを受け取る。暫くそれを眺めていると、次第に『早く見ろ』とでも言いたいような視線を感じる。フィリアは一度会釈してから、ペーパーナイフで封を切った。


「……これは」


 手紙を読んで、フィリアは息を呑む。中には、来城を促すようなことが記されていた。促す、と言っても、王子からの言葉。逆らうことは許されない。絶対の言葉。


「フィリア様には、私どもと一緒に来て頂きます。尚、ここにはお戻りになることが出来ないかもしれませんので」

「……お断りします」

「はい?」


 予想外の返答に、クライドと後ろの従者たちは目を丸くしてこちらを見た。フィリアは笑顔を崩さないまま、続ける。


「私はこの村の魔女です。ここを離れるわけにはいきませんので。お帰り下さい」


 申し訳ありませんが、と言いながら、手紙を封筒に戻して、クライドに返した。そして、何事もなかったように棚から本を取り出して、また読み始めた。


「フィリア様っ!」

「……私を呼び寄せたいのなら、自分で迎えに来なさい、と。殿下にお伝えください」


 それだけ言って、フィリアは読書に没頭する。それ以降、クライドのどんな言葉にも反応しなかった。これでは話にならないと思ったのか、それとも、こんな女を城に連れて行けないと思ったのか。暫くして、彼らは店を静かに出て行った。


 *


「……で、何のご用でしょうか」

「お前が迎えに来いと言うから、来たまでだが」


 来るなよ、と突っ込みたくなるのを堪えて、フィリアは満面の笑みで彼を出迎えた。窓という窓から村人が覗いているから、下手には動けない。


「こちらが、ラドフォード国第一王子、アルフレッド・エイデン・ラドフォード殿下でございます」


 先日来ていたクライドという側近が、この妙に浮いている彼を紹介した。後ろの従者は扉の向こうとこちらの監視をしている。アルフレッドは、不敵に笑みを見せながら、クライドを後ろに下がらせた。


「私に、付いて来い」


 拒否を与えない、絶対の言葉。フィリアと同じ年頃の普通の少女なら、喜んで付いていくだろう。アルフレッドもそう変わらない年頃だから。その上、貴族よりも品高い王族。藍色の髪に、蒼い瞳。憧れである彼に、誘われるなんて。……でも、フィリアは頷いて付いて行くことが出来なかった。


「申し訳ありませんが、付いて行くことは出来ません」

「フィリア様っ?」


 クライドが驚いて顔をあげる。後ろの従者も窓の外の村人も驚いて、目を丸くしていた。当のフィリアは笑顔を崩さず、アルフレッドも笑みを零したままである。


「何故だ。私の言葉に逆らう程の理由があるのか」

「えぇ。あなたは……殿下は」


 フィリアはそこで一旦言葉を止めて、窓の外に視線をやった。年老いた村人達が手を合わせて、何かを唱えている。きっと、フィリアに重い罰がくだらないようにだろう。そんな優しさを感じながら、フィリアはもう一度アルフレッドに満面の笑みを向けた。


「殿下は、誰に重ねて私を見ているのです?」


 沈黙が訪れる。これにはアルフレッドも驚いたようで、言葉を詰まらせていた。


「それに、私はこの村の魔女です。ここを離れるわけにはいきません」


 その場に異色と化したフィリアの笑顔は、アルフレッドが店を出るまで、ずっと続いていた。


 アルフレッドが村を出て、やっとフィリアは笑顔を崩した。大きくため息をつくと、村の子供達が心配そうに駆け寄ってくる。


「ふぃりあさま、大丈夫?」

「おうじさま、迎えに来てくれたのに、もったいないよぉ!」


 幼い姉妹がフィリアのスカートの裾を引っ張りながら、言った。他の子供達も思い思いの言葉で、フィリアを励まそうとしてくれた。


「ありがとう、みんな」


 フィリアは薄く涙を浮かべた。やっぱりこの村でいたい。どんなに素敵な王子が迎えに来ても、村から離れることは考えられない。フィリアはしゃがみ込んで、一人一人子供達を抱き締めていった。


 *


 あれからすぐだった。原因はどう考えても、フィリア。日増しに、村人の厳しい視線が強くなっていく。毎日遊びに来ていた子供達も、ぱたりと来なくなった。それでも、フィリアは笑顔を崩さなかった。村人のために、店を開け続けた。


「今日も、売れ残り」


 大量に残った薬草を台所で焼く。勿体無いのは分かっているが、日持ちの悪い薬草だから仕方ない。灰になった薬草を水に流そうと、蛇口を捻った。

 ちょろちょろとしか出ない水。アルフレッドがここに来てから、少しずつ水の量が減っていた。あの視線からして、他の家もそうなのであろう。分かってる。きっと、アルフレッドが腹いせに水を止めようとしていることなんて。


「……そろそろ潮時かな」


 フィリアは蛇口を閉めながら、小さく呟いた。多分気配を辿れば、アルフレッドを探し出せるだろう。まだ、この近くにいるはずだ。水道管理館に程近い場所に。


「ファーラン」

「何さ、フィリア」


 裏口から黒猫が入って来て、棚の上に飛び乗った。白い羽がはらりと落ちる。


「この村から出るよ」

「あの王子の所にいくのかい?」

「取りあえず、行くしかないでしょ」


 フィリアはエプロンを外しながら、ファーランに目を向けて笑った。


「それからは、その時に考えるわ」

「……了解」


 それだけ答えて、ファーランは毛繕いを始めた。フィリアはそっと電気を消して、台所を後にした。……ファーランの心配そうな視線に気付かないまま。


 *


 早朝、フィリアは必要最低限のものを鞄に詰めて、店の裏口からそっと出た。村の入り口まで行くと、ファーランが眠たそうに座っている。


「おはよう、フィリア。よく眠れたかい?」

「ちょっとね。……行きましょうか」


 フィリアは一度村を振り返ってから、歩き出した。ファーランも同じように振り返りながら、フィリアの後に続いていった。さよなら、大切な人たち。新しい魔女が現れることを祈って。


 水道管理館まで行くと、案の定そこには見覚えのある馬車。紋章からして、アルフレッドらに間違いない。フィリアは手に力を込めた。


「大丈夫か? フィリア」

「どうかした?」

「いや……何でもない」


 ファーランはフィリアから目を逸らすと、馬車の上に飛び乗った。フィリアも後を追って、馬車に近づく。馬車に触れようと手を伸ばしたところで、背後に冷たい気配を感じた。


「下賤者がそれに触れるな」

「……申し訳ございません。初めて見たものですから、つい」


 振り返って、目の前にあったものにぞっとした。鋭い槍の先。これに刺されたら、相当深い傷を負うだろう。彼が先走らなかったことに、小さく感謝する。外の異変に気付いたのか、館の中から人が出てきた。クライドを先頭に、アルフレッドも出てきた。上手く行ったことに、ほっと笑みを浮かべる。取り敢えず、こんな小さなことに王子が出て来るのは謎だが。多分予想していたのだろう、フィリアが来ることを。


「槍を下ろせ」

「ですが、殿下」

「そいつは私の客だ」


 アルフレッドが不機嫌そうにそう言うと、彼は慌ててフィリアから離れた。向けられていた槍が下ろされて、小さく息を吐いた。


「ようこそ、フィリア。待っていたよ」

「お待たせして、申し訳ございません」

「クライド、水道制限を解除して来い。……フィリア、先に馬車に乗っておこうか」


 アルフレッドはフィリアの手を取って、馬車に乗り込んだ。フィリアは大人しくそれに従う。アルフレッドの隣に座りながら、馬車の窓から見える村の未来を思った。


「フィリアなら来てくれると思った」

「……一つ、お聞きしても構いませんか」

「どうぞ。何でも教えてあげる」


 店に来た時と全く違うアルファードに戸惑いながら、恐る恐るフィリアは顔をあげた。目の前に座るクライドの様子からして、これも彼の一面なのだろう。取り敢えず、気が変になったわけでは無さそうだ。


「殿下は、誰と私を重ねていらっしゃるのですか」

「……誰とも重ねてないけど。フィリアはフィリアだろう?」

「先日失踪されたクラリッサ姫ですか?」


 フィリアがそう尋ねると、クライドの表情が明らかに変わった。アルフレッドも一瞬息を詰まらせたが、何でもなかったように微笑んでいる。


「クラリッサ姫のことを気にして入るの? 大丈夫だよ、俺はフィリアしか見ていない」


 嘘だ、と思った。アルフレッドは、フィリアではなく記憶を見つめている。懐かしそうなその視線が、そう物語っている。フィリアにその目が向けられたことは一度もない。そして……これからもないだろう。


「クラリッサ様は」


 フィリアは黙り込んだ。アルフレッドが心配そうに声を掛けてくれたが、何でもないと首を振って、話題を逸らした。……まだ、あのことは言うべきではない。時間はあと少し残っているから。


 *


 城に着くと、挨拶もそこそこにして、すぐに部屋に通された。王子の私室と程近いその部屋は、きっとクラリッサ姫が使っていたものだろう。埃一つないその部屋は、クラリッサ姫の帰りを待ち望んでいるから。鏡台や衣装棚に残っているのは、全てクラリッサ姫のもの。


「こんな部屋に通すなんて、最低な王子だね」


 ファーランがぼそりと言った言葉に、フィリアは足を止めた。クラリッサ姫の面影が残るこの部屋の何処に、フィリアの居場所があるだろうか。フィリアはドアの前に立ち止まったまま、その場から動けなかった。


「部屋は気に入ってくれた?」


 押しつぶされそうな気がして部屋から出ると、アルフレッドがドアの前の壁に持たれかかっていた。フィリアは一瞬怯えたような表情を見せて、言葉を詰まらせる。そんなフィリアをアルフレッドは怪訝そうに見た。


「不都合でもあった?」

「い、いえ。とても素敵な部屋を有難うございます。とても……気に入りました」

「そう。それならよかった」


 ほっとしたような笑みを見せて、アルフレッドはフィリアの髪に触れた。肩までしかない短い髪は、すぐにアルフレッドの手から落ちて行く。それをとても虚しそうに見つめるアルフレッドに、フィリアは耐えられなかった。


「どうして、私を重ねるのですか?」

「え?」

「私はクラリッサ姫ではありません。ただのフィリアです。クラリッサ姫じゃ、ありません」


 もう一度触れてきた手を振り払って、フィリアはアルフレッドから距離を取った。とん、と背中に壁が当たる。


「私を、見てください」


 フィリアがそう言うと、アルフレッドは顔を青くした。やっと気付いたのだろうか。やっと、自分の犯した間違いに気付いたのだろうか。フィリアは目を逸らした。


「……俺はフィリアを見ているっ!」


 アルフレッドはそう叫んで、フィリアの顔の両側に手を付いた。その勢いにフィリアは身を震わせて、アルフレッドを見上げた。顔を蒼白にしたまま、睨みつけてくるアルフレッドは少しも怖くなかった。


「見ていません。あなたが見ているのは、クラリッサ姫」

「違うっ」

「違いません。クラリッサ姫が帰ってきたら、私は用無しでしょう?」


 いつか捨てられると分かっていながら、ここに留まる程強くはない。それなら、早くここから逃げなくちゃいけない。ここから、あなたから、離れなきゃいけない。


「私は、クラリッサ姫にはなれません」

「やめろっ! 次にその言葉を話したら、お前に罰を与えるっ」

「では、与えてください。飛びっきりの罰を」

「え?」


 目を丸くするアルファードに優しく微笑んで、まだ言わないと決めた言葉を紡いだ。


「クラリッサ姫がお戻りになられます。もう、すぐ」


 *


 その夜。クラリッサ姫は城に戻ってきた。

 その知らせを聞いて、フィリアはそっと部屋を出た。廊下は慌しく、侍女や従者が走り回っている。アルフレッドはもう行ったのだろうか。クラリッサ姫に会ったのだろうか。そんなことを漠然と思いながら、皆に紛れて廊下を進んだ。出入りの激しい部屋を見つけて、フィリアは足を止める。ここに、彼女が、彼が。


「フィリア様っ」


 部屋に近づこうとした時、後ろから声を掛けられて、慌ててそこから離れた。振り返ると、息を切らせたクライドが汗を滴らせながら立っていた。


「どうか、しましたか?」

「行ってはなりません。殿下の命令です」


 決して部屋に入れないように。決して話を聞かれないように。アルフレッドはそう言ったのだと。クライドはフィリアを部屋に送りながら、そう言った。


「フィリア様はご心配なさらないで下さい。あと……殿下から離れないでください」

「何故、ですか」


 クラリッサ姫が帰ってきたのなら、フィリアは離れるべきだ。それなのに、何故。クライドは少し考え込んでから、重たい口を開いた。


「殿下は、クラリッサ姫がここにいらっしゃる前から、あなたをお探しになっていました。……逆なのです。殿下はクラリッサ姫に、あなたを重ねていたのですよ」


 訳が分からない。

 クライドは新しい部屋に案内してから、すぐにアルフレッドの下に帰ってしまった。前の部屋と同じく埃一つない部屋だが、クラリッサ姫の面影は全くない。だから、安心してソファに腰掛けることが出来た。


 *


 落ち着いてから、先程のクライドの台詞を考えた。どういうことかさっぱり分からない。アルフレッドを見たのは、あの時が初めてだったはず。それ以前に、見かけることがあったのだろうか。こっちが気付かない間に、彼の目に映る機会があったのだろうか。


「どうしたんだい、そんなに眉間に皺を寄せて」


 ファーランがベランダから部屋に入ってくる。……ファーランなら知っているだろうか。ファーランはフィリアの母親の猫だった。フィリアの過去を誰よりも知っているだろう。


「ファーラン、私、殿下にお会いしたことがあるの?」

「それは、とても知りたいことなのかい?」


 フィリアは大きく頷いた。ファーランは小さくため息をつくと、ソファに飛び乗って、フィリアの隣に座った。


「フィリアは、王子のことをどう思っている? それが条件だ」

「どうって……そうね、とても弱く見えるわ。支えてあげたくなる」

「フィリアは、王子が好きかい? ……もちろん、恋愛感情として、だ」


 フィリアは首を傾げた。どうして、それが過去を知る条件になるのだろう。過去を知ると、どうなるのだろう。アルフレッドに何か起きるのだろうか。それとも……アルフレッドの傍にいなければならない何かを得るのだろうか。


「別に関係ないけどね。一応母親代わりとして、知っておきたいじゃないか」


 ファーランはフィリアの気持ちを悟ったのか、笑いながらそう言った。


「好き、なのかしら。でも、私を見て欲しいとは思った」

「じゃぁ、大丈夫だね。……そうだよ、フィリアと王子は一度だけ会ったことがある。フィリアの両親が死んだのは、王子のせいだからね」

「王子のせい?」

「王子が城を抜け出して、フィリアの両親に会いに行った時、反逆グループに運悪く見つかってね。王子は何とか逃げ帰れたけど、反逆グループの足止めをしていた二人はやられてしまった」


 ドアが閉まる音がして、フィリアはそちらに顔を向けた。そこには、腕を組んだアルフレッドが薄い笑みを浮かべて立っていた。


「その通り、だよ」

「これはこれは、王子。元気で何より」


 ファーランはソファから飛び降りると、アルフレッドの前まで歩み寄り、頭を下げた。それに倣って、アルフレッドも頭を下げる。


「あの時は申し訳ありませんでした」

「いや、気にすることはないよ。あの運命は、前から決まっていたのだから」


 異様な光景に、フィリアは目を丸くする。……二人も親しかったのだろうか。両親が死んだ頃の記憶はない。そう言えば、どうして両親がいなかったことを不思議に思わなかったのだろう。ずっと、一人だったのに。


「同情で、私を呼んだのですか?」

「フィリア、違うよ。王子は同情なんかで、フィリアを呼ばない」

「ファーランに聞いてないわ」

「……最初はそうだった。でも、今は違う。フィリアが必要なんだ」


 アルフレッドはフィリアを見た。懐かしむ視線は、あの頃を思い出していたから?重ねていたのは、幼い頃の自分?……分からない。どうしたらいいのか、全く見当も付かなかった。


「私は」


 アルフレッドもファーランもフィリアの言葉を待っている。フィリアは息を呑むと、口を開いた。


「私は、あなたといたい。一緒に、ずっと」


 必要としてくれるのなら、私だけを必要としてくれるのなら。ここから、あなたから、離れてはいけない。そう思ったのは、間違いだったのだろうか。それとも、正しかったのだろうか。


「フィリア、おいで」


 アルフレッドに手招きされて、フィリアはソファから立ち上がった。ファーランがそっと道を開けてくれる。アルフレッドの前に立ち止まると、腕を引かれて抱き締められた。


「ずっと、会いたかった。フィリア、すまなかった」

「……クラリッサ姫は」

「帰ってもらった。俺には、フィリアしかいらないから」


 強く抱き締められて、フィリアは目を閉じた。アルフレッドの背に、そっと腕を回す。こうやって離れたくないと思うのは、彼のことが好きだということだろうか。分からないけど、きっと答えはアルフレッドが教えてくれると思うから。


「私も、アルフレッドしか、いらない」


 そう囁いた時、耳元でアルフレッドが嬉しそうに笑ったような気がした。ファーランは二人を邪魔しないように、ベランダから部屋を出て行った。その顔に嬉しそうな笑みを浮かべて。

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