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溢れるくらいの夢の代償

 夕暮れの教室で、大好きな貴方を待つ。

 少女マンガみたいなシチュエーションに憧れて、やっと本日それが叶いそう。

 ……な、訳もなく。


「なんでーなんでなのー」

「……はぁ」

「補習って赤点だからだよね!?」

「あんたは自業自得でしょ」


 合計二十枚のプリントを前にうなだれる。

 期末テストの補習。

 赤点じゃないのに渡された課題に、もちろんやる気は出ない。


 何が足りなかったか。

 担当の先生が言うには、集中力が無さすぎらしい。

 確かに集中してなかったけど、見とれてましたけど!


「あり得ない……」

「あ、そろそろ約束の時間だから。課題頑張ってねー」

「み、見捨てないで!」

「強力な助っ人、呼んでおいたから。じゃーねっ」


 助っ人って何。

 赤点じゃないのに補習っていう恥ずかしい事実を、私の許可なく誰かに教えたってこと?

 ……まさか、見とれて云々の詳細まで教えてないよね?


 何も尋ねる間もなく教室を後にした彼女。

 たぶん今はもう彼氏のことでいっぱいで、メールすら見てくれないだろう。


「うー……まさか先生とか呼んでないでしょーね」

「あれ、まだ残ってたんだ」


 不意にかけられた言葉に、私はうなだれていた体を慌てて起こした。

 この声は……補習の要因になった集中力が欠けた原因の……っ!


「補習ってホントなんだ」

「え」

「集中力が無さすぎてだっけ。……俺に見とれちゃって」


 口から心臓が飛び出るかと思った。

 冷や汗が背中を伝ったような気がする。

 無駄に熱くなった体が余計に恥ずかしさを倍増させた。


 まさかと思ったけど、あり得てほしくないんだけど……彼女はしっかり伝えていたらしい。

 もう隅から隅まで話してるんじゃないだろうか。

 証拠に彼は苦笑いを浮かべていた。


 非常にヤバい状況。

 こんなことならグチるんじゃなかった、と遅すぎる後悔に襲われる。


「それじゃ仕方ないか」

「ご、誤解っ」

「手伝うよ。半分は俺が悪いみたいだし?」

「悪くないから、忘れてーっ」


 憧れてた夕暮れの教室でのシチュエーション。

 こんな涙が溢れそうなことになるんだったら、望まなきゃよかったと思った。

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