幸せの裏側
女の子なら大抵憧れる、ジューンブライド。
それは私の姉も例外じゃなく。
夢見る乙女思考の彼女にはお似合いの式だけど、私には心からお祝いすることが出来なかった。
「お姉さんは、幸せにするから」
そう言った彼の表情は幸せに満ち溢れ、真っ黒に塗り潰してしまいたい衝動に駆られる。
そんなこと、出来もしないのに。
もう正装に着替えた彼と廊下で姉を待つ。
私は入っても問題ない……逆に促された……が、それは断固として拒否した。
「ゴメンね」
「何がですか」
「大切なお姉さん、奪ってしまって」
結構仲がよかった私たち姉妹。
どの兄弟姉妹にも負けないくらい、ずっと一緒にいた。
だからか、彼は私が不機嫌な理由をそう考えたらしい。
「兄貴、親父たちが呼んでるぞ」
返答に迷っていたら、彼の弟が話を遮ってくれた。
ちょっとだけ感謝しつつ、慌てて走っていく彼の背中を眺めた。
「ホント報われないことやってるね」
「……うっさい」
「んだよ。心配してきてやったのに」
可愛くねーと呟きながらも、私の隣に立って壁になってくれる。
きっと彼に似たその優しさを感じながら、私はこの場に似合わない涙を流した。
「バカだよなーホント」
「うるさいって言ってるでしょ」
「別に、お前に言った訳じゃねーし」
ははっ、と何故か苦い笑いを零しながら、彼はハンカチを差し出す。
もちろん私も持っていたけれど、バッグから出すのも面倒なので大人しくそれを借りた。
泣いてもいいようなメイクをしてもらっていたけれど、ハンカチに少し色が移っていて。
「メイクヤバいかも」
「化粧なんて似合わねーことするからだろ」
「っ、放っといて!」
完全にバカにされた気がして、私は彼から顔を背けた。
背後で大きなため息が零される。
「素の方がいいって意味なんだけど」
訳のわからない言い訳に、私は思わず吹き出してしまった。
幸せの裏側
(気付けよ、アホ)
(……何によ?)
♯君に賭けた結末。様/09.06.17 提出
06月お題『ジューンブライド』より。




