恋の次、愛の前
「告白しねぇの?」
「する訳ないじゃん」
雨上がりの校庭、水溜まりが紅く染まる。
久し振りに見た夕焼けの中に二つの影が揺れては近付く。
それを三階の窓から隠れるように見つめた。
「すりゃいいのに」
「……二人の邪魔、する気ないもん」
呆れたようにため息を零した彼は窓辺から離れていった。
そのまま教室を出て行ってしまって。
残ったのは私一人。
勘違いされたまま、逃げようとしている私が取り残された。
この恋が恋であるうちに、諦めていればよかったと。
何度そう思ったかわからない。
恋の次は何だろう。
恋以上愛未満、微妙な位置にいるから、何か言葉が欲しいと思った。
ずっと思っていた。
「……ま、気付かれないだけいっか」
別な人が好きだと勘違いされているけど。
想いが伝わって、気まずくなるよりはいい。
今まで積み上げた関係が崩れてしまうよりは。
「お前、帰らないのかよ」
「……帰りますよー」
てっきり帰ったと思っていた彼がドアから顔だけ出した。
窓の下に移動させた誰かの椅子を戻して、鞄を手に彼を見る。
一瞬目が合ったような気がして、慌てて目を逸らす。
なるべく自然に視線を外したけれど、上手くいっただろうか。
いつも通り、気付かれなかっただろうか。
もしかしたら気付かれているかもしれない。
いつも目を逸らした後の彼の表情を見ることはなかったから。
「さっさと帰るぞ」
「う、うん」
「駅前の喫茶店で何か奢ってやるよ」
「……何、いきなり」
「失恋見舞い?」
からかうように笑う彼を見て、気付かれていないと思った。
そう、思うことにした。
恋の次、愛の前
(好きって言った方がいい?)
(言った方がいいんじゃね?)
♯君に賭けた結末。様/09.07.23 提出
07月お題『この恋が恋であるうちに、』より。




