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さよならの前の夢

 言いたくなかった。

 そんなセリフ、私から言いたくなかったよ。


「別れよっか」

「……ん」


 素っ気なさはいつものこと。

 それでも今このときだけは違う彼を見せて欲しかった。

 慌てる姿とか引き止める姿とか。……嫌だって言って欲しかった。

 本当は好きじゃなかったのかもしれない。

 無理して付き合ってくれたのかも。

 だからこんなに素っ気ないんだ。

 ……ホッとしたのかな。

 安心したのかな。

 私の言葉で初めて彼の為になったかな。


「ごめんね」

「……ん」

「もう会わないから」

「……ん」

「……っ、す、き」


 だった、なんて言えない。

 今も好きで好きで仕方ない。

 でも進行形でも言えないから。


「だった……」

「ふぅん」


 涙で視界が塞がる。

 最後の最後まで彼の姿を記憶に焼き付けたいのに、このままじゃ半分も残らない。

 泣いた記憶なんかいらない。

 いらないのに。


「……っふ」

「……」

「ん……う、っく」


 止まらない涙を押さえて、その場に蹲る。

 こんなことなら早く彼の前から立ち去ればよかった。

 最後まで迷惑をかけて、最低だよ。


「……気、済んだか?」

「え?」

「はぁ……ったく」


 大きなため息に私はビクッと肩を震わせた。

 怖い。

 私はどれだけ彼に嫌われるんだろう。

 どれだけ……。


「ごめ……っ」

「しゃべんな、アホ」


 顔を覆う手を退けられ、彼の大きな手が私の涙を拭う。

 目の前に迫る彼を見ていられなくて、目を逸らした瞬間だった。


「責任取れよ、バカ」


 嗚咽と共に塞がれた唇。

 初めて触れたそれは思ったよりも温かくて、そして塩辛い。

 訳のわからない私は抵抗もせず、ただ見知らぬ彼に身を任せる。

 だからか、だんだんとそれは深くなって。

 やっと解放されたときにはもう涙も止まってしまっていた。


「さよならを言う前に、責任取れ」

さよならの前の夢

(責任……)

(夢中にさせた責任)

♯君に賭けた結末。様/09.08.21 提出

08月お題『さよならのレクイエム』

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