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プロローグ

 もしこれがハッピーエンド確定で、私がヒロインだったなら。

 この状況、素直に頷いているのだろうか。


「……ていうか、あなた誰ですか」

「名刺渡しただろ?」


 確かに手元にあるのは、名前と役職が書かれたカード。

 でも、それを持つような人に見えない。

 どう見ても、学生。

 何をどう間違っても、私と変わらない。

 そんな若者から貰った名刺なんて……そんな簡単に信じられるはずがない。


「今時俺らくらいの作家なんて、ゴロゴロ転がってるよ」

「そうかもしれませんけど」

「なら、五日間。取材協力してよ」


 ねぇねぇ、そこのお姉さん、今からお茶しない?

 なんて、ナンパされたような、そんなノリ。

 残念ながら、ナンパされた経験はゼロだけど。

 ……目の前の男がそうでなければ。


「どうしたら信じてくれんだよ」

「どうもこうも……ねぇ」

「なんならバイト代も出すし」

「……いくら?」

「時給一万円でどう?」


 言葉も出ないって、きっとこういう状況だ。

 高校生の分際で、バイト代を払う。

 しかも時給一万円。

 あり得ない。

 この正体不明の作家は、いくら稼いでるのか。


「急いでるから、今すぐ引き受けてほしいんだけど」

「なんで……私なんですか」


 そう、そこがおかしいんだ。

 他に埋もれるような平凡な私が、時給一万円で雇われるだなんて。

 そんな価値、ないとわかっている。

 世の中、私よりうんと可愛い人や綺麗な人がいる。

 それも少数ではなく、たくさん。

 顔が整っている彼の依頼なら、誰でも即引き受けただろうに。


「私なんて」

「お前に一目惚れしたから、じゃダメか?」

「……は?」


 今何つった、と言う前に、目の前の彼が怪しい笑みを浮かべる。

 何も言わせないそれに、私の口も自然と閉ざされた。


「好きな奴と付き合いたいのは普通だろ? ……それがどんな卑怯な方法だったとしても」


 その瞬間、目の奥に過ぎった色。

 一瞬のそれを知ってしまった。

 それさえ知らずにいれば、私は普通の女子高生のままでいられたのに。

 見たくないものを見せた神様が憎い。


「なんなら、時給二万円でもいい」


 淡々と話すのに、言葉は切羽詰まっている。

 彼は必死だった。

 からかいでも、何でもなく。


「まだ、不満か?」

「そういう訳じゃないけど」


 渋る私に、そろそろ痺れが切れそうだ。

 上手く進まないことに、苛立ちを見せ始める。

 頷けばいい。

 たった五日間、あっという間に終わるはず。

 でも、結局頷けなかった私。

 その手には、一枚の名刺が残った。

プロローグ

(歯車は回り出す)

♯ピンクの魔法様/09.05.26 提出

05月お題『ヒロイン/五日間』より。

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