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幸せのあとは不幸だったから

 来年も一緒にいよう。

 そんな約束が交わされた1年前。

 夢に見た初めての彼氏に心を弾ませ、些細なことが幸せだったあの頃。

 今は遠い昔に感じる思い出は少しずつ形を変えていく。


「何、考えてんの」


 隣にいる彼が心配そうに私の顔を覗き込んでくる。

 何でもない、と首を振っても信じてくれない。


「元カレだ」

「……なんでわかるのよ」

「別れた直後に俺に愚痴ったじゃん? あのとき言ってたから」


 半年も前のことを覚えてんじゃねーよ。

 突っ込みを堪えて、彼から視線を逸す。

 ……嫌な彼女だな。

 新年早々元カレのことを考えるなんて。

 しかも、彼氏の隣で、さ。


「忘れろ、とは言わないけど」

「言ってよ、バカ」

「だってお前がアイツと付き合わなきゃ、俺ら付き合ってないし」


 どんな理屈かはわからないけど、取り敢えず機嫌が悪くないことにほっとする。

 いい加減忘れなきゃ。

 今が不幸な訳じゃないんだから、過去を羨む理由もない。

 むしろ今の方が幸せだし。


「帰ろっか」

「え、お参りは?」

「ん、やめとくよ」


 また別れさせられたら困るしな、なんて意地悪に笑いながら、彼は私の手を引いた。

 人混みに逆らって歩くと、迷惑そうな視線が突き刺さる。

 そりゃそうだ。

 だってあと少しで順番になるという場所だし。

 しかも真ん中の列とかいう最悪な位置。


「ちょ、折角並んだのに!」

「あはは」


 あはは、って笑ってる場合じゃないよっ。

 キツい香水をつけたおばさんにぶつかり、思わず顔をしかめる。

 それを見たおばさんに思い切り睨まれた。

 その間も彼は私の手を引き続ける。

 どうしてそんなにスムーズに歩けるのか理解できない。

 っていうか、ちゃんとエスコートして。


「待って、よ! 無理、潰れるっ」

「あと少し。頑張って」


 人ごとのように適当な返事が返ってくる。

 反論しようとするとゴツいおじさんと目が合って、そっと口を閉じた。

 ……私、何してるんだろ。

 初詣でに来たはずだよね?


「脱出成功ー。大丈夫か?」

「し、死ぬ」


 息切れの激しい私と違って、彼は平然としている。

 この差は男女の差だけじゃない気がするのは私だけだろうか。


「散々な初詣でだな」

「あんたに言われたくないわっ」

幸せのあとは不幸だったから

(これで俺らは別れないよ)

(なんで)

(正月は不幸に終わったから)

♯透明プリズム様/09.01.25 提出

01月お題『お正月』より。

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