表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/55

スプリングドリーム

「昨日のケーキ、受け取ってくれなかったんですね……」

「……怪しすぎて、受け取れる訳ないでしょ?」


 靴箱にそっと置かれていた箱。

 気味が悪くて捨てたはずなのに、何故か目の前に戻ってきた。

 あり得ない。

 マジ、あり得ない。


「先輩のために、溢れるほどの愛を込め」

「黙れ。お願いだから、喋らないで」


 自称・一途な片想い少年という彼は、れっきとした私のストーカー男だ。

 二ヵ月ほど前、意味不明なセリフを彼の兄から頂いたのが始まりだった。

 ……その一ヵ月後、入学してきた彼は私の写真を片手に迫ってきた。

 この日から、ストーカーから逃れる日々も始まる。

 時々無くなるペンケースの中身、会う度増える隠し撮り。

 今はプレゼント攻撃らしい。

 ……彼氏が出来ないのは、絶対コイツのせいだ。


「今日はクッキーですよ、先輩! 捨てられないように、直接持ってきましたっ」

「市販?」

「いえ、手作りです」


 差し出される小さな紙袋を思わず睨み付ける。

 毒薬が入ってそうなのは気のせいか。


「別に怪しくないですよ。俺のありったけの愛だけがつま」

「そ、それが怪しいんだってっ!」


 一歩後退りすれば、彼は一歩近付く。

 そんなことを繰り返していると、背中に硬い感触がした。

 そよそよと優しく流れていた風が一瞬強くなって、頭上から薄桃の花びらが落ちてくる。

 中庭にある大きな桜。

 それに背中が当たったらしい。


「……絶体絶命ですね」

「あんたが言うなっ」


 私の足は止まったにもかかわらず、彼はまだ足を進める。

 十分に取っていた距離もほとんど埋まってしまった。

 ふと彼の手が伸びてきて、私は思わず目を閉じる。

 ……絶体絶命、なのに。


「花びら、いっぱい付いてますよ」

「触らないでよ」

「……なら、逃げてくださいよ」


 薄く目を開ければ、彼の顔が少し歪んで見えた。

 時々見せる、寂しそうな悲しそうな顔。

 最近、その回数が増えたのは気のせいじゃないと思う。


「はい、全部取れました」

「……なんで、私に付きまとうのよ」


 返ってくる答えはわかりきっているけど。

 時々聞きたくなるのは、きっと優しい春風のせい。


「そりゃ、先輩を愛してるからですよ」


 彼氏、出来なくてもいいかな、なんて。

 最近感じていることは、絶対彼には教えてあげない。

スプリングドリーム

(好きになるのはおかしい?)

♯透明プリズム様/09.03.28 提出

04月お題『春風と年の差』より。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ