雨音ラブソング
まるで滝のように降っていた雨が勢いを落し、今は小降り程度の雨になっていた。
窓には風によって叩きつけられた滴がゆっくりと筋を作っている。
何がどう、なんて言うつもりは最初からなかった。
薄々感じていたことが、はっきり明確になっただけで。
「フラれたんだって、お前?」
閉ざされていたドアが勢いよく開いたかと思うと、デリカシーのない言葉が飛んできた。
少しムッとなるが、いつものことなのでスルーする。
逆にいつも通りが嬉しかったなんて、口が裂けても言わないけど。
「だからあんなヤツはやめとけって言っただろ」
「言ってたっけ?」
「……まぁ超浮かれまくってたからな。聞いてなくても不思議じゃ」
「聞いてたよ、耳にタコが出来るくらい」
新しいヒトが出来る度、彼は飽きずに同じ言葉を繰り返している。
傷つくのは私、彼は何も関係ないのに。
下手すれば女友達よりも心配してくれていた。
何となく暗い雰囲気が窓の外と重なる。
雨が止む気配は一向にない。
「つか、帰らねーの?」
「傘忘れたから」
「……なら、一緒に帰るか?」
「いやそこは、傘貸そうかって言うところでしょ」
「俺、濡れるの嫌だし」
相合い傘でもしろと言うのか。
そう言ってやったら、彼は苦そうに顔を歪めた。
「可愛くねーな、ホント」
ポツリと零された言葉に、嫌な記憶が蘇る。
可愛くない。
フラれたときもそう言われた。
自分が可愛いとは思ってないけど、面と向かって言われたらやっぱり悲しい。
窓の向こうがさっきより歪んで見える。
頬を伝う前に目頭を指で押さえた。
「……まぁ、俺はそこが可愛いと思うけど」
「は、はぁ?」
「可愛くないのが可愛い」
ちょっと顔を赤くした彼は、思わず振り向いた私の視線から逃げるように顔を逸した。
可愛くないのが可愛い。
そんなこと、言われたのは初めてだ。
だから喜んでいいのかどうかわからない。
それよりも、その言葉の裏にある意味が頭を掠めてしまって。
「どーいう、こと」
「気付いてんだろ。そのまんまだよ、バーカ」
そう言った彼はとうとう背中を向けてしまった。
自分の発言を後悔しているのか、大きく肩を落とす。
いつもより少し小さくなった後ろ姿に、思わず笑ってしまった。
「あははっ」
「……お前なぁ」
「はははっ。じゃあ帰ろっか」
立ち上がって、グッと体を伸ばす。
頭がついていけていないらしい彼の表情を見てもう一度笑った後、私と彼は灰色に染まった教室を後にした。
雨音ラブソング
(相合い傘、してあげるよ)
(偉そうに言うな)
♯透明プリズム様/09.06.20 提出
06月お題『雨/傘/梅雨』より。




