あいまいみー
「よろしく」
教室中に女子の悲鳴が響き渡る。
開いた口が塞がらないって、正にこれだ。
口が閉じない。
……時期外れの新任教師は、いつか一夜を共にした男でした。
あ、口閉じた。
*
「まーり」
聞きたくもない声が降ってきて、目の前から卵焼きが消えた。
もちろん最後に取っておいた分。
ベタな場面に、ため息が出る。
「んま」
「そりゃーよろしゅうござんました」
「何語だよ。てかさ、俺の分は?」
「ないに決まってるでしょ」
「作ってきてって言ったのにな」
しょぼん、とする男に同情の欠片も生まれない。
どころか、周りの黄色い声と友達からの無言のブーイングに呆れた顔しか出来なかった。
そこ、中指立てない。
「あの! 私、お弁当作りますよ?」
この雰囲気で、勇気ある女子が1歩前に進み出た。
クラスの……というか、ファンクラブのトップにいる子だ。
1番騒いでいるから、覚えてる。
まぁ、同じクラスだし、当たり前か。
「ありがと。でも、コイツのしか食べないから」
「どうして……私の方が彼女よりおいしいですよ!」
「立場上、ごめんな。気持ちだけありがたくもらっとく」
極上スマイル(ファンクラブ命名)を浮かべ、女子の悲鳴までもかっさらう。
声にならない呻きを上げながら、ぽわーんとした表情を浮かべている。
……罪な男ってこれかな。
「どーこに行こうとしてるのかな、茉莉は」
今がチャンスとばかりに男から離れようとしていたら、無駄に長い腕が伸びてきて腰に回された。
そのまま強く引き寄せられると、突き刺さる視線が痛くなる。
睨まれてるんですが、ものすっごく睨まれちゃってるんですが!
「ちょ、離してっ」
「ん、いい匂い」
「立場上無理なんでしょ? 私も彼女と同じ立場なんですけど!」
「茉莉は特別。私立っていいよね、理事長に許可貰えるし」
勝手に何の許可を貰ってるんですか。
つーか、許可出すなよ!
「茉莉?」
「近寄るな、息を吹き掛けるな、この変態教師っっっ!」
振り上げた足を男の腹にのめり込ませ、腕が緩んだ隙にそこから逃げ出す。
女子、主にファンクラブの人を掻き分け、教室を出る。
……これから嫌というほど繰り返されるだろうこの状況を思い、深く大きなため息が出た。
「ため息つくと、幸せ逃げるらしいよ」
「ひ、ぎゃぁぁああっ」
「あはは、酷いなぁ」
先回りしたらしい男が目の前に現れ、何とも言い難い叫びが出る。
……もう、嫌だっ!
あいまいみー
(目の前から消えて)
(俺と茉莉の仲なのに)
(どんな仲よ!?)
♯溢れる想いを君に様/08.01.01 提出
12月お題『友達以上恋人未満』より。




