雪降る帰り道
ひらひら舞う雪花を見上げて、大きくため息をつく。
一瞬白くなった視界もすぐに開けて、灰色の空が目に映る。
偶然か、必然か。
そんなことを考えるようになったのは彼と出会ってからだ。
何度も出会い、何度も別れた。
繰り返しは飽きてしまったのか、今はそんなことはないけど。
……でも時々思い出すあの頃は確かに幸せだった。
「セーンパーイっ」
「もう先輩じゃないんですけど」
「先輩はいつまで経っても、俺の先輩ですよ」
可愛くない言葉に真面目な返事は返って来ない。
それも何度も繰り返して来たのに、まだ素直になることを忘れてしまう。
「……名前が、いい」
「それを最初から言って下さいよ」
「敬語も。私、やめてって言ったじゃん」
出会った頃から変わらない。
埋まらない年の差を痛いほど感じる。
関係が変わるだけじゃダメなんだろうか。
近くなるだけじゃダメなんだろうか。
「ごめん、つい」
「別にいーけど」
「よくないっしょ? そんな顔してるけど?」
何が嬉しいのか、彼は柔らかく微笑んで私を見る。
そっと触れてきた手は大きくて、すっぽりと私の手を包んでしまう。
「追いかけてよかった」
「え?」
「めげずに追いかけてなきゃ、先輩のそんな顔も知らないままだったし」
彼は繋いだ手を引き寄せ、私との距離を埋めた。
肩に手を動かし、頭に頬を寄せてくる。
「名前がいいって言ったのに」
「だって可愛いんだもん」
目の前に積もっていく白い花。
頭に、肩に積もっていくそれを彼は払い落とし、帰ろうかと歩き始める。
「今日はお鍋がいいなぁ」
「じ、自分の部屋に帰りなさいよ」
「やだ。今日も泊まらせてもらいます」
「断固拒否っ」
再び繋いだ手は温かくて。
きっと不安も全部包み込んで、消してくれている。
確かに出会った頃は幸せだった。
でも、今の方がずっと幸せなのかもしれない。
「先輩の手料理、食べたいから」
あなたもそう思ってくれていればいいけど。
雪降る帰り道
(今日はすき焼きかな)
♯溢れる想いを君に様/09.02.04 提出
02月お題『先輩×後輩』より。




