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教え

おはようございます

何も言いません。

本当もう

ごめんなさい

何時もの天井を見ながら目を覚ます。

あの後無事に王都から何時もの宿泊先へと帰宅し、そのまま倒れこむように寝た。

少しばかり動揺してしまった自分をうまく隠せたと思う。

あの時みたお話は、アリスから聞いた話とほとんど同じだった。

俺は、出来事を眈々と聞いただけだったからあの物語みたいな事があったのかは知らないが、少なくともあのお話が実話。つまりは、アリスから聞く筈の神話時代の事実を元にした物であることは明らかだ。

少し違うとしたら、人間が神に作られたってところ位だろう。

人間は紛れもなく魔物であり、同類だ。

そこを差し違えて居る時点で、全く違うお話と言ってもいいのかもしれないけれど。

ただ、はっきりとこれだけは言えることがある。

人間に、神話を伝えた、それも人間に有利な言い方で伝えた魔王が何処かに存在する。

そいつに会わなければ、人間達の誤解を解くのは見込めないだろう。

まず、どういう意図なのかを確かめるしかない。

そこで、思考を一旦切り替える。

ナミとリオンが起きたようだ、こんこんと扉がなった。



「ヒロさん!!教会に行きたいです!」

よし、そろそろ朝ごはんの時間だな、と思いノックに応じて扉を開くと、興奮気味のナミが言った。

その隣には、呆れ気味のリオンも居た。

「はぁ…どういう経緯でそうなったか教えてくれないか。」

俺の問いに、やや疲れたようにリオンは答える。

「昨日の劇の影響らしいんだよ。なんでも知の女神ティターリアに感情移入しちゃったみたいで、ティターリア様を祀って居る教会に行きたいみたいなんだ。」

はぁ、と大きくため息をつき頭を抱える。

確かに、ティターリアが命を張ってアリアロイズを助ける場面は、あの物語の中でも有数の感動シーンだった。

女の子的にはティターリアに感情移入しても仕方ないのかもしれない。

俺的には結構セレーネに感情移入してしまったと言うか、彼女も結構可哀想な人だなと思ってしまったのだが、まぁそれはさておき。

おかげさまでお金も暫く心配は無いし、今日することと言ったら、二人のBランククエストを受けに行く位だったし、悪くない提案かもしれない。

神話の話が聞ければ人間への神話の伝わり方が分かってくるかもしれない。

予想外に今の俺に都合の良い展開であった。

「まぁ、良いんじゃねえか?俺も少し気になるし。」

「そうだね、実は僕もナミちゃんの提案には賛成でね、ヒロくんがそう言ってくれて良かったよ。」

「よし!じゃあ行きましょう!今すぐに!レッツゴーですよ。」

俺はナミに後ろから押されつつ、大きな溜息をつくのだった。

今日は朝ご飯抜きだなと…。




結局朝飯抜きで教会にやって来た。

ティターリアを祀って居ると言う教会は、意外と近くにあった。

と言うか近過ぎた。

いつも泊まっている泊まり木亭からギルドへ東に向かって直進の道の二個北側の通りに教会はあった。

俺は普段からあまり積極的に出掛ける人間では無いので、土地勘もほとんどなかった。

それでも元の世界にいる時よりは買い物やなんやらで出掛けては居るが、元の世界より幾ばくか文明の遅れたこの世界ではいざという時土地勘が無いとまずいかもしれない。

そう改めて実感するのだった。


実感したは良いものの、今すぐにどうにかなるものでも無いので、取り敢えずは目の前にある教会に意識を絞る。

石煉瓦で出来た小屋のようだが、外見にちょっとした豪華さを感じる。

例えば壁にかかって居るランプの明かりを覆うガラス部分の装飾だったり、扉の横に置かれて居る天使のような置物だったり、真っ赤な屋根やドアノブの模様なんかもそう感じさせる要因なんだろう。

見た目に萎縮してしまったのか、さっきまでノリノリだったナミは既に見る影も無く、リオンの後ろに縮こまって居る。

元無信仰者の俺からしてみれば、教会ってだけで気後れしてるのに、実際に見てみると何と言うか圧迫感のようなものがある。

まぁ信仰して居る人たちにとっては心地よい空間なのだろうけど。

「失礼しまぁす。ってナミちゃん?なんで隠れてるの!?ってヒロくんまで!?」

「なんですかリオンさん。じゃあ言わせてもらいますけどね、こういうところってアポを取らずに勝手に入っていい物なんですか!?ろくに調べもせず、その場で行こうっていきなり行ったらやっぱり迷惑になるんじゃないんですか!?」

「言い出しっぺ、おい。」

「ナミ、その通りだ。そう言うことだリオン、アポ取ってきてくれ。」

「ヒロくんまで!ふざけないでください!大丈夫ですから、行きますよ。ほら。」

リオンはそう言うが早いか、ドアを開けてしまった。

ドアを背にして帰ろうとリオンを押して居た俺たちは、開けられたドアとともに後ろに倒れこむ形で入室した。

倒れた床には真っ赤なカーペットが敷いてあってふかふかだ。

そのまま見上げる形になった天井は、色付きのガラスで模様が描かれていて、その上から光る明かりは何とも神秘的だ。

「こんにちは」

リオンの声ではない声が聞こえて、急いで立ち上がる。

「こんにちは」

もちろんこちらも挨拶は返す。主にリオンが。

「さて、若いお方達、どんな御用ですか。」

声の主は白髭をたくわえた優しそうなおじいさんで、ローブのような物を着ている。

神父の制服のような物だろうか。

メガネの向こうの青い瞳がこちらを試すようにじっと見つめてくる。

「はい、先日神話の劇を見たのですが、恥ずかしながら自分達はこの国の住民なのに、神話について神について詳しくないと思い、是非ここで教えを説いて貰いたく伺いました。今では都合が悪かったでしょうか。」

「とんでもない。もちろん歓迎いたしますよ。奥の部屋へどうぞ。」



俺たちは今、広間の奥の部屋に通されてお茶をすすって居た。

「落ち着きましたか?」

あの後、何事も無いかのように話を進めるリオンとお爺さんに、我に返った俺とリオンはあまりの恥ずかしさのあまり発狂しかけたのだ。

「っ、で神父さん?でいいんですか?早速お話を聞かせて欲しいんですけど。」

「シリウス-ローラットです。それでは始めましょうか。」



「…そうしてティターリア様は我々に授けた知能を使って下等な魔物を支配するとともに、同族内での無駄な争いを控えさせ我々人間に愛が満ちるよう配慮なさいました。ではいったい、考えるための力と、本能を抑える理性をティターリア様は一体何のために我々に下さったのでしょうか。」

「それは、さっきローラットさんも言っていたように、人間同士の無駄な争いとかなんとかって言うことじゃ?」

俺の口からは少なくとも魔物を支配なんて言えなかった。

嘘でも言いたく無かった。

「もちろん、そう言うことなんですけどね。もっと根本的な事です。さっきあげたことは、考える力を使った結果の事。様はティターリア様がなんのためにその力を授けたかと言うことです。」

「なんの?それって考えるためじゃ無いんですか?」

思い切りドヤ顔で言い出すナミ。

いやまぁ、確かにそうだけど。

「そう!その通りですよ。難しく考えることは無いんです。考える力はそのまま考えるためにあるんです。」

「ローラットさん、それはちょっと…」

「まぁ、確かに少し屁理屈を言った自覚はありますけど。まぁそう言うことなんです。考えること、即ち自分以外の存在を理解すること。本能のまま、自分のためではなく、他人のために動く、動きたいと思えるようになると言うことなんです。そう言う力を持った人間は、皆が皆幸せになるために自分が頑張る事が必要だと言うのがティターリア様の教えであると、我々教会は考えているのです。」

ここまで長かったなぁ、とにかく、ティターリアを崇めて居るこの教会は、今の教えで活動していると言うことなんだろうな。

「じゃあ、皆さんはみんなが幸せになるためにどう言うことをするんですか?」

「我々は、あまりに自分の身に過ぎた幸福を持っていたので、それを少し分けているのです。それに、なにを幸せと感じるかは人それぞれ考え方次第ですから、我々は人々を幸せにすることに幸せと感じるのです。ここで、大事な事はみんなが幸せであると言うことです、もちろんその皆の中に自分自身が含まれて居ると言うことを忘れてはいけないのです。」

.........

......

...

「すごいお話でしたね。私感動しちゃいました。」

と、満足顔のナミ。

「確かにいい話だったよね。実際にやれって言われたらいろいろ難しいんだろうけど。」

と言うのは同じく笑顔のリオン。

「まぁ、あの人も言ってたじゃんか、何をどう幸せに感じるかは人それぞれだって。」

確かに、確かに良い話だったけど。

ローラットさんが言っている皆には、人間しか入ってないことは明らかだった。

他人のために行動できるのは、知能を持った人間だけ、魔物には出来ない。

彼はそう言ったのだ。

周りの生き物を壊さないため、怖がらせないために、ずっと一人ぼっちで居たとある龍の少女も。仲間のために、格上の敵の居中に一人で突っ込んで行った一羽の鳥も。

全ては自分のため、そうしたのだと、そう言ったのだ。

それを知ってしまった俺は、この帰り道、うまく笑顔を作れないで居た。

時間が、かかってしまいました。

言い訳はごさいません

サボって居ました。

申し訳ありません

大した人気も無い作品がこんなんで良いのかと思うのだけど

しばらくこんなんかもしれません

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