魔王討伐戦 Ⅰ
おはようございます
街はひどい惨状だった。
先程来た時よりもずっとひどいことになって居た。
家はかなりの数崩壊して居る上に、騎士達には既に披露の色が見える。
気配と匂いを頼りに上を見上げると、そこには空を飛ぶ魔王が居た。
その姿こそ、ただのイーグライであるが、内包された魔力量は確かに凄まじい。
しかし俺はそこで少し疑問を覚えた。
俺は心が見えるようになってから、ステータスを見る前に大体の強さが心の力の強さで分かる様になって居た。
心の力は、そのままスキルの使用に関係してくる。
確かに魔力も使うが、スキルに関してはやはり、心の力の強さが大きく関わってくる。
この魔王は、心の力は確かに強い。きっと相当な恨みが心に蔓延って居るのだろう。
しかし、それにしては魔力量は微妙だ。
心の力が増えたからといって、魔力量が急激に増えるわけでは無い。もちろん心の力によって魔力量ももちろん増えるが、魔力が増える要因はそれだけではない。
よって、心の力と魔力量が偏ってしまうことも無いことも無い。
しかし、魔王になったことにより、存在力は増す。そのため、魔力も増えるはずだ。
だが、こいつの魔力は、魔王としては最弱だった当時のスライムさんにも及ばない。俺には言わずもがなである。
俺は、色々な要因もあって魔力だけは増えていく。
当時のスライムさんよりは遥に多いだろう。
その代わり心の力が全然増えないので、力はあまり着いてこない、なんちゃって魔王だ。
それに対して、心の力に実力が追いついて居ない目の前の鳥。
俺とは正反対の魔王と言うことだろうか。
そもそも、こいつは本当に魔王なのか?
先程も言ったが、50位以上になった時点で存在力が上がり魔力も増える。魔物とはそういうものだ。
それなのに、こいつは魔力があまり高くない。今ある魔力さえ怪しいぐらいだ。
突然、偶然に得た力で、その力に振り回されて居る様な、そんな感じが目の前の鳥からはする。
とりあえず、鳥のステータスを確認する。
種族 憤怒鳥
名前 なし
順位 8700万
能力 鷹の目
追尾
超加速
風操作
無限進化
耐性 精神耐性
加護 大魔王の加護
称号 魔王の操り人形
なんと、目の前の敵は魔王でもなんでもなかった。
やはりと言うべきか、見た目から想像出来たことだが、こいつはイーグライの上位種であるようだ、スキルが大きく変わっていない事からわかる。
魔物の強さには、魔力とか心の力とかそう言うような純粋な力の他に存在力があるのはかつてステータス画面から調べた通りだ。
かつて、存在力の希薄だった魔力だけの存在であった魔物達にとっては、生き物として生まれ変わった後も、存在力という尺度は自分の力に大きく関係している。
順位とは、存在力の力を図る物差しの中の一つであり、順位の上昇によって上がるステータスは、そのまま存在力の上昇によって上がるステータスとも言い換えられる。
何故人間は、目の前の鳥を魔王と間違えたのだろうか。
確かに何度も言うようだが、魔力も高いし心の力だって相当な力だ。
しかし、魔力云々関係なく、存在としての力が、単純に存在の位が圧倒的に違い過ぎる。
俺が、ちぐはぐな魔力と心の力のバランスに違和感を覚えたのも、今思い直して見ると、存在力に違和感を覚えたからなのだろう。
憤怒鳥を魔王と勘違いしてしまったのは、流石に人間を矮小な存在であると言わないとならないかもしれない。
しかし、まぁ位が低いと言っても立派な億越えだ。
存在が他の魔物と区別つけられる様になるのもこの、億と言う単位を越えたあたりからだ。
人間が間違えてしまったのも仕方ないと言えるだろう。
この事実が発覚して俺の中では、先程生まれた小さな違和感が、小さな疑問に変わっていた。
先程まで、中途半端な魔力に違和感を感じて居ながらも、魔王になる際に心の力が優先して上がり、魔力が少し少なくなるケースもあるのかもしれないと考えていた。
しかし、存在力が魔王種に到達してないのに、この魔力の量は明らかにおかしい。確かに先程も魔力の上昇の要因は一つでは無いと言ったが、それにしてもおかしい量なのだ。俺も魔力と心の力だけを見た時は魔王と、勘違いしてしまう位には。
それも、加護の欄にある魔王の作為なのかもしれない。
そこで俺は思考を一旦停止する。そんな場合で無いことを思い出したからだ。
この思考にかかった時間およそ3分。それも、俺の減速した時間の中での話で実際には6秒程度の事ではあったのだが、それでも油断してはいけない時間である。
そう思ったら、早速行動に出る。
今回の依頼では、逃げ遅れた人たちの救出が主だ。
もちろん、ラースイーグルに関してもどうにかしたいとは思っている。恐らくここにいて勝てるのは俺だけだろうから。
まず、俺は今できる最速の移動方法で移動を開始する。
最速の移動方法とは、腕の毛を強化して伸ばし、長い頑丈なロープにする。
その後は某蜘蛛人間のように壁にロープを突き刺し、引き戻しを繰り返しブランコのように進んで行く。
この時に、手に入れたスキル、ブースターを使い推進力を上げ、さらに加速する。
鳥のように推進力を利用してそのまま飛んでいたりは体の都合上無理だが、この方法なら推進力をうまく利用できるのではと思ったのだ。
もちろん空を飛ぶ夢を捨てたわけではないが…。
技名は超加速立体駆動だ。
パクリとか言わない。
技名をつけた理由は、簡単に言うと、スキルと応用のイメージのタイムロスを無くしてくれるからだ。
普通ならば、スキルの応用やスキルコンボを使う時はスキルを発動し、スキルの力をどう応用するか、利用するかをイメージしなければならない。
しかし、技名を考えることにより、どのスキルを使うか、それにスキルをどう使うか、と言うイメージの代わりになってくれる。
まぁ、分かりやすく言うと、スキルをもう一つ作った感じだ。
スキルを実際に作ったわけではないが、その他にもショートカットだったりを想像してもらえれば分かりやすいかもしれない。
それに気づいたのも、影世界と体毛操作のスキルコンボに影縫いという、必殺技っぽい名前をつけて、自己満足に浸っていたからなのだが、そこは割愛する。
そんなこんなで、移動している。
まずは人家の中を見ながら進んで行く。
もちろん神経加速を使っている1/30の世界なのでそのスピードで動いても見逃すことはない。
残った人達が予想以上に少ない事に安堵しつつ探して行く。
俺のこの移動は恐らくここに居る人達の中で一番速い。
だが、これで人を運ぶことは難しい。
人を見つけて、安全なところまで運ぶとなると、どうしてもスピードダウンせざるを得ない。
と言うことで、俺は逃げ遅れた人達を見つけたら近くの冒険者に連絡することにした。
こうすれば、俺のスピードの優位性を保ったまま、たくさんの人を発見できる。たくさんの人を発見できると言う事は、そのままたくさんの人を助けることができることに繋がるのだ。
そう信じて、自分で送って行きたいところを抑えて人を呼ぶ。
これで大体の家は回ったかな、後はどういうところに隠れて居るのだろうと思っていたら、角を曲がった家に瓦礫に潰された人家を見つける。
そこから強く人の匂いと血の匂いがするので、瓦礫をどかして確認して見ることにした。
瓦礫をどかすと、押しつぶされて身動きの取れなくなっている女性を見つけた。
体は血まみれで、見るからに危険な状態だった。
俺は咄嗟に周りの魔力を探り、同じ冒険者を探すが、この付近には見当たらない。
人家で残っているのはこの家がある、一直線の通りだけだ。
この人は置いて行ってしまったらすぐに死んでしまいそうに思えた俺は、すぐに近くの冒険者の所まで運ぶ方向にシフトチェンジ。
女性を抱えて、走ろうとした時だった。
一筋の光がまだ無事だった人家に突き刺さる。
そこには、嘴を血で濡らした鳥と、お腹から血を吹き出させる青年が居た。俺のスピードなら助けられたはずの青年だった。
女性をここに置いて行き、女性を運ぶ冒険者を探しながら、人家を回っていれば、見つけられたはずの青年だった。
それを暫く俺は見ていた。呆けてしまった。
俺の腕の中の女性は、自分も瀕死であるのに、その惨状を見て「ひっ」と声を上げ、目をそらした。その目からは、涙が出ている様だった。
俺たちを発見したのか、鳥と目が合う。
この入り組んだ場所なら俺の移動の方が速いはず。
俺は鳥を巻き、近くの冒険者の所まで女性を運ぶ。
近くで起こる死。それに対する恐怖、悲しみ、いろいろ感じることがあるのだろう。もしくは、その青年が女性にとって特別な人だったのかもしれない。
女性の涙からは、色々な感情が読み取れた。…………俺は?
今は私合宿中です。のはずです(予約投稿済み)。
今回の合宿は相当きついらしい(何度も言うが予約投稿)です。
来週投稿出来なかったとしても、そのせい。のはずです。
それではおやすみなさい
前回も後書きに書かせて頂きましたが、この度OVL大賞の方に応募させて頂くことになりました。
本来であれば、せめてあらすじに書いた分だけでも回収してから応募したかったのですが、そろそろ時間切れなので、このタイミングでの応募です。それに関しては、私の力不足です、申し訳ありません。
応募理由は、このままでは自己満足のままで終わってしまうと危機感を覚えたからです。
このままでは、自分の中の妄想を書き連ねているだけ。誰も楽しませられないのでは、と思いました。
投稿して行くだけで何も成長出来ない。そんな事に危機感を覚えたのです。
今回応募することにより、良くも悪くも読んでくれる方は増えると予想して居ます。
もちろんお目汚しになるのは覚悟の上。どんなきつい意見でも受け入れる所存です。
例えそんな事になろうと、誰の意見も聞けず、ずっとこのまま続けるよりは良いと思い応募させて頂くことになりました。
もちろん、自分の力を試してみたいという気持ちも大きくあります。
ですから、やるからには頑張る。そういう意気込みで行くので、これからどうぞよろしくお願いします。
長文失礼しました。
 




