発足
「……以上が作戦の内容だ。異論はないな、ロイ少尉。」
「はっ!」
「今回の作戦は重要な任務であり、極めて危険な任務でもある。新型のP.Sを一台、お前のチームに与える。くれぐれも慎重に扱え!」
「はっ!」
「よし下がれ!」
「失礼します!」
正規軍、司令室を出た俺は、大きくため息をついた。
突然の戦闘で正規軍の兵士の多くがやられてしまった。それに伴った階級の底上げ、それだけではないのだろうが、それはいいのだ。
今回与えられた作戦、PSI本部の正確な場所の割り出しと、その調査とは……。これでは死ねと言われているのと同じことではないか。
それでも機密の漏えいと、P.Sの破損、事実上作戦の放棄といった大きな失態を侵しているのだから、禁固刑や死刑でも不思議はなかった。親父の手が回っているのだろうか。だがそれを考えるのも面白くない。
それは仕方のないことなのだが……。
「ねぇ、ロイ。僕はこれからどうすればいいの?」
「お前は俺と一緒に来るんだよ。」
「えー!連れて行ってくれるの?」
「命令だからな。」
「やったー。」
廊下で待ち構えていたエリックにそう言うと、こいつは手放しで喜んだ。
情報の漏えいの拡大を防ぎたいからといって、なぜエリックの様な子供と一緒に行動しなければならない。ほかにいくらでも対処の仕様があるだろう。いったい上層部は何を考えているのだ。
「なぜ喜ぶ?」
「だって、一人は怖いし、ロイは他の軍人と違っていいやつだから。」
「ふん、俺だって奴らと一緒だよ。それに加えて俺は臆病なんだ。危険と判断した時には簡単にお前を見捨てるぞ。」
「ロイはそんなことしないよ。」
「お前は何もわかっちゃいない。」
楽観的なエリックが心底羨ましかった。
俺たちは格納庫に足を運び、作戦で使用するP.Sの受け取りにいた。
「ロイ・スミス少尉であらせられますか!自分は!今回!新型P.Sの整備兵としてチームに参加させていただきます!エスター・トマック軍曹であります!」
今回の作戦でチームに配属された整備兵、トマック軍曹はいちいち元気な男だった。
「よろしく、トマック軍曹。俺もつい最近まで君と同じ階級だったんだ。俺のことはロイでいいよ。」
「そ、そうでございますか!でしたら自分のこともエスターと呼んでください!」
エスターは語尾を強く言うたびに何度も敬礼をした。変わった男である。
だが、新型のP.Sをつけるとは言っていたが、メカニックまで新米というのはどういう了見だ。
今回の作戦に俺はただならない不安を感じていた。
「それと、先ほどから気になっていたのですが……。その子供は何でございましょう!」
エスターはエリックを指さしそう言った。
「その子もうちのチームだ。」
「僕はエリック。よろしく、エスター。」
「なんと!そうでありましたか!子供ながらに命がけで戦地に赴くとは見上げた根性ですな!こちらこそよろしくエリック殿。」
エスターはチームに子供がいることに何の違和感も感じ無いらしい。
話が早い、と言えば聞こえはいいが、物事を素直に受け入れる単細胞らしい。
「それでロイ!今回の新型P.Sなのですが。従来1人乗りのP.Sに助手席を取り付けまして……。」
エスターはP.Sの話に移った途端、目をイキイキと輝かせた。
話は長くなりそうだった……。