肝試し
仕事の付き合いもなかなか大変だ、と小坂隆一は思う。
昨日取引先の接待が終わったというのに、今日は上司に誘われて断る間もなく連れ出されてしまった。
すでに千鳥足となった上司を支えながら、小坂と上司はネオン街を歩く。
「小坂。実を言うとな俺、妻に浮気がバレたんだよ」
「そうなんですか」
どうりで酒を飲むペースが速いと小坂は思った。
「お前、幽霊の出る廃病院に一人で泊まるのと、浮気がバレた妻の元に帰るの、どっちが怖いと思う?」
小坂にはどちらとも答えられなかった。
「ちょっと自分には」
そんなに浮気をした後の妻は怖いのだろうか。二十二歳で結婚して、まだ一年目の小坂には未体験の領域だった。
上司は「素直に死刑台に上がるわ」と言って、タクシーで去っていった。
もし僕が浮気をしたら妻はどうするだろうか。残された疑問。通りで香水が安売りしていた。そこには女物も当然ある。
小坂はそこで一つの閃きをして、家に帰った。
笑顔で出迎える妻にキスをして、背広を手渡した。普段の行為だが、今日は胸が躍った。妻は背広の香りにすぐ気づくだろう。
「……あなた」
それきた、とリビングで座っていた小坂は手を擦り合わせ振り返った。
妻は包丁を握りしめていた。
ちょい復活。でも、あんまり来られないと思うf^_^;どうでもいいけどPsysalia Psysalis Psycheの「Butch&The Sundance Kid」だけは気に入った\^o^/