サーモン芝居でなりすマス
あいてにだます気があれば、だまされるかと。
きょうはおひさしぶり♡ な
ともだちとあうことになったんで
ちょっとぜいたくしちゃう
お昼はいっしょに
まわらないお寿司やさんにいくことにした
まわらないお寿司やさんってゆっても
この星がまわっているいじょうは
地球に対して相対的には まわってないだけで
世の中のお寿司やさんはすべて
絶対的にはまわってるお寿司やさんなんだから
心配ないよ
てか そもそも
カウンターで大将が握ってくれるタイプの
まわらないお寿司やさんでもなくて
パックにつめられたつくりおきを買って帰るタイプの
まわらないお寿司やさんだもんし
このくらいのぜいたく
たまにならゆるしてもらえるよね?
そしたらあたしは
サラダ巻きとサーモンにしよっと
サラダ巻きはほぐれたカマボコを巻いてるやつ
いっぽう サーモンは
オニオンスライスがのっかって
マヨネーズがかかった握りがみあたらないけど
容器に敷き詰められた酢飯を
ピンクいオレンジの切り身が覆い尽くす
ごはんものタイプがあったからこれでいいや
あたしはこうゆうごはんものタイプを
おはしぢゃなくて
スプーンですくって食べるのが大好物なのだ
無事にお持ち帰りして
あったかい緑茶と
サラダ巻き用の追いマヨネーズを準備すれば
ここからは極楽タイム
ごはんもののサーモンも
オニオンスライスがのっかってないうえに
マヨネーズすらかかってない素サーモンだし
こっちにもマヨろうとしたら なぜか
ともだちに止められたので
しかたがないからお醤油だけにしとくよ
なんなら 冷蔵庫のタマネギを刻んで
自前のオニオンスライスをのっけようかと
思ってたくらいなんだけど
気勢を削がれたかたち
つぎのおひとりさまのときこそ ちゃんと
オニオンスライスをのっけて
マヨネーズをかけてやろうって
心に決めながらも それなりに満足して
ごちそうさましたあたしが
「カニとサーモン さいこー♡」
って 両腕を高くつきあげたとき
ともだちはゆうにことかいてこう言ったのだ
「それってサーモンじゃなくてマス寿司だよ」
ゆうにことかいたあたしのともだちのなまえは
「ゆう」に「こ」と書いて「ゆうこ」なんだけど
そのゆうこの衝撃発言に
あたしの頭ん中は真っ白になっちゃった
こんなピンクいオレンジ色したそっくりさんなのに
サーモンぢゃないだなんて
それってなりすましぢゃん!
マスの演じた三文芝居ならぬサーモン芝居に
あたしはすっかりだまされていたのだ
あたしったらなんてまぬけなんだろ
うちひしがれるあたしに
ゆうこからダメ押しのひとこと
「てか サラダ巻きのほぐれたカマボコだって
カニじゃないからね」
そんなばかな?!
あたしの先週の土曜日は
このタイプのカマボコで
おひとりさま カニしゃぶしゃぶを満喫してたんだよ?
マヨネーズよりも酢醤油と酢味噌をえらんで正解だった
あの至福のときはなんだったとゆうのだ!?
もうなにもかもが信じられなくなりつつあるあたし
ともだちでかるはずのゆうこの顔を
にらみつけるようにたしかめる
マスとカマボコがあたしをだましてるのか
じつはそんなこともなくて むしろ
ゆうこのほうがあたしをだましてるのか
あるいは
ゆうこに見えるこいつはゆうこではなくて
ゆうこの皮をかぶった宇宙人か妖怪かもしれない
よぉし その正体をあばいてやろうと
のりだしかけたあたしに
さらにゆうこは告げたんだ
「べつにサーモンでもカニでもなくたってよくない?
おいしかったならそれが正義だよ」
この言葉で
あたしに本日 何度めかの衝撃!
たしかにサーモンでもカニでもなくたって
マスとカマボコはおいしかった♡
だったらさ たとえ
ゆうこがゆうこ本人ぢゃなくて いつのまにか
宇宙人や妖怪になりすまされてたとしても
ゆうこは変わらずあたしのともだち
それでいいぢゃないか
ひょんなことから
あたしとゆうことのあいだにある友情を
再確認する機会となった
マスによるサーモンなりすまし事件は
こうして幕を引いたけれど
ゆうことの友情がつづくかぎり
あたしはこの事件を忘れないだろう
そしてもうひとつ
こんど ごはんものの
素サーモンのふりをしたマス寿司を買ってきたら
自前のオニオンスライスをたっぷりのっけて
マヨネーズをたんまりかけて
その下手なサーモン芝居まで楽しんでやろうと思ってる
やめときなさいって止めてくれる
ゆうこの声にもかまわずにね
サケとマスの区別、あいまいらしい?




