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白夜  作者: 悠羽
5/7

第五話 整えるということ

話は、

 思っていたより

 あっさり始まった。



「最近、

 生活のリズムが

 崩れているみたいだから」



 責められているわけではない。


 心配されている。


 それは、

 分かっている。



「一度、

 専門の人に

 話を聞いてもらうのも

 悪くないと思う」



 整える、

 という言葉が

 何度も使われた。



 睡眠。

 生活。

 考え方。



 どれも、

 正しい。


 否定する理由は

 ない。



 それでも、

 胸の奥で

 小さな抵抗が

 続いていた。



 私は、

 壊れていない。


 ただ、

 二つの場所に

 居場所があるだけだ。



 そう言いかけて、

 やめた。


 説明できる

 言葉が

 見つからなかった。



 その日から、

 少しずつ

 変化が始まった。



 眠る時間が

 決められる。


 光を落とす時間が

 決められる。



 目を閉じると、

 向こうに行けるまで

 少し時間が

 かかるようになった。



 やっと辿り着いても、

 景色が

 以前ほど

 鮮明ではない。



 彼女の顔が、

 ぼやける。


 声が、

 途中で途切れる。



「最近、

 ここ、

 静かだね」



 彼女は、

 そう言って

 笑った。



 私は、

 うまく笑えなかった。



 理由を、

 知っていたから。



 こちらの生活を

 守るということは、

 向こうを

 削るということだ。



 それでも、

 現実では

 少しずつ

 調子が戻っていった。



 遅刻は減り、

 忘れ物も減る。


 心配の視線も

 少なくなった。



「よかったね」



 そう言われて、

 私は

 頷いた。



 正しい方向に

 進んでいる。


 誰もが

 そう思っている。



 夜、

 眠る。



 向こうは、

 さらに薄かった。



 部屋の輪郭が

 途切れ途切れになる。


 時間が、

 飛ぶ。



 会話の途中で、

 場面が切り替わる。



 彼女が、

 私の手を

 強く握った。



「ねえ」



 その声が、

 遠い。



「もし、

 来られなくなっても」



 その先が、

 聞こえなかった。



 私は、

 首を振った。



 聞きたくなかった。


 考えたくなかった。



 目を覚ますと、

 胸の奥が

 空洞になっていた。



 整っていく

 こちらの生活。


 薄れていく

 向こうの世界。



 私は、

 初めて思った。



 元に戻ることが、

 必ずしも

 救いではない。



 それでも、

 私は

 立ち止まれなかった。



 整える流れは、

 もう

 始まってしまっていた。


第六話:最後の夜

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