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白夜  作者: 悠羽
3/7

第三話 向こうの時間

眠る前に、

 時計を見る癖がついた。


 何時に起きるかではなく、

 何時間、向こうにいられるかを

 確かめるために。



 眠りに落ちる瞬間、

 意識が途切れることはない。


 ただ、

 場面が切り替わる。



 あちらでは、

 朝だった。


 光の入り方が、

 もう見慣れている。



 彼女は、

 キッチンに立っていた。


 何も言わずに、

 同じ空間にいる。


 それだけで、

 胸の奥が落ち着いた。



 恋は、

 いつの間にか

 始まっていた。


 告白も、

 劇的な出来事もない。


 気づいたら、

 そばにいる。



 向こうの時間では、

 私は迷わない。


 言葉を選びすぎない。

 表情を気にしない。


 間違えても、

 取り繕わない。



 彼女は、

 それをそのまま受け取る。


 直そうとしない。

 評価しない。



 仕事の帰り、

 並んで歩く。


 何を話したかは、

 よく覚えていない。


 でも、

 歩いた距離と、

 沈黙の温度は

 残っている。



 こちらの世界では、

 人といると、

 少し疲れる。


 向こうでは、

 呼吸が浅くならない。



 ある日、

 現実で約束を忘れた。


 悪気はなかった。


 ただ、

 別の予定で

 頭がいっぱいだった。



 それが、

 どちらの予定だったのか、

 すぐには思い出せなかった。



 帰り道、

 ふと考える。



 今日、

 私はちゃんと生きただろうか。



 問いの答えは、

 向こうにあった。



 眠る前、

 彼女からのメッセージを

 思い出す。


 現実には存在しないはずの、

 記憶。



 それなのに、

 私は確かに

 待っている。



 今日は、

 早く眠ろう。


 向こうで、

 話したいことがある。



 そう考えた瞬間、

 胸の奥が

 少しだけ冷えた。



 私は、

 どちらの一日を

 大切にしているのだろう。



 答えは、

 まだ出さない。


 出したくなかった。



 ただ、

 一つだけ

 分かっている。



 向こうの時間は、

 もう

 夢ではない。



 私の生活の、

 一部になってしまった。


第四話:こちらの生活

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